第9話 シャワー
僕とハリッサはアイテムボックスに入っていた大量のオニギリを食べていた。
まあ、ほとんどハリッサが異次元に繋がっているのではないか?と思えるほどの食欲により大量のオニギリは消えていた。
「アカ、モグモグ……お姉ちモグモグ……のオニギモグモグ……美味しいモグモグ……」
「ハリッサ……オニギリは逃げないし、まだ沢山あるから、ゆっくり食べな。あと、食べるか話すか、どっちかにしないと行儀が悪いよ」
「モグモグ……モグモグ、ゴクン……アカリお姉ちゃんのオニギリはいくらでも食べられるくらい美味しいよ!」
「普通のオニギリでそこまで美味しそうに食べてくれるのなら女神も喜んでるだろうね」
「女神?」
「そうだよ、このオニギリは僕のアイテムボックスから出てくるけど、用意してくれたのは女神様なんだよ。だから感謝しながら食べないとね」
「分かった! アカリお姉ちゃんと女神様に感謝するんだね!」
「僕に感謝はしなくても良いんだけど、まあ、いっか」
それからハリッサはオニギリを150個近く食べたのだけど、お腹は全く膨らみもしなかった。
異世界の大食いキャラは地球の大食いキャラとは別次元のものなのか?
「お腹いっぱいになった?」
「はい! 満足です!」
「そっか、そしたら次は……ハリッサの身体を洗おうか」
ハリッサ本人には言えないが、さっきからハリッサの服や髪が汚れていて、まあまあ臭うんだよね……
「湖とかを探して水浴び?」
「いや、多分湖は近くに無いはずだよ」
ゲームでは何故か鉱山や湖などは近くには無い仕様だったので、多分この世界にも同じ仕様なのではないかと考えている。
「それじゃあ、どうやって身体を洗うの?」
「それはね……」
何故かキャンプセット内には天然素材のシャンプーやリンス、ボディソープ、ハンドソープ、食器洗い洗剤、洗濯用の洗剤などが3日分くらいが入っていたのだ。
しかも、オニギリの包装とか必要ではないものをアイテムボックス内に変換すると、勝手に処分してくれるという便利機能も付いていた。
個人的にはこのアイテムボックスが女神からの一番当たりスキルな気がする。
あとは、ペットボトルに入っている水をまとめて、火の魔法スキル・ヒートで適温に温め……近くにある木にペットボトルをロープでぶら下げ、ペットボトルの底に穴を開ければ簡易シャワーの完成だ。
「ハリッサ、このシャンプーで髪を洗って、そのあとにこのリンスを髪に馴染ませてから軽く洗って、身体はボディソープで洗ってね。流石に身体を洗うスポンジが無かったから手で洗ってもらうことになるけど、大丈夫だよね?」
「私、ひとりで髪を洗えない……アカリお姉ちゃんに洗って欲しい!」
ハリッサの髪は腰くらいまである長い髪だから、洗うのは難しいのかもしれないが、さすがに僕がハリッサを洗うのは犯罪的な感じがするので回避したいのだが……
「僕がハリッサを洗うといろいろ問題があってね」
「なんで?」
「やっぱり僕はハリッサみたいな女の子の身体に触れるのって不味いからさ」
「アカリお姉ちゃんなら問題ないんじゃない?」
「あっ、僕も今は女か……なら問題は……いやいや、僕の倫理的に超えてはいけない一線が……」
「アカリお姉ちゃん……ダメなの?」
そんな可愛い顔しても……
「……仕方ないな、今回は洗ってあげるか」
「ありがとう! アカリお姉ちゃん!」
なんとなく小さな可愛い娘が出来た父親の気持ちが分かった気がした……
ブオー
僕はハリッサと共にシャワーを浴びた後、ハリッサの髪の毛をヒートと風魔法スキルのウィンドを組み合わせて疑似ドライヤーを使い、乾かしていた。
ゲーム内では複数の魔法を組み合わせて使うことの出来るジョブは魔法使い系か賢者系のみだった筈なのに、試してみたら出来てしまった。
それにしても、僕は精神的に超えてはいけない一線を超えてしまった気がする。
結果的には一緒にシャワーを浴びた方が効率的だろうという事で、僕とハリッサは2人して裸になり、僕がハリッサを洗ってあげたのだが、ハリッサの現実離れした可愛さにちょっとドキッとしてしまったのだ。
それからは必死に僕は親代わり……僕は親代わりと唱えながらハリッサの髪と身体を洗ってあげたのだ。
「よし、髪が乾いたよ」
「ありがとう」
「ハリッサって実はストレートの髪型ではなかったんだね」
髪を洗ってあげた事により、ボサボサだったハリッサの髪は、ウェーブが軽くかかったアニメで出てくるお嬢様みたいな綺麗な金髪だった。
「う~ん、前はよくわからない」
「そうなんだ? あっ、ハリッサ。新しい服に着替えてもらうから、そのボロボロな服は処分しよう」
「新しい服?」
「うん、僕が着ていたのと同じ作業着になるけど、ごめんね。町に着いたら新しい服を買えるようにはしたいと思っているよ」
「アカリお姉ちゃんと一緒がいい!」
僕とハリッサはお揃いの作業着に作業靴を着た奇妙な女の子2人組という感じになった。
この作業着や作業靴は、サイズの指定も出来る便利な服だった。
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