第708話 九尾の狐
うぅ!? 九尾のキツネさんに追い込まれて、森の中まで逃げてきたけど……口に火を溜めてる状況はかなり危険な気がする!
「あ、キツネさんが止まり……って、わー!?」
ぎゃー!? 止まったかと思えば、思いっきり火を吹いたー!? これ、とんでもない火炎放射……って、考えてる場合じゃないよ!? 逃げ切れそうにないし……ここは、これ!
「『身構え』! ……火に包まれてます!?」
待って、待って、待って!? 私が逃げ込んだ森ごと、どんどん燃えていってるんだけど!? 目の前の木々はあっという間に消し炭になって……うぅ!? 完全に私も火に包まれたー!?
サツキ : 九尾の狐、森に放火!
水無月 : とんでもない状態だね!?
ミツルギ : これは『獅哮衝波』に相当する、『狐の業火』だな。
神奈月 : 盛大に火事を起こすスキルだよなー。まぁ火事以前に、スキルそのものでかなりの範囲が消し炭になるけど……。
富岳 : 今まさにサクラちゃんが火に包まれているが……これの特徴は、攻撃時間が長めなところだな。火事になるのは、その効果範囲から外れた場所から延焼する場合か。
「なんか妙に長いと思ったら、そういう性質なんですか!? というか、HPがとんでもない勢いで削れていってるんですけど!?」
身構えでダメージは抑えてるのに、その上で……このままじゃ死にそう!? うぅ……『火傷』にもなってるけど、今のダメージが火傷の継続ダメージなのか、火そのもののダメージなのかが分かんないよ!?
こんにゃく : あー、これは……耐え切るのは無理か?
いなり寿司 : 厳しいだろうな。格上かつ、エリアボスの溜め攻撃……1段階目の溜めだから、『身構え』ありなら攻撃そのものは何とか耐えられるだろうが……。
ミナト : 『火傷』を全身に受けちゃってるのが、厳しいね。『火傷』の継続ダメージは、受けてる範囲の広さで変化するから……。
チャガ : 溜め攻撃の中でも、火関係は直撃を受けたら特にヤバいからな。『火傷』の継続ダメージは、『身構え』での軽減対象にはならんぞ。
富岳 : 今のダメージは『狐の業火』よりも、『火傷』の継続ダメージの方が大きいかもしれん。
「そうなんです!? だったら、『火傷』を治療すれば、ギリギリ助かる可能性もありますか!? 昨日手に入れた『アロエ』で治りますよね!?」
今は『身構え』で動けないし、まだキツネさんの火も止まってないけど……動けるようになった瞬間に、治療してしまえば!
ミツルギ : 『アロエ』で治るけど……治したところでなー。周囲、火の海だし……そもそも、キツネだとな。
ミナト : サクラちゃん、キツネ相手にまともに戦える? 前にキツネと戦ってた時の様子を見る限り、結構厳しそうな気がするんだけど……。
富岳 : 状況的に、あらゆる面で不利な状態だしな。あえて、今は大人しく殺されて、戦闘を避けるのもありだぞ?
サツキ : サクラちゃん、無理して戦う必要はないからね!
水無月 : 無理に倒そうとしなくても大丈夫だよ!
「うっ!? ……確かに、色々と倒すのは厳しい気はします……って、攻撃が止まりました!?」
わー!? 戦うかどうかを悩むくらいの状態なのに、考える猶予がなくなったー!? 森は完全に火の海になっちゃってるし……。
「……今回は、無理ですね! 諦めましょう!」
『身構え』も解けたけど、回復せずにいこー! うん、キツネさんとは戦闘を避けるって事に決めてたんだし、エリアボスでもそれでいいよね! どっちにしろ、今の状況で勝てる気もしないし!
<サクラ【至妙なライオン【雷】】が死亡しました>
<死亡した為、リスポーンとなります。リスポーンの手段を選んでください>
という事で、抵抗を諦めて、火傷での継続ダメージで死亡! ふぅ、まぁ今回は仕方ないね。
イガイガ : 今回は自分から死を選んだか。
咲夜 : まぁ相手が相手だしなー。
G : サクラちゃんにとっては、相性最悪なエリアボスか。
「……今回のエリアボスがキツネさんなら、エリアボス自体、スルーしますねー」
出来れば、エリアボスは倒したかったんだけど……今回は無理! 普段のエリアボスでも強いのに、私がまともに戦えないキツネさんとなると、特に厳しい!
サツキ : 普通のキツネでも、倒すの、もの凄く嫌そうだったもんね! こういう時は、無理しなくていいんだよ!
ミナト : うん、今回はこれでいいと思うよ。
真実とは何か : それが真実なのである!
ミツルギ : まぁ無理に倒せって言うやつもいない……いや、音声なしのコメントで結構そういう声もあるな?
いなり寿司 : その辺は放っとけ。コメントの指示に従う理由はどこにもないからな。
G : そうだぞ! 嫌がってるサクラちゃんの表情を見るのはいいが、ガチで泣きそうなレベルのは無しだ! 笑える範囲じゃないとな!
神奈月 : Gさんがそういう事を言うか!? いやまぁ、言ってる事自体は分かるけども!
イガイガ : そうだ、そうだ! キツネ相手に無理に戦って、サクラちゃんの心が折れたらどうする!?
「なんだか言い方が気になりますけど……まぁとりあえず、復活しちゃいますね。あ、再誕の道標が選べるように……って、これを選んだら、さっきのキツネさんの近くに出ますよね……?」
『逃走』でそこそこ離れたとは思うけど……今、キツネさんがいる位置は、設置した場所と私が死んだ場所の中間くらいのはず!
こんにゃく : あー、復活直後にすぐ狙われる可能性のある場所だな。見通しのいい場所だったし……。
ヤツメウナギ : 交戦範囲は広いし、即座に捕捉されて襲われるやつ!
咲夜 : ここはランダムリスポーン、一択だな! そうじゃないと、またあの九尾の狐と戦闘になるしな!
「そうなりますよねー! という事で、ランダムリスポーンでいきましょう!」
折角、設置した再誕の道標だけど……場所的に使えそうにないよね。今回のエリアボスはスルーするんだから、リベンジに戻りもしないし! まぁたまにはこういう時があってもいいよね。
「さて、ランダムリスポーンは完了で……す……? ……え?」
……えーと、なんで燃え盛っている森がすぐ目の前に見えていて、足元の草むらも森に向かって一直線に焼け焦げて……。
「これ、もしかして……わー!? なんでキツネさんの目の前に出てるんですかねー!? 『逃走』!」
ぎゃー! 戦わないって決めたのに、なんでこうなるのー!? 戦略的撤退とかじゃなくて、今回は本当に純粋に逃げるのですよ!
サツキ : サクラちゃん、即座に逃走開始!
水無月 : 逃走開始! ……凄い場所に出たね。
ミナト : あはは、まさかこのタイミングで目の前にランダムリスポーンとはねー。
イガイガ : あ、咲夜さんがランダムリスポーンに言及したからか。
G : あれで、再戦フラグが立ったか。
真実とは何か : それが真実なのである!
咲夜 : いやいや、それを真実にしないでくれね!?
「咲夜さん、とんでもないフラグを立てないでもらえますか!? あ、でも何も仕掛けて……って、尻尾の先に火の球が出てきてますよ!?」
ぎゃー! 最初に遭遇した時は2発で撃ち放ってたから、再使用時間が短かったっぽい!? 思いっきり走りながら用意してるし、逃げ切らないと危険だー!?
富岳 : 『九尾の炎弾』、再びか。今度はもっと弾数を増やすつもりみたいだし……逃げ切れるか?
ミツルギ : あー、どうだろうな? あれ、射程は長いし……『逃走』が効いているとはいえ、エリアボス相手だからな。
ミナト : んー、スキルには出てたけど、ステータスの弱点に『俊敏』が出てなかったから……エリアボスだと、射程外まで振り切れるかどうか怪しいね。
いなり寿司 : ちょっとずつ距離は取れているが……射程外まで逃げ切れるかが問題だな。『九尾の炎弾』は、確か範囲攻撃じゃない代わりに、追尾性能があったよな?
「あれ、追尾性能とかあるんです!?」
待って、待って、待って!? もう後ろの様子を見ている余裕はないけど、それって撃たれたら厳しくない!?
チャガ : 弾数が少ない内は追尾の精度は低いが、弾数が増える度に精度が上がっていく仕様だぞ。
神奈月 : 狙われてる事に気付かず、焼き殺された記憶蘇る……。
ミナト : ギリギリまで引き付けて、他の何かにぶつければ簡単に避けれるけどね。
咲夜 : サラッと言うけど、それは高難易度なやつ!
こんにゃく : あー、投擲系のスキルが使えれば、先に撃ち落とす事も出来るけどな。まぁこれはこれで、命中精度がかなり必要だから、難しいけど……。
「なんか、無茶苦茶な事を言ってますよねー!?」
私のライオンの投擲じゃ、あんなの撃ち落とすなんて無理だよ!? ぐぬぬ!? どのタイミングで撃ち出すかを見極めて、木か何かを盾にして凌ぐしかないの!?
流石にもう一度、仕留められるのは気分的に嫌ー!? なんとか意地でも逃げ切ってやるのですよ! キツネさんとは戦わない代わりに、それが今の私の勝利条件って事で!
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