第2話:1回目。

「嘘だ、、俺、捕まってない。」


スマホを握り締めて、笑みを浮かべると同時に今日の事を思い出して、急いで荷物を纏めると近場のコンビニのATMで上限額まで金を下ろすと電車に乗って、自宅から遠く離れたとある田舎にある温泉ランド:帆角ほかくへと転がり込んで、3日泊まる事にした。


前日は恐怖で部屋から出られず、ルームサービスで頼んだピザとコーラを食べながら時間が過ぎるのを待ち、テレビをじっと見ていると連続殺人犯が捕まったというニュースが流れ、犯人の顔が映ると俺と同じ顔をしていた。


『この男は殺す度に顔を変えており、顔を変えようとした所を警察に逮捕されました。』


それを聞いて、心底ホッとすると部屋のドアをノックする音が聞こえて、俺は立ち上がり、部屋のドアを無警戒に開けると恐怖で顔が引きつった。


「へ、、」


それと同時に俺は後ろに下がると浴衣姿の全知全能の美少女が入ってきて、ドアを閉めると鍵を掛けた。


「ふぅ、ここいいお風呂だよ。嶺衣くんも行ってきたら?。」


「え、なんで、ここに?。」


「ここ、僕が所有している所なんだ。それに嶺衣くんがここに居るって女将に聞いたから。」


「でも、、なんで俺の事を知ってるの?。初対面だよね?。」


「そういう嶺衣くんも、僕の事を知ってるよね?。」


「そ、それはテレビで見てるからだよ。それで、俺の所に来た理由は何かな?。」


「いきなりで悪いけど、結婚を前提に僕と付き合って欲しい。」


「えっと、考える時間をくれない?。」


「考える時間?。どれくらい?。」


「2日。」


「わかった。ちゃんと答えてね。」


「うん。」


背筋が凍りながら、彼女と少し話をして部屋まで送ると早朝、荷物をまとめて部屋を出た。返事は置き手紙を残し、最初のバスで駅へと向かう。


「はぁ、まさか、現れるなんて次はどこに行こう。沖縄とか行っちゃおうかな。」


虚勢を貼る為に冗談を呟くと駅へと近づくに連れて、理由のない不安に駆られて、落ち着きが無くなっていき、駅が見えてくるとその理由が分かった。


駅に着きバスが止まるとアナウンスと共にドアが開く。開くと1人の美少女が乗り込んできて、俺にピッタリくっついて座る。バスは俺しか乗っていない為、どの席も空いているのにも関わらずに俺の隣に座り、腕に自分の腕を絡みつけると


「運転手さん、例の場所にお願いします。」


と運転手に話しかけると運転手は頷いて、バスは走り始めた。走り始めたバスは、最初は一般道を走っていたが、気がつけば深い森へと続く坂道を走り始める。


「ねぇ、嶺衣くん。この先に何があると思う?。」


「わ、わかんない。教えてくれる?。」


「うん、目的地は、1部の人しか知らない精神病院だよ。そこで治療を受けなきゃ行けない患者がいるから向かってるんだ。」


それを聞いて、俺は如月メアに抱きついた。


「どうしたの?、嶺衣くん。」


「ごめんなさい、ごめんなさい。ごめんなさい。お願い、、戻って。怖いからお願い。」


「何を謝ってるか分からないな、それに悪い子が居るのに戻れる訳が無い。」


俺は震える体に喝を入れながら、メアをお姫様抱っこすると許しを乞う為に必死に抱きつく。


「お願い、お願いします。メア、メアさん。連れていかないで、、、」


「じゃあ、僕に言う事があるんじゃない。」


「逃げて、ごめんなさい。メアが嫌いだから逃げた訳じゃないの。ビビって逃げただけなの。」


「じゃあ、結婚する?。」


「する、絶対にするから、お願い。」


俺は恐怖から逃れたいが故にお姫様抱っこするメアに唇を押し付けるとバスがゆっくりとバックし始める。キスすると恐怖心が薄れて行き、心が落ち着いて、体の力がちょうど良くほぐれていくと同時にバスは一般道を走っていた。


「ぷはぁ、もう、嶺衣くんったら。キスが長いよ。僕の心臓が壊れちゃうかと思った。」


「メア、本当にごめんね。」


「ううん、僕も冗談が過ぎたよ。あの森の先は公園で、そんな物は無いんだ。」


「そうだったんだ、演技がうますぎて本当に怖かったんだから。」


「ごめんね、嶺衣くん。」


と和解した瞬間、走るバスのタイヤが破裂してバスが右に横転して、頭を激しく打つとブラウン管テレビの電源が切れたように視界がプツンと真っ黒になった。

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