第六話 部活はどうする?
学校で行われるのは授業だけじゃない。
部活動もある。
そしてどうやらおれが入学した高校は、全校生徒に何らかの部活に入部することを義務付けている、ひじょ~にめんどくさい校風のようだった。
朝のホームルームの時間。
この高校の部活動についてナギが資料のプリントを配り、自身も何かのプリントに視線を落としながら頼りなさげに説明していた。
「えぇ~っと? 新入生は四月中に入部する部活を決め、入部届けを担任に提出すること? ……あぁ、俺から各部の顧問に渡すみたいだな。ちなみに再来週末、新入生歓迎を兼ねた部活説明会がある。各部それぞれのパフォーマンスを披露して見せてくれるから、それを参考にするといい。なお、入部届けを提出するまでは各部とも体験入部や見学ができるから、存分に活用してくれ。ミコトは……わかってんな?」
身長の件で最前列に移動させられたおれを教卓から覗き込みながら、ナギが念を押すように釘を差してきた。運動部はやめろと、と。
そんなことは百も承知だ。元からそのつもりはない。運動部なんて体育の授業なんかよりも本格的な運動目的のコミュニティ、そんなものに属すなんていうのは無謀だと、さすがに弁えている。
「ねーねーナギっち、二つの部活掛け持ちってありなの?」
クラスの男子から質問が飛ぶ。
「あ~、俺も聞いてねぇな。たぶんダメだと思うけど今日中に確認してまた言うわ」
おれは配られたプリントに視線を落とす。
そこには、現在この学校に存在しているすべての部活動が列記されていた。どこの高校にでも見られるようなオーソドックスな部活がほとんどだけど、加えてマイナーな部活の名前までちらほらと。
まともに身体を動かせないせいで昔から読書が習慣になっていたおれの中学時代は文芸部に費やされたけれど、さて、高校ではどーするか。囲碁や将棋なんかの遊戯系にも目が行く。あ、お笑い部なんてのもある。
おれはめぼしそうな部活をいくつかピックアップしておき、その日、放課後になって部活見学に繰り出した。
目的地は文化部棟。本校舎で活動している文化系の部活もあるようだったけれど、大半はこの文化部棟に部室を置いているらしい。立地としては、本校舎から一階の渡り廊下を通った先にあるので、靴を履き替えることなく向かうことができた。
文化系の部活というとどうしても地味なイメージが先立つ。ところがいざ文化部棟に足を踏み入れてみると各部屋や廊下から時折話し声が聞こえてきたりして、どの部もなかなか盛んに活動していることが察せられた。
おれはそんな数ある部屋の内、一際大きな声が聞こえてきた部屋の前で足を止める。
そのドアには『ボードゲーム部』という文字の入ったプレートが掛けられていた。
「…………」
入部はおろか見学の意思すらない。とりあえず文芸部を見に行こうと思っていたのだが、気になるものはなる。海外発祥のものなんかも含めると面白そうなものはいくらでもあるからな。
そんなおれの気持ちを揺り動かすかのように、室内からは笑い声なんかも響いてくる。
見学が可能、ってナギは言っていたけれど、このドアを開けたら一斉に上級生たちの視線を浴びることになるんだろーな。ったく、見学可っていうならもっとオープンにしといてほしい。気兼ねするじゃねーか。
そんな苛立ちと葛藤を込めた視線をドアの上部に向けると、そこには嵌め込みの小さな小窓がつけられていて、そこから中の様子を窺えるようになっているようだった。……が、それも高校生らしい並みの身長があればの話。あぁ、もう憎たらしい。
しかし目算ではおれの身長でも背伸びしてギリギリ届くかどうかといったところのような気もしたので、とにかくおれは踵を浮かせて目一杯背を伸ばしてみた。いや背は伸びないけど視線を高くしてみた。しかしつま先立ちというのはどうにもバランスが悪く、フラフラする身体をドアにそっと預け、手で支えながら必死につま先に力を込める。
「ん、ん~……」
そんな微かな呻き声が漏れるのもしょうがない。体格に似合わない負荷を身体に掛けているのだから。
しかしその甲斐あってか、次第におれの目線が小窓に近づいていく。
あと数センチ、あと一センチ――と、全身をぷるぷる震わせながら限界に挑んでいた、そんなときだった。
カシャッ! という乾いた機械的な音が耳に飛び込んできたのは。
おれは嫌な予感がして
と、そこには何やらスマホを覗き込んでなんとも幸せそうなツラで頬を緩ませきった一人の女子生徒の姿があった。
「おまえ
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