第8話 東京上空

◇◇◇


 目のくらむような光の先、たどり着いたのはもといた世界。見慣れた街の光景に目頭が熱くなる。やっと!やっと僕は帰ってきた!


 ちなみにさっきから東京上空に浮いている。なにこれ怖い。


「わ!わわっ!と、東京!?」


「うん、無事、帰ってこれたみたい」


「よ、よかったー!」


「取りあえず、今は何年の何月なんだろう」


 地上におり、コンビニで新聞を確認してみると、明日香の誕生日当日であることが分かった。


「一年間、異世界にいたのに……」


 納得いかないとばかりに頬を膨らませる彼女をみて可笑しくなる。


「ちょうど良かったじゃん。家まで送るよ」


 明日香から住所を聞き、明日香の部屋に転移する。


「す、すっごーい!」


「うーん?困ったことにまだ魔法が使えちゃうみたいなんだよねぇ。いつまで使えるかは謎だけど」



 夜、女の子の部屋に見知らぬ子どもがいるのも怪しい。僕はそうそうに立ち去ることにした。


「じゃあね。お休み、明日香」


 僕がいこうとすると、明日香は慌てて僕の袖を掴む。


「ま、待って!私はこのままでいいけど、和也はこれからどうするの?行方不明ってことになってるんじゃないの?」


「うーん、そっか。転移魔法は使えたけど、時を遡る魔法は使えるかなぁ。まぁ、やってみるよ」


「うんっ!うんっ!きっと、和也のいた時間に戻れるように祈ってる!」


「そうだね。三年前に戻れたら、僕たち同い年だしね」


「えっ!じゃあ今12歳ってこと!?」


「見た目はね?」


「あ、でも、年下ではないのか。うーん?」


 悩み出す明日香に思わず笑ってしまう。


「明日香」


「あ、うん!何?」


「君にあえてよかった。僕は独りじゃ、きっと帰ってこられなかった」


「私もだよ。和也がいなかったら、ずっとずっと、あの世界で彷徨っていたと思う。和也は私にとって、最高の魔法使いだよ!」


「ありがとう」


 明日香を助けることができたなら、『魔法使い』も悪くない。クスッと笑ってひとつ魔法をかける。


「君に今夜、魔法をかけてあげる。悪い夢は全部、忘れるといいよ」


「え?どういうこと?」

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