第32話 お弁当の販売
僕とハリッサは厨房内で大量のお弁当を作成したのだが、販売するのはやはり食堂の店員に任せた方が良いかなと思ったので、お弁当の説明だけして販売は丸投げする事にした。
「本当に俺達が販売して、利益の8割ももらって良いのか?」
「はい、食材のほとんどはクリファスさんがだしてるし、僕とハリッサはちょっと作成しただけだから、クリファスさんが良いなら僕らは利益の1割りで良いですよ」
僕らは金銭感覚が分からないのもあるけど、接客業が苦手だというのもあり、僕はクリファスさんに販売を他の人に任せられないか聞いてみたら、食堂の人にやらせたらどうかと提案してくれたので、僕はクリファスさんの提案にのっかる事にした。
「僕が案内した食糧庫にあるものだけで、こんな美味しそうなお弁当を作ったアカリさんよりは貰えないし、私はそこまで今回の件で稼ぐ気は無いから、ちょうど良いんじゃないかな? それに冒険者ギルドにも早く行けるようになるから、私からしたら悪い話ではないよ」
「そうなのか……? 俺もお弁当を食べさせてもらったが……このおにぎり唐揚げ弁当はかなりの完成度は素晴らしいな。このおにぎりの材料は何なのだ? 麦とも違う感じだが……クリファス、この食材を後で販売してくれ」
「分かった。私は食糧庫の中身を把握していないから、名前は分からないけど仕入れルートを教えるのは構わないよ」
まずいな……クリファスさんの食糧庫にお米なんて無かったから、そのうちお米の件はバレそうだな……
いっそのこと、クリファスさんには秘密を打ち明けるかな?
よし、もう少しクリファスさんの人柄を観察してから判断しよう。
「さて、それじゃあ、冒険者ギルドへ行こうか」
「はい、分かりました」
食堂から歩くこと、5分程度で木造の3階で頑丈に作られたような建物に到着した。
建物の壁には所々、補修した跡があり、はっきり言ってボロボロの建物だ。
雰囲気的には此処が冒険者ギルドなのだろうが……クリファスさんの豪華で綺麗な屋敷やオシャレの雰囲気の食堂を見た後だからか、辺境の町だからと言ってハンターを斡旋している巨大な組織の建物にはとても見えなかった。
「えっと、此処が冒険者ギルド?」
「ボロボロ!!」
「ちょ、ハリッサ!? はっきり言い過ぎ!」
「あはは、アカリさんもはっきり言ってるよ……」
「あっ……すいません」
「いや、別に私は冒険者ギルドに所属しているけど、冒険者ギルドの職員ではないから、ボロボロって言われても、たしかになとしか思わないから大歓迎だよ」
「なるほど……それじゃあ直球で聞きますが、なんでこんなにボロボロなんですか?」
「その理由は簡単だよ。すぐに分かるよ……冒険者ギルド内に入ればね」
僕は中に入るのがちょっと怖いなと思いながらも、冒険者ギルドの扉を押す……あれ?
「むっ!?」
あれ、扉が開かないぞ……?
「今日は休日じゃないですよね?」
「普通に営業しているよ。確かに冒険者ギルドの扉は固かったけど、そんなに開かない程じゃないはずだよ」
僕はそれを聞いて身体全体で扉が押してみると、若干だけど扉が開いた……
「もう少し……」
ギギギ……
「アカリさんは鍛冶師なのに、もしかしてあまり力がない?」
「レベルをあげて、力を付けたつもりだったんだけどなぁ」
バキッ……
「あれ? アカリお姉ちゃん、取れちゃったよ」
嫌な音が隣で聞こえたから、見てみるとハリッサは片手で無理やり外された感じの扉を持っていた。
「えっ、ハリッサ!? なに扉外してるの!?」
「ちょっと引いたら取れたんだよ」
「あはは、アカリさんとハリッサさんは両極端だねぇ……」
その後、僕は鍛冶スキルで扉の接合部を簡単に補強するのだった……
【聖都グランザリア】
「アロンダイト様、お呼びでしょうか?」
「ええ、勇者には内緒で探して欲しい人物がいるのよ」
「勇者に内緒でですか?」
「ええ、名前は多分、アカリというらしいのだけど、勇者の話では有名な鍛冶師になっている可能性が高いらしいわ」
「それ以外は?」
「それ以上の情報は無いわ、それでも探しなさい。そして、探し次第殺しなさい」
「分かりました……」
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