第12話 レッドミスリル

僕とハリッサは初めて狼を狩ってから、既に一週間が経過していた。


その間にも狼や猪などの野生動物が何匹も現れ、その全てをハリッサが2本のスコップにて瞬殺していた。


そして、僕のレベルは遂に最低目標であるレベル12に到達していた。


「そろそろ僕にも持てるかな……」


「アカリお姉ちゃん、何が持てるの?」


「ふふふっ、それはこれさっ!」


僕はアイテムボックスからツルハシを取り出す。


以前の僕ならツルハシを持ち上げるほどの力は無かったが、レベル12になった僕にはツルハシを持ち上げるだけの力を手に入れていた。


「これでやっと採掘が出来るぞ! ハリッサ、悪いけど鉱山に戻るよ」


今まで鍛冶師の勇者として、転生したのに鍛冶師らしいことはほとんどしてこなかったが、これでやっと鍛冶師っぽい事が出来る気がする。


「うん! 付いていく!」


こうして僕はスタート地点であるレッドミスリルの掘れるとされる鉱山に戻る事になった。


……


「アカリお姉ちゃんはレベルがあっていいなぁ」


「ハリッサもステータスはある気がするから、レベルもある筈なんだけどなぁ」


「ステータスって叫んでもアカリお姉ちゃんのいうステータス画面ってのは出てこないよ」


そう、何故かハリッサには僕みたいにステータス画面を開くことは出来ず、狼の倒したときに僕がレベルアップ時に聞こえる女性っぽい無機質な声によるアナウンスを聞くことはなかったらしい。


女神もレベルの話はしていたし、レベルがあるって事はステータス画面もあるんじゃないかと僕は考えているのだが、この世界ではハリッサとしか出会っていないから、普通がよく分からないでいた。


「おっ、あそこが目的の鉱山だよ」


「アカリお姉ちゃんが言っていたより近かったね」


「うん、まさか3日も早く到着出来るとは思わなかったよ」


距離的に一週間はかかるかなと思っていたけど、僕のレベルが上がった事により僕の体力が上がり、休憩する時間が減ったのが大きいと思っている。


「さてと、僕はずっと採掘を続けるけど、ハリッサには別の事を試してみて欲しいんだよね」


「私は何するの?」


「とりあえず、出せるだけのツルハシとスコップをアイテムボックスから取り出して……ハリッサにはスコップでもツルハシでもどっちでも良いけど、硬い岩に向かって剣術を繰り返してみて欲しいんだよね」


「岩に?」


「うん、もしかしたら何も起きないかもしれないけど、僕の予想が当たっていたら良いことが起きると思う」


「なら頑張る!」


「多分、スコップやツルハシが破壊されるかもしれないけど、気にせずに使ってね」


これはゲーム内での裏スキル上げという成金プレイで、採掘も剣術もそうだけどスキルを使用した結果により武器や道具が破壊されるとスキルが上がりやすくなる裏技みたいなものだ。


理由はいろいろ言われていたが、本来なら武器や道具に使い込む事により破壊される場合のボーナスみたいなものを作為的に発動させているのではないかと僕は考えていた。


あと、これが成金プレイと呼ばれる理由は、適当に安い低レベル武器などを破壊してもスキルは上がらないというところだった。


ちなみに女神が用意してくれたツルハシやスコップに鍛冶鑑定というレベル10にて取得した鍛冶関連の武器や道具のみ鑑定が出来るスキルを使ってみた結果、安物なスコップやツルハシに見えてもゴッドクラスの道具だったのが、判明したのだ。


まあ、女神が用意したからゴッドクオリティなのは分かるが、本来ゲーム内ではこんなに早く壊れるゴッドクラスの道具など存在しない矛盾したものだが、女神のいる世界なのだから、深くは考えずに有効活用しようと思っている。


「よしハリッサ、頑張ってスコップやツルハシを破壊しよう!」


「頑張る!」


僕とハリッサは地道な道具破壊行為という苦行を開始したのだ。

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