第42話 魔憑き
僕とハリッサはクリファスさんに連れられて、例の空き家に案内してもらっていた。
案内されたのは空き家は外観だけなら2階建ての普通の家かと思ったけど、中に入れると……部屋の数は全部で4部屋で、トイレと水場はあるけど、キッチンや風呂場などは無いという、生活するには何かが足りない感じの空き家だった。
あと、庭は建物の四倍近い広さがあったのだけど、芝生しかないただ広いだけの庭だった。
「ああ、ここは私がセカンドハウスとして使う予定だったから、キッチンなどが無かったのを忘れていました。1週間くらいもらえれば一般的な家に改装出来ますけど、どうしますか? あと、一緒に店舗用に改装した方がアカリさんの為になりますかね……」
「あ~、クリファスさんにそこまでしてもらうのは悪いので、このままでも良いですよ」
「ですが、このままだと雑貨屋としても使えませんよ?」
「建物や土地は自由にして良いんですよね? 例えば、僕が建物を店舗用に改築したり、庭に建物を増やしたりとか」
「それは全然構いませんよ。土地の所有権は私ですから、アカリさん達が勝手に改良する分にはなんの問題もありません」
「ならこのままで良いですよ。あと、森にある木とかって自由に切っても良いんですか?」
「町からある程度離れれば大丈夫ですよ……ああ、そう言えば地図も見せるって約束でしたね。良かったら、明日にでも町の管轄内外を記した地図をお持ちしますよ」
「ありがとうございます」
そうだった。
僕は鍛冶勇者として前衛職の勇者達を探して、勇者達に武器を造ってあげる使命があったんだった……
ってか、勇者達だけに配らずに鍛冶屋を開けば、多少は戦力増強になるんじゃないのかな?
「勇者達かぁ……」
「あれ? アカリさんも勇者達に憧れているんですか? そう言うタイプには見えなかったので、意外ですね」
「え、クリファスさんは勇者を知っているんですか?」
「それはもちろん知っていますよ。ハンターならば勇者に憧れる人は多いと思いますよ」
「ハンターの憧れなんだ……勇者がどの街にいるかは分かりますか?」
「え? 勇者達は既に亡くなっていますよ?」
「えっ!? 勇者達が死んでる?」
「はい、勇者達が異界から召喚されたのは100年ほど昔だと思います。そして、勇者達は魔王達との決死の戦いにより亡くなったというのが伝えられている勇者伝説ですね。まあ、最終的には勇者達は死にますが、それまでの勇気ある行動により世界を救うというところが私は大好きです。特に槍の勇者が……」
「ちょ、ちょっと待って……いろいろ確認したい事ばかりなんだけど、異界から召喚された勇者の話って100年も前なの?」
「はい、約100年前って感じですかね」
僕が召喚されたみたいに、昔にも同じように勇者が召喚されていたって事なのかな?
他の勇者達と召喚された時間軸がずれてしまったなんてミスは無いよね?
あの女神のことだから、やらかしそうで何だか怖いな……
「最近、勇者が召喚されたって話は聞かないですか?」
「最近ですか……私はほとんどこの町から出ないので、最新の情報は無いので分かりません。多分、町の誰に聞いても同じだと思いますよ」
「そうなんですか……あと、魔王っていっぱい居るんですか?」
女神からは魔王討伐の支援を頼まれたけど、クリファスさんは魔王達って言ったんだよな……
「はい、魔王は複数いますよ」
マジか……魔王が複数いるのなら支援協力なんて受けなかったぞ……
「魔王って普通は1人じゃないんですか?」
「アカリさんの言う普通がよく分かりませんが、魔憑き達の王を魔王と呼ぶので……」
「魔憑きってなんですか?」
ああ、しかも凄く嫌な予感がしてきたぞ……
「魔力に魅了されたものを魔憑きといいます。例えば、我々人族も魔に魅了されれば魔憑きになり、魔憑きが集まり、国を作れば魔王が誕生します」
「うわっ……それってかなりの数の魔王がいますよね?」
人族がどうやって魔憑きになるから分からないが、かなりの数が魔憑きになれば、魔王は果てしなく増えるんじゃないのか?
僕は魔王とは何なのか、本当の意味で分かっていなかった……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます