スライムの日々

@siant

第1話 ボクはスライム

 ダンジョンの中をもそもそと歩く。

 地面に生えているコケを食べながら、1日過ごしていく。いや。1日という感覚はボクらスライムにはない。ただただお腹が減って、コケを探して、コケをたべて、眠くなって眠る。そういう1日だ。

 だが、ボクは違った。他のスライムは住処に固まり、ダンジョンでうっそうと茂るコケを食べてお腹いっぱいになったら寝て過ごしている。ボクはただこの生活に飽きたのだ。ボクは違った。食べるのにも飽き寝るだけの生活にも飽き、ついには外へ飛び出したんだ。

 ボクらの住処の外には強い魔物がいっぱいいて、踏まれただけでも死んでいくボクらスライムはとても生きていられるような環境ではないけれど、僕の好奇心は抑えることが出来なかった。

 たまたま住処の前に魔物の死骸があってそれを食べてみると、ものすごく美味しかった。それは今までコケを食べていたその生活を、そのボクの価値観を、一気に改めるくらいのものだった。

 ボクの中でそれはクセになってしまって、ダンジョンで魔物の死骸を探して、見つけては食べ、住処で寝る。今までここやって食べて生きていると心なしかお腹も早く満たされて、寝る時間も少なくなったように感じる。起きた時、他のスライムは動いてないから。

 そういえば、最近体の色がちょっと濃くなった気がする。この迷宮の中は薄暗いのでまあそういう風に見えているだけだろうと気にしなかった。

 そういえば最近気になることがあった。何かに当たった気がしたけれど、何ともなかったのでそれは気のせいだったんだろうと思う。

 うしろを見れば、大きい狼の魔物がいたけれど何事もなかったので何をされていないんだろうと思う。

 ちょっと目線が高くなって自由がきかなくなったけれど何事もなかったのでボクの気のせいだろうと思う。

 そんなこんなで今まで生きている。

 ボクはスライム。

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