第2話 ステータス設定

僕は女神と共にあっちの世界に転生するための身体のステータス設定を相談していた。


「ファイナルオンラインみたいな世界って事だけど、ステータスは同じなの?」


「はい、ファイナルオンラインは向こうの世界……クラリアルというのですが、クラリアルを元に作られたゲームなのでステータスの数値やジョブシステム、スキルシステムなどの名前や性能はほとんど似ています。それ以外に関してはゲーム世界と現実世界という違いがあるために全く同じでは無いでが……」


「それに関してはゲームじゃないから仕方ないよ」


きっと、女神の言っているゲーム世界と現実世界の違いは、痛みや空腹などのゲームでは再現出来ない部分の事だろう。


流石に異世界へ転生するのに、そんなことで文句は言わない。


「それで勇者様の希望はどの様なものでしょうか? 可能な限り希望には応えたいと思っています」


「えっと、それじゃあ、ジョブは鍛冶師にしてくれるかな?」


「はい、わかりました。鍛冶師ですね、それでしたらステータス配分はSTRとDEXを4、INTは2にしましょうか?」


ステータスの配分とは、レベルが上がった時にステータスの数値が上がる配分なのだが、合計値である10をSTR、DEX、INTの3種類に割り振るのだ。


ゲームではSTRが力、DEXが器用さ、INTが魔力となっていた。


そして、女神が言った鍛冶師の配分は初期値のものだった。


初心者ならば、女神の言ったようなステータス配分も無難で有りかもしれないが、それだと将来的に行き詰まるのを僕は知っている。


なので、僕が提案する鍛冶師のベストな配分は……


「STRを1、DEXを5、INTを4にして下さい」


「えっ……?」


鍛冶師ならば力が必要だという固定概念に囚われがちだが、ファイナルオンラインと同じであるならば鍛冶師に力はほとんど必要なくて、必要なのは武具作成時の成功率や品質に大きく左右される器用さと、採掘場へ飛んでいくための魔力だ。


しかも、魔力の無い鍛冶師は将来的に、作成出来る中では最強クラスの武具である魔法武具を造れないのだ。


まあ、力に1を振るのは多少だけれど力が無いと物を持つのに困るからだ。


ステータス配分が0という事はレベルが上がっても永遠に0になるという地獄の様な展開なので、力は最低限の1は必要なのだ。


「あの……勇者様? 流石にこのステータス配分は危なくないですか?」


「ん? ああ、魔法スキルも最初からある程度は取得出来るんですよね?」


「はい、基礎魔法スキルだけになりますが、全て取得した状態に出来ます」


「なら、そのステータス配分で大丈夫です」


きっと女神は最初の狩りを心配しているのだろう。


ファイナルオンラインのレベル上げは、全ジョブ共通してモンスター狩りしか方法が無いのだ。


ある程度のレベルになれば鍛冶作業でもレベルを上げる事は出来るが、レベル1の器用さでは鍛冶作業がほとんど成功しないのだ。


だから、鍛冶師でも最初のレベル上げだけはモンスター狩りをしなくてはいけないのだ。


そして、STRには力以外にもHPの数値にも影響ので、仮に初めての狩りで失敗すればあっという間に死んでしまうのを危惧しているのだろう。


しかし、ほとんど戦闘をしない鍛冶師に最初の安全の為だけにSTRを4振るのは無駄過ぎると僕は考えていた。


それにモンスター狩りも初期魔法スキルと魔力があれば、遠距離から安全に狩りが出来るのだ。


「あの、本当の本当に良いのですか?」


「しつこいですよ、僕が良いと言っているのだから大丈夫です!」


「……分かりました。ではジョブとステータス配分は完了しました。あとは魔法スキルは初期魔法スキル全て取得した状態にします」


「はい、お願いします」


「あとは、特殊スキルですが鍛冶と採掘。戦闘スキルは無し、勇者様限定スキルとして異世界言語と収納量が大きいアイテムボックスを付けさせて貰います」


「それは非常に助かります」


異世界なのだから、流石に日本語は通じないだろうから、異世界言語は有り難い。


それに鍛冶師ならばアイテムボックスみたいなものがあれば魔法スキルで移動するにしても、採掘した鉱石の運搬に助かるだろう。


「あとは種族と容姿ですが……」


「容姿も選べるのです?」


「はい、ざっくりとした希望の中から自動的に生成されてしまうので、細かい希望は無理です」


「えっと、それならば種族はエルフ族でかわいい感じでお願いします」


「エルフ族ですか? 良いんですか?」


エルフ族は魔力の高い代わりに力が弱く、基本的に鍛冶師ならばドワーフ族を選択すると女神は思っていたのだろう。


しかし、僕の目指す鍛冶師は魔法寄りの鍛冶師なのだ。


だから、最適な種族はエルフ族。


そしてかわいい感じにしてもらったのは、多少はモテたいと思ってのことだった。


世界を救う勇者なのだから、多少モテたいと思ってもバチは当たらないだろう。


「はい、それで大丈夫です」


「勇者様はなかなか独特な選択をなされるのですね」


「まあ、多少は……」


将来性を考えたら最初は独特な感じには見えるだろうが、多少成長してしまえば、かなり使いやすい構成だと僕は思っていた。

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