第7話 虚脱
兄が被害者ではない。それは本当のことなんだろうか。警察に真偽を確かめる必要があったが俺は行く気にはなれなかった。現場を思い出す。近くの坂の下あたりだったはずだ。俺の考えでは兄は帰りを急いでいたのではないか。そう考えると兄の自転車のタイヤのブレーキ痕がなかったことにも理屈が通る。しかしやはりその原因の根本は俺なのだ。けれど犯人を憎む以外の道しか俺にはない。
神様。
どうか、どうか犯人を加害者にしてくださいー
働き初めて3週間経った。俺はそろそろ高校に行かなければならないと思った。このままずっと行かなければ留年してしまうだろう。行きたくないが行くしかないのだ。
俺は来週から行くことを伝えるために森口に伝えようと思った。俺は最近新聞を読んでいない。事件のことをより詳しく知ってしまうのではないかと思い、読むのが怖いからだ。細田とは前回以来会っていない。
会いたくない。
森口に来週から高校に行くことを電話で伝えると喜びはしたがすぐに心配し始めた。
「もう良いのか?別に俺は急かしているわけじゃないが・・・」
「良いんです。それに授業日数が足らずに留年なんてしたくありませんし」
「そうか。分かった。修哉の登校を楽しみにしているからな」
「分かりました」
一体学校に行ったら同級生はどんな顔をするのだろう。
早く起きたつもりだが1ヶ月も開くとなるとネクタイを結ぶのに時間が掛かってしまった。急いで支度をする。森口は
「しばらくは少し遅れてもいいぞ。大丈夫。俺が正門開いておいて欲しいって警備員にお願いしとくからさ」
と言ってくれたが、そういうわけにもいかない。時刻を確認する。よし間に合う。
玄関の扉を開け、外気の空気が俺の肌に触れる。今はもう10月だ。朝は確実に寒くなってきている。高校までは10分だ。公立なので近い。何度も歩いた通学路を通る。高校に近づいてくると同じ制服の生徒もチラホラ見かけるようになった。俺は一人ひとりの顔を確認していたが同級生はいなかった。
高校の正門を通る。心臓が高なっていた。靴箱を見るとまだ登校してきてない者が少しいるようだ。俺の高校は5階建てであり、教室は3階だ。階段を登っていく。2階になると教室があるので生徒の笑い声が廊下を伝って聞こえてくる。三階への階段を登る。3階の廊下を歩く。徐々に近づいている。2-E。その教室からも笑い声が聞こえていた。今はHR前だ。きっと今頃俺が来るなど誰も予想してないだろう。俺が入ってきたらどんな反応をするのだろうか。少しワクワクした。
俺は扉を開けたー
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