第57話 冒険者ギルド

僕達は宿屋に荷物を置いたら早速屋台を回り、お昼ご飯を食べていた。


基本的にはアカリ包丁やアカリフライパンで稼いだ資金で当面の生活資金は足りているけど……


「アカリお姉ちゃん! あれも食べたい!」


「うん、良いよ。おじさん、その鳥の焼き串50本ちょうだい」


「は? 50本? 子供2人でそんなに買ってどうするんだい?」


「この子がほとんど食べるんで大丈夫ですよ。お金もしっかり払えますから」


僕はいつものやりとりなので、慣れた感じで本当にたべられるのか?という疑惑の眼差しの無視しながらおじさんにお金を先に渡してしまう。


子供2人が多量の注文をしたら、僕でも不審には思うから、おじさんの対応も分からないではないが、毎回毎回同じことを言われると疲れてしまうので、先にお金を渡してしまう事にしていた。


まあ、鳥の焼き串50本なんてハリッサにしてみたら1分位で無くなるレベルの量なので、おじさんの目の前で食べれば次回からは買い物がスムーズに行くだろう。


ハリッサの食費を稼がないと一週間位でお金が無くなってしまうかもしれないな。


お金を稼ぐ手段は、冒険者ギルドで依頼を受けて稼ぐか、商業ギルドで僕の作った商品を売るか、例のダンジョンに潜って素材を冒険者ギルドか商業ギルドに売るかだな。


商業ギルドに関してはマルコスさんに丸投げしているので、僕とハリッサが冒険者ギルドの買い取り額などを調べてマルコスさんと相談し、どっちで売る方が得かを決めていた。


まあ、いくつかの街を回ってみた感覚では商業ギルドの方が買い取り額は高いかなとは思う。


その代わり商業ギルドは無駄な買い取りはしないので、大量の素材を売るなら冒険者ギルドになるかなと思っている。


「やっぱりアカリお姉ちゃんのおにぎりが一番美味しいかな」


ハリッサはあんだけ屋台をはしごしてから、いつも大体おにぎりを締めて食べていた。


「そう? 女神が聞いたらきっと喜んでくれるよ」


もう会うことは無いのかもしれないが女神の用意してくれたアイテムボックスは大活躍しているので、女神に会うことが出来るのならばお礼くらいは言っても良いかなと思っていた。


「女神?」


「うん、僕にいろいろな支援をしてくれた人……というか神様かな。そのおにぎりも女神が用意してくれたものだからね」


「このおにぎりも!? なら、感謝しないと!!」


「そう言えば、この世界にも神様に祈りを捧げる場所ってあるのかな?」


地球では神社や教会などがあったけど、この世界に来てからそういう場所って見たこと無いかもしれないな。


「私は知らない」


ハリッサは本当の記憶喪失みたいなものだから、知らなくても仕方ないだろう。


「う~ん、あとでマルコスさんに聞いてみるかな?」


もしそんな祈りを捧げる場所があるのならば一度はお世話になった女神にお礼を言っても良い気がする。


「あっ、あそこが冒険者ギルドだね。ってか、大きいなぁ……」


僕達は屋台の食べ歩きが目的だったけど、偶然冒険者ギルドを発見した。


流石は流通都市だけあって、冒険者ギルドも他の一軒家レベルの建物とは違い、オフィスビルの様な木造四階建てといった感じだった。


通常、冒険者ギルドが込んでいるのは朝と夕方なのだけど、ここは昼時なのに何人もの冒険者っぽい武装した人達が冒険者ギルドに出入りしていた。


「ちょっと冒険者ギルドによってみる? 僕達もここでしばらくは活動するから、冒険者ギルドに再登録しないといけないから、今日やっちゃおうか」


数日滞在するレベルならば依頼を受けたりしないから、冒険者ギルドに再登録しなくても良いのだけど、しばらく滞在する場合は冒険者ギルドにハンターの拠点を一時的にでも移動させる登録をしなくては依頼を受けられないシステムみたいなのだ。


ゲームでは拠点を移動させるとハンター支援バフが貰えたりしていたが、現実だとこうなるのかと感心していた。


「うん、行ってみる!」


僕達は冒険者ギルドに入ると、一階部分は総合受付カウンターとハンター達の待合スペースみたいになっており、依頼受付や素材買い取り受付などは別のフロアに別れているらしい。


やっぱり他の小さな街とは規模が違うな。


今までは受付は一種類しかなくて、入ってすぐの受付で全ての対応をしてくれていたんだよな……


「おいおい、冒険者ギルドはガキの遊び場じゃねーんだぞ! もっと成長したら遊んでやっても良いけどな!」

「ギャハハハ! 確かに将来は美人になりそうだが……まだガキが来るにははええな」


僕がキョロキョロしていたのが悪いのか分からないが、変なハンター達に前を立ちふさがれ、下品な笑いをしながら話しかけられた。


今までの冒険者ギルドには、こういう変ハンターは居なかったんだけどな……


「アカリお姉ちゃん、この人達……酒臭い……」


「昼間から酔っ払ってるのか……僕達は受付に行きたいので、すいませんがどいてもらえませんか?」


僕達は異世界テンプレみたいなハンターの絡みを無難にかわして総合受付カウンターに行こうとしていた。


というか、ハンター同士はもちろん、一般人との争いは規約で禁止されているから、このハンター達も悪ふざけをしているだけだろう。


「おいおい、俺の忠告を無視する気か? ガキは大人しく家に帰ってろよ」


「忠告ありがとうございます。でも僕達もちゃんとしたハンターなので心配は無用ですよ」


「あん? 貴様等がハンターだと?」


僕はこの酔っ払い達と話したくなかったので、ハンター証を取り出して見せる。


「本当にハンターなのか?」

「本物みたいだな……って登録はファリスタ?」


「ふっはははっ!! ファリスタって辺境も辺境の田舎だろ! こんなガキがハンターになれるほど、平和な冒険者ギルドなんだろうなっ!」

「間違いないな!」


「ファリスタ出身者風情の雑魚が、ハンター名乗ってんじゃねえよ」


「私はおじさん達より強いよ? 雑魚なのはおじさん達でしょ?」


「ちょ、ハリッサ!? イライラするのは分かるけど……」


「あ? ガキが、もう一度言ってみろ……」


「耳も悪いの? 私の方がおじさん達より強いから、雑魚なのはおじさん達って言ったんだよ」


ああ……


ハリッサの駄目押して、おじさん達は完全に怒り心頭になってしまった……


「ちょっと! 冒険者ギルド内での争いは禁止ですよ!!」


おっ、やっと冒険者ギルドの職員が仲裁に入ってくれたのかな……


「うるせえな……」

「このガキもハンターなら模擬戦って事なら問題無いんじゃねえか?」

「そう言えばそうだな……おい、ガキ! そんなに自信があるなら真剣での模擬戦で決着つけてやるよ」


「真剣なんてダメですよ! しかも、ブロムスさんは中堅ハンターなんですから子供相手にムキにならないで下さいよ!」


「私は良いよ」


「なっ、ダメですって!?」


「ハンター同士が合意の上なら職員は何も言えないだろ? すぐに模擬戦するから、闘技場の使用許可を出してくれよ」


「うぐっ……分かりました。ただし殺しは駄目ですからね?」


「ああ、ちゃんと手加減してやるよ」


「アカリお姉ちゃん、私も手加減……必要?」


「何だとガキ!」


「ハリッサ……」


ハリッサに悪意が無いのは分かるし、悪いのは絡んできた方なんだけど、完全にハリッサが追加で煽った感じになってしまったなと思う。


ハリッサには前々から相手を怒らすようなことを言ってはいけないよって言い聞かしているのだけど、ハリッサは思ったことをすぐに話してしまうんだよな……

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