第3話 12月の贈り物3

「いくぞ! 交番!」

「おお!」

 一郎と凜は事態収拾のために交番を目指す。

「ゲッ!?」

「なんじゃ!? こりゃ!?」

 家の敷地から一歩出るとモンスターがうじゃうじゃ溢れていた。

「撤収! 撤収するぞ!」

「おお!」

 二人は慌てて自宅に逃げ込んだ。

「囲まれている!?」

「どうするのよ!? 一郎!?」

 家の周りはモンスターに囲まれていた。絶体絶命の二人。

「ああ! 私たちはここで死ぬのね! 私と一郎は現代版のロミオとジュリエットだわ!」

 悲劇のヒロインに酔いしれる凛。

「僕たちにやれることをやろう。諦めるのはいつでもできるから。」

「意外!? 一郎から前向きな言葉が出るなんて!?」

 いつも諦めて生きている一郎から前向きな言葉が出ることに驚き戸惑う凛。


「できた! フル装備!」

 一郎と凜は家の中にあるもので装備を固めた。

「でも、一郎の格好はダサくない?」

 凜の武器は台所の包丁。マントの代わりにスカーフを撒いた可憐な姿だった。

「仕方がないよ。生きるためだもの。」

 一郎の武器は金属バット。一般家庭に盾や鎧になりそうなものはなかったので、段ボールでDIYして盾っぽいものと鎧っぽいものを作った。

「いくぞ! 凛! 目指すは交番だ!」

「おお!」

 二人は気合を入れて冒険の旅に出かける。

「ギャアアアアアア!? でもモンスターがたくさんいるんだけど、どうしよう?」

「お、お茶を飲んでゆっくり考えない?」

「そうしよう。」

 しかし、いざ実際に家の外の大量のモンスターたちを見てしまうと足がすくむ。

「いや~、お茶はおいしい。やっぱり日本茶よね。」

「凜が入れてくれたお茶が一番おいしいよ。」

「ありがとう。」

 和やかなムードが二人を包む。

「バキバキバキ!」

 その時、家の天井が崩れ去る音がした。

「な、なに!?」

「表に逃げるんだ!?」

 二人が逃げた後、ドカーンっと大きな音を立てて家は潰れ去った。

「ど、ど、ドラゴン!?」

 自宅を踏みつけたのは大きなドラゴンであった。

「ガオー!!!!!!!!」

 家踏みドラゴンは火を吹いた。

「危ない!? 離れるんだ!?」

 二人は家の敷地から出て外の道路に飛び出した。

「い、家が、私たちの家が燃えていく!?」

 今まで過ごしてきた思いでの詰まった家が一瞬で燃えて灰になっていく。

「いや~! やめて! ドラゴンなんか私が倒してやる!」

「やめろ! 凛! 僕たちが戦って勝てる相手じゃない! 今は逃げるんだ! 生きることを考えるんだ!」

 こうして家を失った僕たちは強制的に冒険の旅に出ることになった。

「でも私たちだけで、ここを突破できるのかしら?」

「大丈夫。何とかなるよ。僕たちは生きるために生まれたんだ。死ぬために生まれたんじゃない!」

 少し男らしい一郎。

「分かったわ。生きて、生き抜いて、二人で幸せになりましょう!」

「ああ。そうしよう。」

 二人は前に進むことを決めた。

「いくぞ!」

「おお!」

 一郎と凜はモンスターたちが蠢く道を進み始めた。

「ギャオー!」

「ガオー!」

 モンスターたちが二人に気づいて攻撃を仕掛けてくる。

「キャアアアアアアー!? コウモリ!? カラス!?」

「なんて栄養バランスの良さそうなカラスなんだ!?」

 都会のカラスはゴミの残飯を食べて黒光りの艶が輝いていた。

「ワンワン!」

「犬? ワンちゃんカワイイ!」

 犬も二人に襲い掛かってくる。

「気をつけろ!? そいつらは野犬だ!?」

「ガオー!」

 犬も牙をむき出しにして二人に襲い掛かってくる。

「凜は僕が守る! ええーい!」

 一郎は金属バットで犬を殴り飛ばした。

「キャイーン!?」

「ホームラン!」

 意外に運動神経の良かった一郎は犬を倒した。

「カッコイイ! 一郎!」

 惚れ直す凛。

「任せなさい。アハッ!」

 しかし、二人は終わることのないモンスターの猛攻で直ぐに息絶えた。

 おしまい。

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