第4話 多忙

月曜日。俺は店に向かっている電車の中だ。道のりは間違えないように何度も確認した。河野によると店はイタリアン料理店のようだ。そのことを聞くと俺は店の雰囲気とレンガの壁が妙にマッチしていたことに納得した。電車を降り少し歩く。店は少し中心地から離れた裏の路地にあるため、いわば隠れ家的な存在だ。

店に着きドアを引いた。中からパンの良い香りがする。おそらくピザの生地の匂いだろう。すると河野が厨房からヒョイと顔を出した。


「おお。修哉君。今日からウチの厨房に入ってバリバリ働いてもらうからね!」


会っていきなりそんなことを言われた。さて一体何の仕事を任されるのか。

内心ドキドキしていると


「じゃあ、皿洗いをやってもらおうかな」


と言われ、いかにも最初の仕事らしい仕事を任された。俺は心の中で少しがっかりする。まあ、文句なんて言える立場じゃあ無いんですけど。

そうして俺は本格的に河野の店で働くことになった。仕事は勿論皿洗いだけではない。床掃除、そして接客。忙しい。忙しすぎる。学校に行ってないので、朝から夕方まで働く。家に帰った時はあまりの疲れに風呂にも入らず、ベッドの上に寝っ転がりそのまま寝てしまうとこともしばしばあった。


ある日、そういえば事件のことはどうなったのだろうとふと思った。新聞で確認したことだが犯人は轢き逃げをしたようだ。現場には兄の遺体が壁に密着しながら倒れていたらしい。おそらく兄は壁と車に挟まれて死んだのだろう。人間は醜い。だから犯人も現場から逃げたんだ。捕まりたくないから。怖いから。警察からはなんの連絡もない。いったい事件の捜査はどこまで進んだのか。毎日、新聞を確認していたがその日以降何も情報は得られなかった。俺は自分から訪ねに行こうかと考えた。以外に悪くないのでは。まあ少し待ってみて連絡がなかったら直接行こう。


こうして1週間過ぎた頃。警察のもとから電話がかかってきた。ついに来た!思わず手が震える。電話に出てみると事件当日に出会った40半ばくらいの男の声であることが分かった。男の名前は細田と言った。俺はまったく容姿と真反対な名前であると思った。早速、いつ会えるかと細田が尋ねたので、アルバイトが休みの日曜日なら大丈夫と伝えると、細田はその日に会おうと言った。場所は練馬警察署の前の喫茶店が集合場所になった。茶色と黄色のボーダーの看板が目印らしい。電話を終えた後俺は少し興奮していた。やっと事件のことについて詳しく分かる。事件の進展についても聞きたいことが沢山あった。警察は一般人に事件のことは詳しく話さないが関係者となると話してくれるだろう。今日は火曜日。日曜日が待ち遠しい。俺はウズウズしていた。




まだこの時は。



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