第3話 何か現実は違った

「それでは勇者様、世界を救うために転生して頂きますが、転生場所は初期の町に近い場所で宜しいでしょうか?」


「あ~、初期の町か。僕はレッドミスリルが採掘出来る鉱山が近い方が良いんだよね」


ミスリルとは魔法鉱石の事で、いろいろな色のミスリルが存在するのだけど、レッドミスリルは初心者鍛冶師でもギリギリ鉱石からインゴットに精製することが出来るギリギリの低級魔法鉱石なのだけど、初期の町周辺には鉱山が無かった気がする。


「レッドミスリルの採掘出来る鉱山ですか? 基本的にレッドミスリルの採掘出来る鉱山はレベル1にはキツイ強さのモンスターが徘徊していると思うので、お薦め出来ませんが……」


「そうなの? ゲームでは雑魚動物しか居なかった気がするんだけど?」


「そこは現実世界ですので、ゲームとは違い魔王の影響により動物もモンスター化してしまっているのです」


「あっ、そう言えば世界を救うために転生するけど、魔王討伐が目的なの?」


「はっ!? す、すいません勇者様! 重要なことを言い忘れていました! 勇者様があまりにも早く転生を快諾してもらえたので、普段と説明手順が違ってしまい、忘れていました。勇者様方の目的は魔王討伐で合っております」


「なるほどね、そして僕は魔王討伐をする勇者達の使う武具などをサポートすれば良いわけか」


「そういうことになります」


「それ以外は?」


「あとは勇者が異世界を満喫してもらって構いません」


「そうなんだ。それでスタート地点なんだけど、レッドミスリルが採掘できてモンスターの徘徊していない場所ってないの?」


「そうですね……」


女神は空中に展開されているパネルをいろいろ操作して悩んでいる。


うーん、ちょっと無理を言いすぎたのかな?


「無さそう?」


「いえ、モンスターの徘徊していなくてレッドミスリルの採掘できる鉱山はあるのですが、立地がかなり不便でして……」


なるほど、モンスターがいなくてレッドミスリルの採掘できる鉱山の町はあるが、大きな街からは離れているのだろう。


「そこがスタート地点で良いよ。多少不便でも仕方ないかな」


「良いのですか? かなり不便な場所ですよ?」


「うん、レッドミスリルが安全に採掘できるなら仕方ないよ」


女神は不安そうな表情だな。


ステータスの件や種族の件など、女神は心配性過ぎる気がする。


「……分かりました。勇者様が良いという事ですので、普通はスタート地点にしませんが、今回はそこをスタート地点にいたします。あと私からサービスで2ヶ月分の食料とサバイバル用品一式と採掘道具、現地でお金に換金出来そうなアクセサリーをアイテムボックスに入れておきます。アイテムボックス内は時間停止している異空間になっていますので、食料は腐る事が無いので安心して下さい」


「2ヶ月分の食料にサバイバル用品一式や換金出来そうな物もくれるのか」


採掘道具だけでも有り難いのに、やはり女神は心配性なのだなと思ったが、タダでくれるものを断る理由もないので、有り難く貰っておくことにした。


「それでは勇者様、世界救済をよろしくお願いします」


「うん、出来る限り頑張ってみるよ」


そう言うと、僕の視界は暗転した……





【勇者を送り出した後の女神……】


「先ほどの勇者様は本当にあんな条件で良かったのかしら?」


今回送り出した勇者様はゲーム内ではかなり有名だったプレイヤーみたいで、一部のプレイヤーからは伝説とまで言われる程の高レベルプレイヤーだった。


だから、あの様な酷いステータスやスタート地点でも、私には想像も出来ないような解決作があるのかもしれないと思った。


あれほどの高レベルプレイヤーは必ず世界救済に役立つ筈で、絶対に転生して頂きたかった。


説明の途中、私が大丈夫かと何回も確認してしまい、勇者様がイライラしてきてしまった時は本当に焦りました……


「あの様な設定でゲームをプレイする事を地球では何というのでしたっけ……ああ、そうだ。スーパーハードモードとか言っていたゲームがありましたね……」


流石は高レベルプレイヤーの勇者様だなと私は感嘆し、次の勇者様の勧誘へと向かうのだった。

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