第17話 鍛冶師苦戦する

ファイナルオンラインにはいろいろなイベントがあったが、その中に伝説上の武具シリーズと戦うという連続クエストがあった気がする。


前衛職のプレイヤーには良い報酬が貰えるという理由でかなり人気があったみたいだが、僕はあまり興味が無かったから、イベントの詳細は知らないんだよな……


どんなイベントだっけ?


「鍛冶師だと……お主はエルフだろう? エルフはほとんど金属に嫌われる体質だから鍛冶師になるのは無理だと知らないわけではないだろう? 我はそんな嘘を信じるほど馬鹿ではいないぞ」


「アカリお姉ちゃんは嘘なんてつかないよ! 私の使う剣は全てアカリお姉ちゃんが造ってくれてるんだから!」


「ハリッサ!?」


ガキンッ!

ガキンッ!


僕が気が付いた時には、ハリッサはデュランダルと名乗る剣士に向かって斬りつけた。


僕の目にはハリッサの動きが速すぎて、剣同士がぶつかる瞬間にしかハリッサの姿が見えないほどだった。


ガキンッ!

ガキンッ!


ハリッサの本気はこんなに凄いのか……


「ふはははっ、そっちのお主は剣士か? 子供にしては良い腕だ。だが惜しいな、お主も我と同レベルの武器さえ使えれば良い戦いになっただろうが……我がデュランダルに比べれば、お主の武器は残念な性能だろう」


ガキンッ!


「アカリお姉ちゃんの剣はお前の剣に負けない!」


「そこまで言うなら、我の本気を見せてやろう」


デュランダルはそう言うと剣を両手で握り、上段の構えみたいな感じになる。


「ハリッサ、相手は何をしてくるか分からないから、注意してね!」


「うん!」


「我が身体は不破の刃……」


なんだ?


デュランダルが詠唱みたいなのを始めると、剣の刀身が輝き出した。


「我が身体に斬れぬものは無し……」


「ハリッサ、あれはヤバい感じがするから、一旦離れて! そして、剣で受けるんじゃなくて回避して!」


「分かった!」


「我が一刀に全てを……」


今のデュランダルは、一見して隙だらけだから今攻撃すれば倒せたかもしれないが、僕にはあの輝きを見て近くに居ては危険だと判断した。


そしてハリッサは僕の忠告を聞き、大幅に距離をとる。


「我が最強の一撃……『一刀両断』!!」


デュランダルが一刀両断と言いながら、上段に構えていた剣を振り下ろすと、剣から輝く衝撃波みたいなものが放たれた。


あの衝撃波はヤバいと感じるほどの力を感じるが、その代わり僕が衝撃波を見ていられるほどのスピードしかないので、ハリッサならば問題なく回避出来るだろう。


えっ?


ハリッサは、自身に迫る衝撃波が見えていないのか、剣を構えているだけで回避しようとはしなかった……


もしかしてハリッサには見えていない?


「ハリッサ、回避して!」


「えっ?」


ザシュ……


「ハリッサ!?」


ハリッサは僕の声に反応して、少し右に避けようとしたが、既に衝撃波みたいなものはハリッサの目の前まで来ていた為、ハリッサは肩から腰の辺りまで大きく斬られた。


僕はハリッサのそばに近寄るが、大量の血が流れており、まだ息はあるが素人から見ても致命傷だと思われた……


「とっさに避けれたとはいえ、もう助かるまい。さて、お主には聞きたいことがあるのだが……」


「……」


きっとゴッドクオリティのツルハシとスコップを探しているのだろうが、僕は既に折れたツルハシやスコップをアイテムボックス内にしまっているのでデュランダルにはツルハシとかの場所が分からないのだろう。


「ゴッドクオリティの武器を持っているだろう?」


やはり……


「ゴッドクオリティを探してどうするんだ?」


「ふっ、我以外のゴッドクオリティは破壊するに決まっているだろう。どうせお主も殺されるのだ、素直に差し出すなら拷問されず楽に死ねるぞ」


僕は素直にアイテムボックスからツルハシを取り出し、デュランダルへ投げる。


「ほう? 武具以外のゴッドクオリティか、無駄足だったみたいだな……む? お主も殺されに来るか」


「どうせ殺されるなら、ハリッサの敵討ちだっ!!」


僕はハリッサの持っていた赤晶石の大剣を持ち、デュランダルへと斬りかかる。


ガキン……


「お主は素人みたいだな」


「ぐはっ……」


デュランダルの攻撃は赤晶石の大剣を簡単に砕き、僕をも斬り裂いていた……


「トドメだ……む、こんなタイミングで緊急召集が……ここは辺境だから急がなければ間に合わないな……こやつもいすれ死ぬだろう」


デュランダルはそう言うと、どこかへ走り去ってしまった……




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る