第9話 進学

高校3年生になった。今は2月だ。俺の進学先は決まっていた。皆も合否が判明し教室は気が抜け和やかな空気だった。その後俺は橋本からパソコンを譲り受けた。貰ったパソコンは俺が想像していた以上に新しく意外に思っていると


「なかなか綺麗だろ。俺すぐにさ新しい機種のが出るとすぐ変えちゃうんだよね。だからこれも比較的新しいぞ」


と自慢げに言った。

早速家に帰って電源を入れてみるとその性能に驚いた。なんといっても処理の速さだろう。俺の家にも父さんが使っていた昭和臭い古いパソコンはあったが橋本から譲り受けたパソコンは小さいサイズでありながらも速い処理に一体どんな技術が使われているのか気になった。

橋本が言っていた通り東京通信大学の試験は存在しなかった。しかし一つだけ予想外なことがあった。

調査書が必要なのだ。簡単に言えば、身内について書くことだった。俺は心配した。身内が一人もいないことに対し、何か特別な扱いをされるのではないかと。そんなこは絶対に避けたかった。これ以上特別扱いされるのは嫌である。俺は欄に兄を「現在留学中」とだけ記載した。


卒業式が行われた。皆は写真を撮ったりと笑顔だった。そんな中俺はそそくさと教室から出た。もう彼らとは会うことは無いだろう。これから全く新しい生活が始まるのだから。


その頃の俺は事件のことなど全く頭になかった。


一度だけ警察から電話があった。8月くらいの話だったと思う。相手は細田だった。

証拠が何一つなく得られないのだという。俺は怒らなかった。もう分かっていたことだ。予想していた以上に警察は無能であること。そして、このまま事件は迷宮入りするのではないかと。俺は「引き続き頑張ってください」とだけ言って電話を切った。



俺は道のりを間違えないように地図を確認しながら歩いた。ここの道を右に曲がると目的地である。桜が咲き乱れ満開だった。俺は右に曲がると思わず感嘆の声をあげた。想像の何倍も大きかったからだ。毎日何千人もの学生が居るとはいえ、大きい。門の前には「東京通信大学入学式」と書いてあり俺と同じ様なスーツ姿の若者がぞろぞろと入っていく。俺も彼らにならって門をくぐる。

いつしか俺は昔の記憶を回想していた。あの時と同じだ。あの時も高校の門をくぐったのだ。しかし一つだけ違う。それは今の自分の気持ちは昔の自分よりも遥かに楽であるということだ。


俺は前を向く。生まれ変わったのだ。



俺の人生はこれからだー

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