第16話 デュランダル襲来
僕とハリッサはひたすらスキル上げをやり始めてから、半年の歳月が経過していた。
僕は何度かハリッサに町へ行きたくないかと聞いたが、特には興味が無いらしいので、僕が納得するまで一緒にスキル上げをやることになったのだ。
ガツンッ!
ガツンッ!
ボキッ!
ガツンッ!
ガツンッ!
ボキッ!
ハリッサはあれからずっとステータス画面を開く事は出来ず、レベルやスキルが上がるアナウンスは一切無かったのだが、ハリッサの剣速や力などは各段に上がっており、女神製のツルハシも2回ほど降っただけで衝撃と握力に耐えきれず、折れたり握りつぶされたりしていた。
この世界の一般的な剣士のレベルが分からないが、ハリッサより凄い8歳はほとんどいないと思っていた。
というか、ハリッサみたいな8歳が普通の異世界ならば、女神には悪いが僕は魔王討伐を諦めさせてもらうだろう。
だって、子供の女の子であるハリッサですら握力や筋力がもの凄い世界なのに、大人であろう魔王はハリッサを遥かに超えるほど強いだろう。
そんな化け物に勝てる武器なんてあるのか?と思ってしまう。
そう言えば、ファイナルオンラインに魔王って敵は居なかった気がするんだけど、魔王ってどんな奴なんだ?
大きな街にでも行けば、魔王の情報位は入るかな?
「アカリお姉ちゃん! ツルハシが無くなっちゃった!」
「了解、それじゃあ今日はこの赤晶石の大剣が壊れたらスキル上げは終わりにしようか」
「分かった!」
ハリッサは僕のアイテムボックス内にあるツルハシは全て破壊してしまったので、次は僕の造った大剣でスキル上げをしてもらう事にした。
スキル上げ開始時のハリッサは1日中、岩に向かってツルハシを降り続けても、全てのツルハシを破壊するほとんどの力は無かったのだが、今では剣速もかなり上がり、1時間も経たない内に破壊されたツルハシの山が出来上がっていた。
ちなみに僕の造った赤晶石の大剣は、ハリッサの握力などにギリギリ耐えられているレベルだけど、流石に1時間近く降り続けていたら、耐えきれずに折れたり崩壊したりしていた。
今はただのスキル上げだから、武器が壊れても代わりがいくらでもあるので、問題無いが……
これが戦闘中にハリッサの武器が壊れてしまうと思うと、ゾッとする時がある。
何か武器の強度というか、耐久性をあげる方法はないかな……?
しかし、これ以上耐久性を上げようとすれば、刀身が厚くなりハリッサが望む形では無くなってしまうのが悩みどころだった。
そんな訳で、僕は新しい試みとして金属精製を使用する際に、魔力を圧縮するイメージで魔力を流し込んでいて、それで完成したレッドミスリルの塊は通常の1割以下の体積にまで圧縮されており、採掘したレッドミスリルを高圧縮した赤晶石に変える事には成功していた。
普通に考えれば、高圧縮した赤晶石で剣を造れば問題解決しそうなところだけど、現実はそう甘くはなくて、高圧縮した赤晶石を鍛冶錬成によって剣に変えようとするが、普通の赤晶石なら簡単に鍛冶錬成出来るのに高圧縮した赤晶石を鍛冶錬成しようとした途端に失敗してしまうのだ。
これは鍛冶錬成のスキルレベルが足りないのか、元々鍛冶錬成では使えない素材なのかは分からない。
まあ、現状の僕に出来る事には限界が来ている実感があるので、そろそろレッドミスリル鉱山から離れて、別のミスリル鉱山に行きたいなと考え始めていた……
「アカリお姉ちゃん、危ない!」
「えっ?」
ブオッ!
私はハリッサによって突き飛ばされたのだが、突き飛ばされた直後、私の居た場所を何かが通り過ぎた……
そして、近くに黒いフードを被った何者かが居た。
えっ?
突然襲われた?
「あれを回避するか……」
よく見ると手には黒く光る長い剣を持っていた。
「何者だよ!」
「我は神聖天のデュランダル、ここにゴッドクオリティの波動を感知して来たのだが……」
「デュランダル……? 伝説上の武具シリーズの?」
確かファイナルオンラインには意志を持つ108種類の伝説上の武具シリーズ、神聖天が敵として登場するのだが、その一つにデュランダルがあった気がする。
しかも、ゴッドクオリティの波動って……ツルハシとスコップの事だよな?
「ほう、そこのエルフは我の事を知っているのか? 我は名乗りはするが全て殺してきたから、我が名を知っている者は居ないはずだが……お主は何者だ?」
「僕はただの鍛冶師だよ」
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