Artificial Intelligence War

東雲 良

初めまして、異界の存在

1-1 初めまして、???(時系列不明)



「これか……?」


 黒い空間の中、一人の少年はボソリと呟く。


 彼の目の前には透明な材質でできた円柱があった。大きな建物を支える太い柱のようなそれは、空間の中央に設置されていた。


 しかし、今少年が注目しているのはもっと別のものだ。


「あったぞ、セレナ」


『これなら何とかなりそうですね、ボス』


 ガラスのような材質でできた円柱の中には、透明な液体が詰め込まれていた。


 そして、その中をたゆたうのは少女の形をしたロングヘアの誰か。しかも人間とはかけ離れたような印象を与えてくる、飛び抜けた美少女。髪の毛やガラスケースの光の反射がなければ、そのまま鮮明に全身を見られてしまいそうだった。


 やや高い位置で水の中に浮かぶその白い肌の少女に、スマートフォンを持った少年はそっとささやく。


「……生きてるのか?」


『生命活動の信号は感じられません。ただ、強い電磁波を感知しています。これ以上の情報は専用の調査機器がなければ取得できません』


「セレナ。このケース開けられるか?」


『オーダーを承認』


 スマホから女性の人工音声が響く。


 直後に空気が抜けるような音と共に、ガラスの円柱が左右に開く。




 中に詰まっていた液体は全て周囲に溢れ出し、少年の立っている地面にまで届く。そして当然、液体による浮力の恩恵が受けられなくなった少女は、沈むように地に落ちる。




「……さあて。パンドラの箱を開けたは良いが、今さら不安になってきたぞ」


『心拍数の上昇を確認。どうやら美少女を見てドキドキしている訳ではなさそうです。今からでも最適な逃走ルートを検索しますか、ボス?』


「いいや、様子見だ。蛇が出たか鬼が出たか、見極めてからでも少なくない」


 もぞもぞと、小さく蠢くような音があった。


 そう、音。先ほどまでガラスケースの円柱の中で眠るように活動を停止させていた、白いロングヘアの少女がもぞりと動いたのだ。


 少年がスマホを不必要に強く握り、腰を落として構えを取る中。


 その少女は、少年に向けてこう告げた。



「……にゃあ。ご主人様、いっぱいわたしを可愛がってほしいにゃあ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る