戦争開始
理系高校生はスマートフォンに指示を飛ばす。
「セレナ。新タスク設定、レアメタル確保ルートを頼む」
『オーダーを承認と言いたいところですが、レアメタル奪取プロトコルと命名します』
「セレナは野蛮なの嫌いだろ。気を遣ったつもりだったんだけど」
『ありがとうございますボス。しかし一言お言葉を許していただけるのなら、そんな場合じゃないぞと言って差し上げたいです』
「じゃあやるぞ、レアメタルを手に入れる」
『オーダーを承認。……回収業者の車両にアクセス完了。無事に文化財指定の物品を国際研究所へと運搬し終えたようです。つまりレアメタルの現在地はこちらです』
地図アプリが起動してピンが立つ。
二キロほど離れたその場所が国際研究所らしい。レアメタルを手に入れるにはそこに足を運び、研究所のセキュリティを突破して目的の物を見つける必要がある。
「使える交通機関は?」
『オブスのせいで道路も一部封鎖、電車もいつ停止するか分からない状況です。使えそうなのは自転車かバイクでしょうか』
「免許ないの知ってるだろ」
『自転車もありません』
「徒歩だな」
「ノー」
と、そんな風に否定の言葉を挟む少女がいた。
「建物から建物への跳躍を推奨します」
「へ?」
問いかけは待ってもらえなかった。
陸斗の腰に手が回されたと思ったら、ふわりと足が浮いた。
そのまんまであった。
ロケットみたいに夜空に向かって飛び上がる。
バネのような膂力によって、メアリーが凄まじいジャンプを敢行したのだ。
「……ッ、ッ、ッ!?」
「? 顔が引き攣っています、陸斗」
「誰のせいだっ‼」
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