第44話 アカリ屋オープン
僕とハリッサがクリファスさんの空き家に引っ越してから2ヶ月の期間が過ぎていた。
「アカリ店長! またアカリ包丁のメンテナンス依頼が8件ありましたのでメンテナンスをお願いします!」
「アカリ店長! こっちは本日分のお弁当が完売しました。並んでいるお客様からはお弁当の数を増やせないかとの要望がありました!」
「ハルさんとキャロルさん、報告ありがとうございます。ハルさん、アカリ包丁のメンテナンスは明日までにしておきます。それと、キャロルさんお弁当の数を増やすのはすいませんが現状では難しいので、お客様にはすいませんとお伝え下さい」
「「わかりました!」」
アカリ屋をオープンしてから2ヶ月、アカリ屋は毎日のように大繁盛だった。
特に鉱山で採掘したレッドミスリルを加工して造ったアカリ包丁と、以前に食堂で販売したお庭唐揚げ弁当とハンバーガー弁当は大人気だ。
アカリ包丁は見た目が宝石のように綺麗な上に切れ味が抜群とのことで、割と高めな包丁なのにバカ売れして、今では格安のメンテナンス依頼が毎日のように来ていた。
まあ、包丁のメンテナンスは1本当たり10秒ほどで出来てしまうので、格安でもかなりの利益が出ていた。
そして、アカリ屋がオープンした当初は僕とハリッサで販売などをしていたが、予想以上に大混雑したので、クリファスさんが早急に2人の優秀な人材を探してきてくれて、アカリ包丁などの雑貨部門にハルさん、お弁当部門にはキャロルさんを雇うことにした。
ぶっちゃけ、僕とハリッサには接客経験もなかったので、ハルさんとキャロルさんに接客を丸投げできたのは助かったと思う。
雑貨部門の商品を造るためにいろいろなものを加工してフライパンやヤカンなど金属製品などをいろいろ造ったけど、鍛冶錬成は最初に考えていた以上に汎用性があってびっくりしていた。
鍛冶錬成は錬金術ではないのか?と思えるほど優秀で、内部までしっかりとイメージさえ出来れば簡単に金属製品が造れてしまうのだ。
しかも、メンテナンス依頼がある包丁などにも使え、鍛冶錬成と微量の赤晶石を用意するだけで、あっという間に新品になっていた。
ちなみに、鍛冶錬成の欠点があるとすれば、内部が複雑になればなるほど失敗率が高くなるし作成時間もかかってしまう事だろう。
前に試しで普通の銃を造ろうとしたけど、内部構造がさっぱり分からないので普通の失敗してしまった……
「そう言えば、また行商人のマルコスさんがアカリ包丁やアカリフライパン、あとは湯沸かし器を代理販売させて欲しいと話がありましたけど、どうしますか? はっきりと断りますか?」
「ああ、マルコスさんかぁ。良さそうな人だから悪い話ではないんだけどね……アカリ包丁とアカリフライパンが他で売れるのかな? 僕は流通がほとんど無いこの町だから売れているだけだと思うんだけどなぁ……」
アカリ包丁とアカリフライパンってちょっと切れ味の良い包丁と、ちょっと軽くて焦げにくいだけのフライパンだから、最大利点である格安のメンテナンス依頼が無くなっては、わざわざ高い包丁とフライパンを買うとは僕には思えなかった。
ちなみに湯沸かし器の内部には赤晶石がはめ込まれており、覚醒状態の火の下位精霊が水を瞬時に沸騰させてくれるという、裏技っぽい商品で、内部の赤晶石を取り外して悪用されないように、マスター権限で下位精霊には水をお湯に変える以外はしないように命令してある。
「私が言うのも失礼かもしれませんが、アカリ店長は自身の造る製品を過小評価し過ぎると思いますよ?」
「そんなことは無いと思うけど……」
「ちなみに、他の町で販売されている包丁やフライパンは見たことありますか?」
「いや、無いけど……普通、包丁やフライパンってあんなものでしょ?」
他の町には鍛冶師がいるのだから、剣を造れる人なら包丁も造れるだろうし、フライパンも多重構造にして表面を目に見えないレベルの段差を造るなどのは加工しているが、包丁やフライパンってそんなものだろうと思った。
そりゃあ赤晶石を加工出来る利点でお金持ちには売れるかもしれないけど、大した数にはならないだろう。
「はぁ……アカリ店長には一度、新品の普通の包丁やフライパンを見せてあげたいです……」
「そうですよね……アカリ店長は若いのに凄い知識があるかと思えば、一般的な常識が無いんですもんね……」
「そんなに常識がないかな……?」
この2ヶ月で割と常識を身に付けたと思うんだけどなぁ。
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