第40話 火の精霊

僕は武器に精霊が宿るという事実を知り、今までハリッサにボンボンとスキル上げの為に武器を破壊させていたことを思い出し、申し訳なく思ってしまった。


武器に宿っていた精霊も一緒に殺していたのだろうか?


『それは気にしなくて大丈夫ですよ。私達、精霊は死にませんから、宿っている武器が壊れたらまた別の何かに宿るか彷徨うだけです』


そんな感じなの?


それなら少しは安心した。


『それでマスターは私の力を使いたいのですか? 先ほどの会話を聞いていたら武器スキルを使いたいとか話していましたよね』


あ、うん。


まさか、武器に精霊が宿っているとは思っていなかったのだけど、もしかして武器スキルって精霊の力を借りていたのかな?


『多分、そうだと思われます』


なら、試しに一度ちからを使ってくれないかな?


あと、この剣は隣にいるマチルダさんに売っちゃうから、僕はマスターじゃなくなるけど、大丈夫かな?


『私達の言うマスターとは創造主のことで、使用者のことはパートナーと呼んでいます。私はこの剣の中が心地良いので宿ってるだけですから、パートナーは誰でもかまいません』


なるほどね……ちなみな、パートナーが誰でも力は貸してくれるのかな?


『魔力さえくれるなら、その分は力を貸しますよ』


そっか、なら一度試しに力を貸してくれるかな?


僕は赤晶石の大剣に魔力を流してみる。


『あっ、そんなに魔力を入れられると壊れちゃいます!』


えっ、ご、こめん!


「マチルダさん、僕が試しに赤晶石の大剣の武器スキルを使ってみるけど、良いかな?」


「まだその剣はアカリさんのですから、自由に使って下さい。私としても見てみたいですし」


「了解! なら、あのカカシ君に向けて……『燃えろ』!」


ボワッ!!


僕が火の精霊から力を借りて、武器スキルを発動すると、刀身が赤く燃え上がり、どんどんと温度が上昇しているのが分かる。


ボワンッ!!


僕は大剣を持ち上げるでもなく、両手で床にちょっと刺して大剣を支えるような状態で構えているのだけど、大剣から巨大な火の玉が突然飛び出して、カカシ君に直撃した。


イメージ的には武器からファイヤーボールが飛び出すような感覚だろうか。


ピコン!

『最大ダメージ768、最大速度36、連続コンボ1』


「うわっ、凄い火の玉が出た……」


火の精霊により出された火の玉は僕が想像していたよりも数倍は大きな火の玉でびっくりした。


「す、凄いですアカリさん! 赤晶石の剣にこんな隠された力が有っただなんて初めて知りました!」


ピコン!

『最大ダメージ985、最大速度0、連続コンボ2』


「えっ? カカシ君に直撃した火がまだ消えない? マチルダさん、火が消えない場合は……」


「そ、そんな……カカシ君は攻撃吸収機能が付いているので、当たった攻撃が継続されるだなんて聞いたことがありません!」


ピコン!

『最大ダメージ1270、最大速度0、連続コンボ3』


「ちょ、アカリさん、火の玉を消せないんですか!?」


「僕にも分からないです!」


火の精霊さん、火の玉を消せない?


『ごめんね、手元を離れた火の玉は私の制御を外れちゃってるから、どうにも出来ないんだよ……でもおかしいな? 私が放った火の玉は最低クラスの火力の筈なんだけど、何であんな火力になったのかな?』


ピコン!

『最大ダメージ1590、最大速度0、連続コンボ4』


ボフッ!!


「あああっ!? カカシ君が壊れた!?」


結局、カカシ君に纏わりつく火の玉の火は消えることなく、カカシ君が消し炭になるまで燃え続けてしまった。


もし、あれが人に向かって放たれていたと思うと、怖さを感じてしまった。




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