第45話 行商人マルコス
僕はアカリ店長として行商人のマルコスと話をすることになった。
「初めまして、僕がアカリ屋の店長をしているアカリです。今日はよろしくお願いします」
「……え、本当にアカリ店長ですか?」
マルコスさんは驚いた表面で、隣に座るハルさんに視線を向ける。
「マルコスさんが驚くのも分かりますが、こちらは本当にアカリ店長です」
「……なるほど、私は行商人をやらせてもらっていますマルコスと言います。アカリ店長の見た目があまりにも若いので……失礼しました」
「ああ、そう言うことですか。僕は気にしないので大丈夫ですよ」
最近では町の人達は僕に対して普通の大人みたいな対応をしてくれるから、たまに見た目が10歳位の少女だという事を忘れてしまうんだよな。
「すいませんでした、それで今回はハルさんにも話しましたが、アカリ屋で販売しているアカリ包丁とアカリフライパン、可能ならば湯沸かし器を代理販売させて欲しいのですが、どうでしょうか?」
「僕としては、あまり代理販売ってのはお互いに利益が無さそうな気がして乗り気では無いんですよね……」
「現在、アカリ屋で販売されているアカリ包丁は8000コル、アカリフライパンは1万コルですが、私に他の町で代理販売させてもらえるのでしたら、最低でも3倍の値段で販売する自信があります。そして……」
「え、3倍!? いや、それは高すぎるでしょ?」
いやいや、包丁に24000コルを出す一般人なんてそうそういない気がするぞ、しかしフライパンなら3万コルだよ?
「えっと、ハルさん? 私はアカリ屋の値段設定に疑問を持っていたのですが……もしかして町の住民に対して奉仕精神で値段設定が安いのかと勝手に考えていましたが、アカリ店長の金銭感覚のせいなのですか?」
「はい、その通りです……」
えっ、なに?
マルコスさんは驚愕の表情をしたかと思えば、心配そうな表情で僕を見てきた。
僕の金銭感覚ってそんなにおかしい?
いや、クリファスさんから物価についてはいろいろ聞いた結果、日本円とコルはほとんど同じ価値だという判断をしたので、極端に金銭感覚がずれているという事はないはずだ。
それに2ヶ月間の売り上げだって、ハルさんやキャロルさんの人件費や仮に位に家賃を払ったとしても完全な黒字になる計算だから、経営として間違ってはいないはず……
まあ、経営経験ないから計算はざっくりだし、プロから見たら穴しか無いだろうけど、アカリ屋を経営するだけならば問題無いだろう。
「失礼ですが、アカリ店長はご両親からお店を引き継いだばかりとか、そう言った事なのでしょうか?」
「いや、2ヶ月前にオープンしたばかりのお店ですよ」
「それでしたら、既に赤字経営ではないのですか?」
「そうなのですか、アカリ店長?」
マルコスさんとハルさんは心配そうな表情で僕を再度見てくる……
「いえ、完全に黒字ですよ」
「そんなバカな……アレほどのクオリティの雑貨を作成出来る職人を何人も雇ったり、作成する為の場所や店舗の維持費や……極端な話、赤晶石の材料費だけでも赤字になるはずです! 私からしたら黒字になる要素はどこにもありませんよ!?」
「ああ、そう言うことですか……マルコスさんの考え方は根本から間違えています」
「根本から!?」
「はい、そもそも僕は鍛冶師なので材料の調達から加工まで全ては1人でやっていますから、職人の人件費や材料費は実質的にはかかっていません」
「そんなバカな……アレだけのものを子供であるアカリ店長が1人で……?」
「加工現場は見せられないですが、事実ですよ」
「……そんな事が可能なのか? いや……まてよ……いや、やはり無理だ……」
今度はマルコスさんがひとりでブツブツ話し出してしまった。
ぶっちゃけ、僕は既にそこそこ稼いでいるからな……
「あの、マルコスさん。僕から提案ですが、代理販売じゃなくて僕の店から買った商品を余所で高く売れば良いんじゃないですか? もし大量に欲しいなら注文してくれればある程度の数は用意しますよ」
うん、僕としてはこれがシンプルで良い気がする。
「それでは転売になってしまいますよ」
「転売すれば良いんじゃないですか?」
「あの……この国の法律で転売は犯罪になります」
「えっ、でもマルコスさんは行商人として商売してますよね?」
「ですから、わたしが販売しているのは代理販売契約をしている商品だけなのですよ」
「それで代理販売にこだわるんですか……面倒な契約とかはしたくないんだけどなぁ」
「それでしたら、契約や経理の事務担当の人を雇うのはどうでしょうか? 私と代理販売していたたければ、事務担当の給料分の利益は確実にでますよ」
「なるほど……」
またクリファスさんに頼んで事務担当を雇うかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます