第6話

 運動会当日。


 誰もいない校庭。芝の感触は良好。


 運動会は、近くの別なところで行われている。全校生徒と先生が出払っているので、芝の校庭がまるまる使い放題。


「んああ」


 とりあえず、芝生に寝転がった。気持ちいい。陽気も暖かい。


「いい日だ」


 もうすぐ、リレーが始まる頃だろうか。いや、リレーはなくなったんだっけか。


 誰か来た。


「ん?」


 隣に寝転がる。


「おいおい。お前は出ろよ」


「やだよ。保護者がリレー潰しておいて、どの顔下げて運動会に出るんだよ。そんなに面の皮厚くないよ」


「それもそうか」


 ふたりで、校庭に寝そべる。


「おれさ。足遅いんだよね」


「知ってる」


「親はさ、それを気にしてリレーに苦情いれたんだよね」


「そうだろうな」


「なんか、もうしわけないなあ。全方面に」


「誰も悪くねえな」


「そう言ってもらえると、ありがたいねえ」


「ちょっと走るかな」


「おっ」


 起き上がる。


「お前もどうだ。気持ちいいぞ」


「走ろうかな。ペースは合わせてくれよ」


「いいんだよそんなのは気にしなくても。好きに走るのがいちばんさ」

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