第48話 夢想一刀流③

ドサッ……


ハリッサの赤晶石の大剣がデュランダルの

身体を肩から腰にかけて大きく斬り裂いた事でデュランダルは大の字に倒れた。


あれ?


僕は倒れたデュランダルを見て違和感を感じた。


何であれだけ大きく斬られたのに血が出ていないんだ……?


しかし、全く動かないし倒せたのかな?


「アカリお姉ちゃん! やったよ!」


ハリッサはデュランダルを倒したことに喜んでいた。


「お疲れ様、作戦通りだったね」


「うん、アカリお姉ちゃんの作戦が良かったんだよ!」


「その作戦とやらにまんまとやられたよ……」


「「えっ!」」


僕とハリッサは背後から声が聞こえたので振り向くと、ハリッサに斬られた箇所が大きく裂けながらも、普通に立ち上がるデュランダルの姿があった。


「不死身なのか……?」


明らかに致命的な切り傷の筈なのに、何でだ?


「我らには死というものは存在しないのだよ……まあ、死に近い表現をするならば破壊だな」


「破壊って、もしかして……お前は機械なのか?」


デュランダルが機械ならば、血が出ないのも納得は出来るが、こんな意志のある機械なんかを造れるとなると、僕の想像を遥かに超えた科学力が有ることになるが、ファイナルオンラインには機械なんて存在したかな?


「機械……我らはあの人形とは少し違う。我の本体はこの魔剣デュランダルなのだからな」


そう言うとデュランダルは、右手に持つ剣を前に突き出す。


「本体があの剣……ああ、なるほど……だから伝説の武具シリーズなのか」


僕はデュランダルの事を勘違いしていたみたいだ。


今まであのフードを被った男が、魔剣デュランダルを使いこなしているから、あんなに強いのかと思ったけど……


「そっちはアバターなのか……」


「ほう、アバターという言葉を知っているとは……ますますお主が何者か分からないな」


「アカリお姉ちゃん、アバターってなに? アイツはどうやって倒すの?」


「一部の魔剣のみが使える武技スキルで、幻刀の派生スキルってのがあって、1本の魔剣を2本にして二刀流として戦う高等武技スキルなんだけど、ごく稀にある意志ある魔剣の場合は、魔剣自体が魔剣を使う装備者を作り出す事が出来る超高等武技スキル……それがアバターなんだけど」


「凄いものだな、アバターをそこまで理解しているものは、この2百年の間で2人目だな」


「だけど、このアバターが使える魔剣はゴッドクオリティのみで、それこそ神々が作り上げた伝説の武具シリーズとかね……」


僕は伝説の武具シリーズイベントはやっていないから詳細は分からないけど、確かクロポンがアバターを使う敵は倒した方が特殊過ぎて苦労しているって聞いた気がする。


そのために、クロポンは僕に特殊な武器を注文してきて、指定された魔剣を造るのには大分苦労したのを覚えている。

 

「しかし、アバターを知っているならば、我が死なない事も理解しているだろう? そして、我を破壊するにはゴッドクオリティである、魔剣デュランダルを完全に破壊出来るのはゴッドクオリティを超えるクオリティのみだが、ゴッドクオリティ以上は存在しない以上、我を破壊するのは不可能」


「確かに……」


同じクオリティの武器で片方を破壊しようとすると、相当の実力差があるかわざと折れやすい角度で斬りつける位だけど、魔剣デュランダルがわざわざそんなことをしてくれる筈はないので、魔剣デュランダルのいうとおり、破壊は事実上不可能ではある。


しかし、僕には魔剣デュランダルを破壊以外で何とかする方法を知っているのだけど……それを実行するにはいくつか問題があるんだよな……

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