第38話 カカシ君

僕はゲーム内とは見た目が全く違うカカシ君を見てびっくりしていた。


「この半透明な丸い球がカカシ君?」


「そうですよ」


えっ……?


ゲーム内のカカシ君はちょっと丸っこいけど、藁で出来たカカシだったのだけど、目の前にあるカカシ君は、カカシの要素が全くないのだけど?


「カカシ君って藁で出来ていて、もう少し人型じゃないんですか?」


「それはオリジナルのカカシ君じゃないですか?」


「お、オリジナル?」


オリジナルのカカシ君ってなんだ?


「オリジナルのカカシ君は、神々が作ったとされていて、不壊のカカシ君らしいです。そして、目の前にあるカカシ君はオリジナルに近づけるために日々改良されているカカシ君ということです」


「なるほど、それで改良を重ねた結果、カカシ君58号なんですね」


「そうみたいです。それでは私から試し斬りをさせてもらいます」


そう言いながら、マチルダさんは赤晶石の大剣を鞘から抜くと、赤く透き通った刀身を眺めて、うっとりとした表情をする。


さっきも思ったのだけど、マチルダさんって剣を握らせてはいけないタイプの人なんじゃないのか?


「クリファスさん……マチルダさんって剣を握るといつもああなんですか?」


僕はちょっと心配になったので、小声でクリファスさんにマチルダさんのことを聞いてみる。


「……そうなんだよね、昔にハンターとして組んでいた時から、美しい刀身を見ると人格が変わったようになってね。あっ、でもただの武器フェチみたいなものだから害はないよ」


「確かに害は無さそうですが……って、クリファスさんとマチルダさんは一緒に活動していたんですか?」


「うん、まあ小さな町だからね。ほとんどのハンターは仲間みたいなものだよ」


シュッ、シュッ、シュッ!


ピコン!

『最大ダメージ135、最大速度12、連続コンボ3』


ああ、やっぱりゲーム内のカカシ君と全く同じで懐かしいなと思った。


カカシ君は攻撃を食らうと、斬撃でも魔法スキルでも全ての攻撃を数値化して、最大ダメージというのを計測し、カカシ君が発表してくれるのだ。


他にもカカシ君に攻撃したときの斬撃速度やある一定のタイミングで連続して攻撃をあてるとコンボとみなされ、何回コンボを繋げたかを教えてくれた。


「やっぱりアカリさんの剣だと最大ダメージが全然違うわね……晶石を加工しているから軽くて丈夫だなんて、素晴らしいわね」


「そうなんですか?」


「ええ、これならばいくらだしても買いたいって人はたくさんいると思うわ」


「……ちなみに、どれくらいで売れるんですかね?」


「そうね……私はあまり大都市には行かないから、正解な相場は分からないけど、最低でも500万コルにはなると思うわよ」


「500万コル? すいません、コルの価値が分からないのですが……」


「そうだったわね、アカリさん達は記憶喪失だから、常識的な事も分からないのね……」


マチルダさんにいろいろな値段を聞いてみたが、1コルは1円より少し高い位の価値だった。


ってことは、赤晶石の大剣が1本500万円近い価値がある!?


確かにハリッサが使う剣だから、赤晶石の剣では一番良い仕上がりの赤晶石の大剣だったけど……


「いくら何でも高すぎませんか?」


「そんな事は無いわよ! 売ってくれるのなら私も買いたい位よ……?」


マチルダさんは赤晶石の大剣をギュッと握り、本当にその剣が欲しいんだなと思った。


「そんなに買いたいのなら売りましょうか?」


「えっ!? 本当に? 本気にしちゃうわよ? 500万コル?」


「はい、値段もそれで良いですよ」


「やったぁ!!」


アイテムボックスには似たクオリティの大剣が何本もあるから、1本位ならマチルダさんに売ったとしても痛くもない……ってか、本気であの値段で買う気なのか?

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