第46話 夢想一刀流

僕はアカリ屋の従業員に新しい事務担当を迎え入れた。


「……アカリ店長、本当にこの価格で良いのですか? 私もマルコスさんの言っている値段まで引き上げても売れると思っています」


この事務担当であるダラスさんは、またしてもクリファスさんに紹介してもらった人で、アカリ屋には勿体ないレベルの有能な人で、事務担当とは言っているけど、法律から経営など幅広く出来るらしい。


「値段に関してはそのままで良いよ。あと、マルコスさん経由で良いから赤晶石を使われたアカリ包丁やアカリフライパンは新品に割安で交換出来るサービスも開始出来るように交渉をよろしく」


「分かりました。新品の3割で新品に交換出来る感じで良いですか?」


「うん、それで良いよ」


代理販売するにあたり、アイテムボックス内にはまだまだ大量に素材はあるが再利用出来るのならば、勿体ないので再利用したいなと考えていた。


新品に作り替える鍛冶錬成は、1から新品を造るよりも制作時間は短く、消費魔力も少ない上に消費素材も微量で、しかもスキルが上がるという良いこと尽くめのサービスなので、僕としては新品を売るよりも新品交換サービスをメインにしたいくらいだった。


「最終確認ですが、本当にこんな新品交換サービスなんてやって良いのですか? 私からしたら必ず利用したくなるサービスですが、普通に考えたらアカリ店長の負担を考えたら利益はほとんどない気がするのですが……」


「うん、大丈夫だよ。それじゃあ、僕は久しぶりに1週間ほど町の外へ行ってくるから、後のことは任せたよ」


「分かりました。お弁当販売部門は3日間の営業して、それ以降は臨時休業にしておきます。あと雑貨部門の在庫はしっかりとありますし、問題ありません」


僕とハリッサは定期的にレッドミスリルの採掘出来る鉱山へスキル上げの為に出かけていた。


まあ、スキル上げだけならばハリッサの場合は店舗の地下3階に造った広い修行スペースに鍛冶錬成でレッドミスリルを超圧縮しただけの塊をひたすら斬るという作業で充分だし、私も採掘スキルは上げたいけど、レッドミスリルでは限界に近いので、スキル上げはついでだったりする。


ならば、僕とハリッサの本来の目的は……


「お主たちはやはり生きていたのか……」


「僕達はあれ位じゃ死なないよ!」


「今度は私達が勝つから!」


そう、僕達がレッドミスリルの鉱山に来る本来の目的は、デュランダルにリベンジする為だったのだ。


「お主、もしかしてアカリという名前ではないか?」


「っ!? 何であなたが僕の名前を知ってるんだ!?」


「確か、そっちの剣士がアカリと叫んでいたのを思い出してな……死体の確認をするために来てみれば、死体の痕跡が無いではないか! もしやと思ってみれば、本当に2人と生きていたとはな……」


「何でわざわざ僕達の死体を確認しに来たんだ?」


あの時、しっかりと確認していれば済むはずなのにわざわざ戻って死体を確認しに来たというのに違和感を感じたので聞いてみる。


「ふっ、ゴッドクオリティを持つ鍛冶師で名をアカリ……ここまで条件の揃う偶然などそうそう有るまい」


「何の話だ……?」


「お主には神聖天の序列上位より探し次第、確実に殺し、死体も回収してこいと命令されているのだよ。それよりもそっちの剣士は話よりも早く戦いたがっているな? さあ、あれから強くなったか見てやろう……」


ガキンッ!!


そう言われると、ハリッサは視認できないほどのスピードで駆け出し、デュランダルに斬りかかる。


「ふむ……あのときも年齢に似合わず強かったが、この短期間で更に腕を上げているな。やはりお主らは討伐対象になるだけのことはあるなっ!」


ガキンッ!

ガキンッ!

ガキンッ!


ハリッサとデュランダルの腕が視認できないほどのスピードで斬り合いだした……ハリッサも劇的に強くなったけど、それを平然と受けきっているデュランダルもやはり予想以上の化け物級の強さだった……

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