第43話 雑貨屋のイノベーション
僕は魔憑きについてや勇者達のことをもっと聞きたかったけど、クリファスさんはそれ以上のことは知らないみたいなので、とりあえずは保留にする事にした。
「まあ、急いでいる訳でもないから、とりあえずはクリファスさんから借りた家を雑貨屋として増改築するかな」
「アカリお姉ちゃんがお部屋を造るの?」
「そうだね……ハリッサは何か造って欲しい家具や部屋はある?」
「私は特に無いかな……あっ、鉱山でやっていたスキル上げが出来る場所が欲しいかな」
「ああ、硬い岩を斬りつけたりするスキル上げか。うん、なんとかするよ。あとはハリッサ専用の部屋も欲しいでしょ?」
スキル上げする場所はどうしようかな……ここは近隣が高級な住宅の集まる住宅街なので、ハリッサが硬いものを連続して攻撃するとかなり高音の金属音が鳴り響く。
庭でスキル上げをさせたりすれば確実に近所迷惑になるだろう……それは室内にスキル上げ部屋を造っても近所迷惑になるのは変わらないだろう。
だから、防音部屋を造らないとなぁ……そう言えば防音機能ってどうすれば良いのかな?
ファイナルオンライン内にもマイホームカスタマイズってシステムがあったから、鍛冶師も家具や部屋をカスタマイズすることは出来るはずだけど、ゲーム内では騒音問題なんて無かったから、防音機能を付けるなんて機能は無かったはず……
「……はいらないよ」
「えっ? ごめん、聞き逃したから、もう一度お願い」
防音機能をどうするか考えるのに集中し過ぎてハリッサの話を聞き逃してしまった。
「私専用の部屋はいらないよって話」
「ハリッサ専用の部屋がいらないって、どこで寝るの?」
一応はリビングをあるから、そこで寝ることも出来るけど……
「だって私はアカリお姉ちゃんと一緒に寝るから専用の部屋はいらないよ」
「え、僕と同じ部屋に……」
今までハリッサと一緒に寝ていたのは、ハリッサが初めての場所で不安だろうから、一緒に寝ていたけど……新しい家に住むならやっぱりプライベートスペースは必要だろうと思っていたから、当然部屋は別々だろうと思っていたが……
「ダメですか?」
うっ……
ハリッサと一緒に寝るのは嫌ではないのだけど、ハリッサみたいな超美少女が抱きついてきている状況は僕の方がドキドキしてあまりぐっすりと眠れないんだよなぁ。
いや、僕は断じて少女趣味な訳ではない……のだが、元々女の子と話したりする機会が少なかったのもあり、ハリッサみたいな可愛さが限界突破したような女の子が毎晩至近距離にいると、間違いを起こしてしまいそうな……いやいや、それはない……はず。
そう、僕は前世で成人した立派な大人の男だったのだ、例え超美少女だろうと8歳の女の子に間違いを起こすことなど有り得ないだろう。
「まあ、ハリッサがそうしたいなら構わないよ」
ここは、大人の許容の広さを見せねばなるまい。
「やったぁ、アカリお姉ちゃん大好き!」
ぐふっ……
今はまだハリッサが小さな美少女だから、なんとか耐えられるが……もう少し成長したら耐えるのは無理じゃないか?
【聖都グランザリア】
俺はアロンダイトに全身真っ黒な鎧と魔剣ラグナロクを身に付けさせられていた。
「アロンダイト、俺はあまり全身鎧とかは好きじゃないんだが……」
全身鎧は防御力は上がるが、機敏性が極端に下がるし可動域が制限されるので、俺みたいな敵の攻撃は全て回避して、魔剣で敵をゴリ押しするスタイルにはあまり利点は無いんだよな。
「すいません、勇者様。今日は我々の仲間に勇者様を紹介しようと思っているので、威厳を持たせる為に魔装ティルフィングを用意させてもらいました」
「魔装ティルフィング? ティルフィングは魔剣だろう?」
俺はこれでも魔剣は好きだから伝説上の武器名などは詳しいがティルフィングは魔剣の筈だ……
それよりも、アロンダイトの仲間たちに俺を紹介するのか……
「……ティルフィングは魔装ですよ? 勇者様のいた世界とはちょっと違うのかもしれませんね」
「そうなのか?」
アロンダイトの返答には少しの間が気になったが、それよりもそろそろこの城から逃げる算段をしないといけないなと考えていた。
まだまだアロンダイトと戦えば100パーセントで負けるが、逃げるだけなら十分な体力と身体能力は手に入れられたのではないだろうか……
「はい、それよりもこちらの扉を開けると仲間が待っておりますので、さあ勢いよく開けて下さい、勇者様」
俺はアロンダイトの言われるままに頑丈そうな扉を勢いよく開ける……
は?
「ここは?」
俺は扉を開けて入った場所は、闘技場の様な広いスペースで、外周部には百人近い人が観客のように座っていた……
そして、広いスペースの真ん中には若い女性が大きな斧を持ち、斧を震えながら構えていた。
これはどういう状況だ?
バタン!
アロンダイトにどういうことか聞こうとしたら、入って来た扉をアロンダイトに閉じられていた。
「勇者様、最後の仕上げです! 我々の勇者様の勇姿を仲間に見せるため、人族の女勇者を殺して下さい!」
「は? 俺が女勇者を殺す?」
目の前で震えながら構えているのが女勇者なのか?
よく見たら身体中が傷だらけだな……
「ああ、安心して下さい。勇者様に比べたら、あの女勇者は召喚に失敗した低レベルな者でしたので、殺しても大した戦力低下にすらなりません」
「いや、アロンダイト……そう言うことではなくて、何故俺が女勇者を殺さなくてはいけないのだ?」
「それはもちろん我々、神聖天にとって人族は敵ですから、勇者様にも人族と決別し、我々の新たな魔王として君臨して頂きたいのです!」
俺が魔王に……?
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