第41話 マチルダ専用武器

僕は燃え尽きていくカカシ君を見つめながら、どうしようか迷っていた。


こんな制御の効かない武器をマチルダさんに販売して良いのか……という話と、カカシ君の修理代というか新品を買うお金を弁償しようと思っているのだが……


「えっと、すいません!」


「あっ、え、アカリさんは謝る必要は無いですよ! まさかカカシ君が壊れるだなんて思いませんでしたから!」


「今はお金が無いですが、弁償しますから……」


「それも大丈夫ですよ。カカシ君は冒険者ギルド本部からのリース品なんですが、不良品だったので壊れたって言えば大丈夫ですよ」


「え、こんな消し炭なのに、不良品で通りますか?」


明らかに人為的な力で壊した感じなんだけど、これを不良品って言うには無理がないだろうか?


「はい、どうせこんな辺境の冒険者ギルドまで本部の人は来ませんから、また中古のカカシ君を送って終わりですよ。だから、アカリさんは気にすることは全くありません」


「ありがとうございます。それで、剣の販売ですが……予想外に危ないみたいなんですが、止めときますか?」


こんな暴走してしまうかもしれない武器は買いたがらないのではないだろうか?


『あれは暴走じゃないですよ! 普通に火力が出過ぎただけですよ!』


火の精霊さん、火力制御の出来ないそれを一般的に暴走って言うんだよ……


『それは……』


「ちょ、アカリさん? まさか、売らないとか言わないですよね? 私は買う気でいるんですけど?」


「でも、カカシ君みたいになったら……」


「それはアカリさんの言う武器スキルを使えばって事でしょ? なら、私が武器スキルを使わなければ問題ないわよ。そもそも私が初めて聞いた武器スキルを使えるのかって問題もあるけどね……」


「それなら、問題無いのかな……あっ、それならマチルダさん用に新しく武器を造るってのはどうですか?」


この武器には中位精霊が宿っているから、もし仮に武器スキルが誤って発動したら危険だけど、武器スキルをそもそも使う気がないのなら、マチルダさん用にカスタマイズした武器を作ってあげて、その中から下位精霊が宿ったものをマチルダさんに渡せば問題が全くなくなるのではないだろうか。


「え、私用に造ってくれるの? でも、500万コルが私の出せる限界だから、私用に造ってもらうと……」


「それは大丈夫ですよ。金額は500万コルのままで、マチルダさんが欲しい形状の武器を造りますよ」


「本当に!? それは嬉しいわ! 是非お願いしたいわ! その大剣は大きさの割りには非常に軽かったけど、私が普段使う剣よりは重いなとは思っていたのよね……」


「そうだったんですね、この剣はハリッサ用に少し幅広な剣にして刀身を重くしていたんで、マチルダさんには重かったのかもしれないですね」


「アカリさんは晶石でそんな細かな調整も出来るの?」


「はい、素材自体の重量は変えられないので、軽くするなら刀身は細くなりますけどね。参考までにマチルダさんがお気に入りの武器などがあれば、それを参考にして造りますよ」


「それは嬉しいわ! なら明日にでも家にある剣を持って来るわ……泊まっている宿を教えてくれれば、そこに持っていくわ」


「あっ、今のところはクリファスさんの屋敷に住まわせてもらっているんですが、さっきクリファスさんが空き家を貸してくれるとか……」


「え、クリファスの空き家を借りるの? 屋敷に泊まってたほうが楽じゃない? クリファスもアカリさん達が居ても対して支障は無いでしょ?」


「まあ、私としたら屋敷にアカリさん達が住んでいてくれた方が有り難いけど、アカリさんは町にいる間は私の空き家で雑貨屋を開いてくれるらしいので、町としたらその方が良いかなと思っているんですよ」


「なるほどね、この町にはちゃんとした鍛冶を出来る人はいないから、アカリさんの造ったものが雑貨屋で買えるなら、町としては有り難いわね」


「僕が雑貨屋で造るとしたら、包丁とかフライパン、日用品くらいなものですよ。まあ、依頼があればそれ以外も造りますけどね」


「アカリさんの包丁!? それ、凄く興味があるわ……」

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