銀髪の女
ある家族の日常
「兄さん?頼んでたやつ買ってきてくれた?」
「あ、やべ。忘れてた。」
「もう!また忘れた!!これで何回目!!」
「ゴメンゴメン。明日絶対買ってくるわ。」
俺がテレビを見ながら返事をする。そんな俺を見ながら妹は頬を膨らませている。
「もう…次は忘れないでね!」
「りょうーかい」
あとで手にでもメモしておこう。
「ねぇ、わたしの取っといたプリン知らない?」
ギクッ… 姉が急にそんなことを言い出した。
「プリン?わたしは知らないよ」
「ボクモワカラナイナー」
「ふーん」
そんな俺の返事に姉はとんでもないものを取り出してきた。
「ところでこれあんたの部屋で見つけたんだけどなにか言うことある?」
そういって俺に見せたのは変わり果てたプリンの残骸(殻)だった。
「さらばだ!!」
「あ!待てこの!!」
「またやってる…」
俺が逃げ出すと姉が追いかけてくる。それを見て妹が呆れる。そんなバカみたいで幸せな日常の、終わりは近い…
◇◆◇◆◇
祠に足を踏み入れた俺は、さっそく驚きのものを見つけた。
祠の中は真っ暗だと予想していたのだが、淡い光が暗闇を照らしていて思いの外明るかったのだ。
正確には、壁から飛び出ている鉱石が青白い光を発しているようだ。おそらく光を反射しているのではなく、自ら発光しているのだろう。
さすが異世界、物理法則に喧嘩売ってるな。
そんなことを考えながら進んでいくと、突然開けた場所に出た。
俺は、その光景に目を奪われてしまった。
「すげぇ…」
そこには、先ほどの青白く光る鉱石が壁や天井に無数にあった。青白い鉱石がお互いに反射しあい幻想的な光景を作り出していたのだ。
光が俺の全身を照らす。
するとなぜか、力が沸き上がり元気になってきた。
この感覚には覚えがある。ザリガニモドキを食べたときと同じ感覚だ。ということはザリガニモドキとこの青白い鉱石は、なにか共通点があるということだろう…さっぱりわからないが。
強いて言えばどちらも青いというところかな。
その時の俺は物思いにふけっていて、驚くほど油断していた。だから…
「だれか、そこにいるのかい?」
「!?」
その声が聞こえた時心臓が止まるかと思った。声が聞こえたほうを見る。
そこには俺が来た通路とは別の道があり、先に続いているようだった。声はあそこから聞こえてくる。
…確かめてみるか。俺は警戒しながらも、通路の先に進んだ。
通路を抜けた先、そこには祭壇の様なものがあった。
それは、なにかを奉ったり、封印したりするものとよく似ていた。
だが、それは俺の目には入らない。なぜなら…
「おや?初めて客人だね。歓迎するよ。黒い人」
銀髪の長い髪をもつ、美しい女の視線が、俺を撃ち抜いたからだった。
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