第49話 夢想一刀流④
僕は魔剣デュランダルを何とかする方法を知っているが、どうやって実行しようか悩んでいた。
当初の予定では、魔剣デュランダルの装備者を倒して、魔剣デュランダルを回収しようと思っていたからゴッドクオリティの魔剣を破壊することは考えていなかったから……
そんな準備は全くしていなかった僕の完全なミスだなと思う。
ならば、僕も罰としてリスクを負ってでも何とかしなくてはいけないと考えていた。
「ハリッサ! 魔剣デュランダルの足止めをしてくれるかなっ!」
「分かったけど、どれくらい?」
「う~ん、10分……いや、7分はお願い!」
「分かった!」
僕はアイテムボックスから、赤晶石の大剣の予備を大量に取り出すと、ハリッサと魔剣デュランダルから距離を取るため、その場から離れた……
【ハリッサ】
私はアカリお姉ちゃんの言われた時間を稼ぐため、必死で魔剣デュランダルの相手をしていた。
「スピードが落ちてきたな……そろそろ体力の限界なんじゃないのか? 我とお主では剣技の差はそれほど無いが、我とお主で決定的に違うのは身体能力の差だろう。我はアバターゆえに人体の限界を超えた速度で問題無く動けるが、お主が我の速度についてくるには、身体の負担が凄まじいだろう?」
「……」
確かにデュランダルの言うとおり、私の身体は限界を超えてきたのか身体中が痛くてたまらないけど、アカリお姉ちゃんに頼まれた時間は絶対に稼ぐ……
「あの鍛冶師アカリが言っていた時間まで、まだ5分もあるぞ? このままならば絶対に持ちこたえられないだろう? 何か他に隠している事があるのならば、早く出さないと死んでしまうぞ」
「そんなものは無いけど……死んでも時間は稼ぐ!」
「ふむ……隠し玉は無いのか……お主からは得体の知れない何かを感じていたから、てっきり何か他に隠していると思ったが、期待はずれだな……ならば時間内に殺してやろう」
そう言うとデュランダルの剣速は更に上がりだした……
「くっ……」
デュランダルの剣速がどんどん上がっていき、次第に私の反応を超えだした……
ズボッ……
「ぐふっ……」
デュランダルの剣が私のお腹を貫通して刺さり、私のお腹からは大量の血が吹き出した。
「子供にしては頑張ったのだろうが、やはり人の身の限界と言ったところだろう……」
そして意識が……
「……あの勇者みたいな化け物は別だろう……」
アカリお姉ちゃんとの約束を……
『力が欲しいか……?』
誰……?
『力が欲しいか……?』
欲しい……約束を守れる力……アカリお姉ちゃんを守れる力……アカリお姉ちゃんの敵を倒す力……
『ならば少しだけ貸してやろう……何者にも負けない力を……』
ありがとう。
あなたは誰なの……?
『我が名は……』
私の意識はそこで途切れてしまう……
【デュランダル】
我は今回、アロンダイト様の命令で鍛冶師アカリを抹殺しに来たが、鍛冶師アカリも素晴らしいレベルの鍛冶師ではあるが、アロンダイト様があそこまで執拗に抹殺してこいと拘るほどの驚異度には到底思えなかった。
しかし……
目の前のハリッサと呼ばれていた剣士は、鍛冶師アカリ以上の驚異度があると我は考えたので、本来ならば多用するのは控えたい限界突破をつかいハリッサに致命傷を与えた筈なのだが……
「なぜ、立ち上がれる?」
「ガアアァァ!!」
ハリッサは立ち上がると咆哮をあげる。
「何だ? 突然、獣にでもなったかのようだな……!?」
ガキィーーン!
ハリッサが咆哮を上げたと思えば、今までには考えられない速度で攻撃してきた。
この異常な速度は……?
この速度は我がアバターの速度を超えるぞ!?
ガキンッ!
ガキンッ!
ガキンッ!
ガキンッ!
「ガアアァ!」
「お主に何があったかは分からないが……素晴らしい剣戟だな。人の身で我がアバターを超えてくるとは……だが、惜しいな。お主の武器では我を倒すことは叶わぬ」
ハリッサの高速剣戟は確実に我がアバターを攻撃しているが、我を倒すには我が本体である魔剣デュランダルを破壊出来るだけの一撃を入れる必要があるのだが、ハリッサの使う武器には魔剣を超えられるだけの硬度が圧倒的に足りていなかった。
ガキンッ!
ガキンッ!
ガキンッ!
「ぐっ……アバター維持の限界が近付いて来たな」
魔剣デュランダルを破壊出来なくてもアバターにはダメージが蓄積されてしまうので、アバター維持の限界に来たら一度アバターを消して、再度アバターを構築しなくてはいけない。
アバターの再構築には時間にして5分くらいで、その間は魔剣デュランダルの本体は無防備になってしまうが、我が本体を破壊出来るだけの武器が存在しないのであれば5分くらいは問題無いだろうと考えていた。
しかもハリッサの動きが段々と鈍ってきていたので、アバター再構築するには丁度良いな。
先ほどまでの異常な動きには驚いたが、人の身であの動きを維持するのは無理があったのだろう。
そしてアバターの限界がきたので魔剣デュランダルを地面に深く刺し、アバターを消す。
ガキンッ!
ガキンッ!
ハリッサはアバターが消えると、本能的に我を倒せていないと理解したのか、今度は魔剣デュランダルの本体を攻撃しだした。
しかし我の本体には傷一つ付いていない。
さて、アバターの再構築をして止めを刺してやろう。
「あれ? 魔剣デュランダルのアバターが居ないけど、もしかしてハリッサが倒してくれた?」
「アカリお姉ちゃん……?」
「鍛冶師アカリ、戻って来たみたいだがお主等の武器では我に傷一つ付けられまい」
「うわっ、魔剣ってアバターが無くても喋れるの!? しかし、アバターを封じる為に造ったものが無駄になっちゃったけど、今の状況は好都合かな」
「この魔剣デュランダルが我の本体だからな……」
鍛冶師アカリは我が本体へと近付いてきて、そのまま魔剣を握ろうとする。
「何をするつもりかは知らぬが、魔剣デュランダルに契約者でも無い者が触ると呪いにより激痛を味わうぞ?」
「うん、知ってるよ。意志ある魔剣には契約者以外は触れない呪いがあるんだよね?」
鍛冶師アカリはそう言いながらも我が本体に触る。
何……?
「何故、呪いが発動しない……!? しかも、お主の触る箇所から違和感が……」
「うん、やっぱり予想通り魔剣は魔剣だね」
「何故、触れる!」
「普通ならば契約者以外は触れないけど、僕には鍛冶錬成によってゴッドクオリティだろうが作り変えることが出来るんだよ」
「魔剣を作り替えるだと?」
そんな馬鹿な……
我ら魔剣を造りだしたのは神々と言われており、武具を作り替えるには制作者よりも高い技術を要求される筈だ。
もし、我が魔剣を作り替える事が可能ならば、それは既に神々を超える鍛冶師という事になってしまう。
「まあ、鍛冶錬成で作り替えるにはある程度の時間動きを止める必要があるのが難点なんだけどね」
「魔剣を作り替えるとは、そんな次元の話では……ぐっ!?」
既に我が本体の半分以上が作り変えられており、我はアバターの再構築が出来なくなっていた。
なるほど……
アロンダイト様が鍛冶師アカリに抹殺命令を出す意味が今更ながら理解することが出来た。
この鍛冶師アカリは我々、神聖天の天敵……
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