第11話 スコップ無双
僕はハリッサのスコップを振るう姿が美しいと思ってしまった。
「アカリお姉ちゃん、このスコップってもう1本ある?」
「ん? スコップなら食料と一緒で沢山あるけど、予備が欲しいの?」
どんな生き物が出てくるかは分からないが、スコップ1本では強度的に不安なのかなと思った。
「違う、スコップを2本同時に使うの」
「えっ、スコップ2本なんて重くない?」
「大丈夫、スコップは軽い」
「マジか……」
僕はスコップ1本すら持ち上げられないのだが……
「そろそろ来る」
ぐるるうぅ……
ハリッサがそういうと森の奥から3匹の動物が現れた。
あれは狼が?
ズシャ……
「まずは一匹目」
「えっ……?」
僕があれは狼かな?と認識した時には、ハリッサが左手に持つスコップを突き出して、一番先頭にいた狼の首に突き刺していた……
ハリッサの動きが全く見えなかったぞ?
【アカリはレベルが1上がりました。レベルが2になりました……】
【アカリはレベルが1上がりました。レベルが3になりました……】
あっ、ハリッサが狼を倒した事で僕のレベルも上がったみたいだ。
ドゴンッ!
今度はハリッサが横に一回転しながらスコップを横凪ぎした事により狼は吹き飛び、木にぶつかり動かなくなる……
【アカリはレベルが1上がりました。レベルが4になりました……】
またレベルが上がった……
ファイナルオンラインでは動物位ではこんなに早くレベルが上がらなかった気がするんだけど、何でだ?
しかも、通常はパーティーシステムによりレベル差がある場合は、レベルが低い人にはあまり経験値が入らない筈なのに、僕へこんなに経験値が入るって事はハリッサのレベルは僕と同じかレベル2位だったのではないだろうか?
でも、レベル2にしてはハリッサは強すぎる気がする。
あっ……!
最後の一匹になった狼は逃げるようにして、僕たちに背を向けた。
「逃がさない」
ズシャ……
ハリッサは逃げるようとする狼の背後に向けてジャンプし、狼の後頭部にスコップを突きつけた。
ブシャ……!
ハリッサは狼たちの返り血により、全身を真っ赤に染め上げていた。
精神的には現代人である本来の僕ならば、血まみれのハリッサを見たら引いてしまう筈なのに、やはりハリッサの戦う姿は美しさがあると思った。
何故、そう思うのかは分からないが、ハリッサの戦う姿に僕はドキドキしていたからかもしれない。
「凄かったよ、ハリッサ。お疲れ様」
「ん、楽勝」
「とりあえず、倒した狼はアイテムボックスに入れて、またシャワーを浴びようか……」
「うん!」
【神界にて……】
「ふぅ~、やっとこれで勇者様候補の1割は転生出来たわね」
勇者様の中には変な条件を付けてくる者もいるから、無理な要求には勇者様を怒らせないようにお断りしなくてはいけないから大変なのよね。
最初からレベル最高にしろとか、無理難題なスキルが欲しいと要望したりとか……
そんな世界崩壊レベルのスキル持ちを魔王討伐に送り込めるなら楽だけど、今の私にはそこまでの力が無いのが辛いところよね。
そういえば、違った意味で無理を言っていた勇者様はどうなったかしら?
あの勇者様には期待していたのだけど、辺境の森をスタート地点にしてしまったから、苦労してるでしょうね。
私は各勇者様の行動を記録してあるクリスタルを手にする。
「勇者アカリ様を再生して」
……
やっぱり苦労しているみたいね……ん?
エンショントエルフ?
それって今は生存していない、私が世界創世記に作った種族のひとつよね……私は普通のエルフ族にした筈なのに、なんで?
しかも、アイテムボックス内のアイテムが回復する?
そんなアイテムボックスはあり得ないわ……
私の知らないところで何が起きてるの?
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