第707話 スキル『逃走』


 ふふーん! 新スキル、『逃走』を得たのです! スキルの名前的に、そのまま逃げる為のものだけど!


「時には、戦略的撤退も大事ですもんね!」


 うふふ、距離を取ったり、時間を稼いだりする時にかなり使えそうな予感! まさか、溜めながら使えるとは思ってなかったし!


イガイガ : まぁ、ちょいちょい逃げてるしなー。

G : 逃げるとは認めず、『戦略的撤退』って言ってるけどな。今回ので、明確に逃げると判定になる訳だ。

咲夜 : あ、スキル自体が『逃走』だからか!


「逃げてませんよ!? あくまで、戦略的撤退ですから!」


 本当に逃げるのなら、さっきの桜の木とか倒すって結果にはなってないよ!?


ミナト : こらこら、スキル名で揚げ足を取らないの! 引くのも、状況次第では大事だからね?

富岳 : 逃げる事も、決して悪い訳ではないしな。サクラちゃんはなんだかんだで、その後に反撃には転じているし、単なる逃げとは言えないぞ。

いなり寿司 : どこまで計画性があるのかは正直怪しいが……まぁ結果的に、ちゃんと戦略的撤退にはなってるしな。

真実とは何か : それこそが真実なのだ!


「何気に、いなり寿司さんの言い方が1番酷くないですかねー!?」


 まぁ確かに、そこまで計画を色々立てて戦略的撤退をしてる訳じゃないけど! でも、逃げてはいないからー!


「まぁそれは今は置いておくとします! 次は……まぁ東に進むしかないですよねー! エリアボス、見つけられればいいんですけど……あ、色々と切れてるので再発動しておきましょう! 『索敵』『見切り』『弱点分析』『看破』!」


 よし、これで問題なし! んー、目指しているエリアの東端は、まだ結構遠いんだよねー。端まで行ってここでの最大Lvを確認するのはちょっとかかりそう? 今日の残り配信時間だと、厳しい気がするね。


ミツルギ : ここ、広いからな。あのドラゴンがエリアボスしては有力だった気もするが……ハズレだったしな。

神奈月 : 初の、エリアボスとの遭遇なしの配信って事もあり得る?

ミナト : その可能性、ないとは言えないねー。

富岳 : まぁそれが駄目な訳じゃないんだが……そういやサクラちゃん、今日の実況外のプレイはどういう感じにするんだ?


「……そうですね? 完全体の上限Lvは高いですし、このエリアの上限Lvまでは上げておきたいんですけど……そもそも、その上限が分からないですね!」


 目標はあっても、正確な値が不明だよ! 法則が分かれば予想も出来るけど、完全体での1エリアごとの区切りのLvがいくつか分かんないもん!


サツキ : これはあれだね! エリアボスの登場に期待?

咲夜 : 完全な運任せ!?

金金金 : いっそ、ランダムリスポーン任せで、遠くに飛ばされるのはどうだ? ここに再誕の道標を設置し直したんだし、戻ってはこれるだろ。

ヤツメウナギ : そろそろ使用制限が切れる頃合いだし、それもありかもなー。『縄張り』も使えるようになってるから、乱戦からのランダムリスポーン狙いもありか。

富岳 : 進化ポイントや経験値を稼ぐ必要もあるし、それもありかもな。

イガイガ : 俺としては、咲夜さんの立てたキツネの登場フラグがいつ回収されるのかが気になってるんだけど……。

咲夜 : ちょ!? 今回はそこ、全然影響してきてないのに、完全にフラグが立ってる事にされてる!?


「……あはは、私としてはキツネさんとは遭遇したくないので、このまま出てこない方がいいんですけどねー」


 可能な限り、キツネさんとは戦いたくないもん! エリアボス以外でキツネさんが出てきたら、スルー一択! 無理して戦う気もないのですよ!


咲夜 : ともかく、キツネの出現には俺はフラグを立ててないからな! 今まで出ていないのが証拠だ!

G : とか言ってると、ひょっこり姿を現したり……あ、マジで出た。

ミナト : あ、本当だね。南にあった森の中から、キツネが出てきたよ? あ、しかもこれって……。

咲夜 : えー!? このタイミングで出てくる!?

イガイガ : おー、言ってみるもんだ……って、ちょい待った!? あれ、エリアボスじゃね!? しかも、九尾か!?

いなり寿司 : おいおい、どういう確率だ、これ。


「……え? あー!? 『九尾の狐』って出てますし、エリアボスで、Lv15の上限とも表示されて……」


 待って、待って、待って!? 幻獣種かつエリアボスで、その上、キツネさんなの!? というか、ここでの種族名は漢字表記なんだ!?


「っ!? 尻尾の先に、火の球ですか!? なんでいきなり、こんな状態になってるんですかねー!?」


 どう考えても、あの尻尾の先に出てきた火の球は、遠距離攻撃のやつ! 今は1本の尻尾の先からしか出てないけど……これ、溜め攻撃かな? なんとなく、嫌な予感……。


ミナト : あらら、既に完全に狙われちゃってるね?

富岳 : これは……『九尾の炎弾』か。サクラちゃん、ここは逃げた方がいい。九尾の狐が相手だと、ほぼ確実に遠距離戦になる。

咲夜 : うげっ!? 『九尾の炎弾』って、九尾の狐だけの『破壊』系統のスキルと同格のやつじゃん!?

ミツルギ : 最大9発まで溜められる、9連弾の火の球の攻撃だな。もう既に、溜めが始まってるぞ。


「っ!? 2本目の溜めに入りましたね!? すみません! この今回は冗談抜きで、逃げさせてもらいます! 『逃走』!」


 キツネさんだから戦いにくいのは間違いなくあるけど、そうじゃなくても……これ、今はまだ勝てないよね!? 解放したばかりだけど、いきなり出番がやってきたよ!


サツキ : サクラちゃん、逃走開始!

水無月 : 逃走開始!

G : わっはっは! いやー、幻獣種の出現確率、マジでどうなってんの!?

咲夜 : まさかの4体目って……しかも、キツネで出てくるってあり!?

イガイガ : やっぱり、フラグ回収になったな!


「そんなフラグ、忘れ去ったまま回収しなくてよかったんですけど! わっ!? これ、移動が速い――わわっ!?」


 ぎゃー! すぐ後ろで爆発音ー!? チラッと後ろを見てみれば、火の球が迫ってきてるー!?


「殺意、高過ぎじゃないですかねー!? わっ!? わわっ!?」


 うー!? 『逃走』は初めて使うし、かなり移動速度が速いから、他所見してると転びそうになったよ!? うー! 今はともかく、逃げるのみですよ!


「背後の爆発音、怖いんですけど!?」


 これ、さっき迫ってきてた火の球が地面に着弾した音だよね!? ぐぬぬ! 『破壊』系統のスキルと同格のスキルって言ってたし、とんでもない攻撃っぽい!?

 でも、今は前だけを見て逃げるしかなさそう! いきなり、この『逃走』が役立つとは思わなかったけど……これ、『疾走』よりも速いね!


富岳 : 『九尾の狐』は、『器用』と『知恵』の2つのスキルツリーのルートを解放した場合の進化先になる幻獣種だな。それがエリアボスで強化されれば……かなり凶悪だ。

ミツルギ : 遠距離特化型だから、容易に懐には入れてくれないだろうな。かといって、遠距離での撃ち合いも……Lv差がある現状だと厳しい。

神奈月 : せめて『縄張り』で差を補いたいけど……今、ここで展開するのは自殺行為か。

ヤツメウナギ : どう考えても、周囲の敵まで引き寄せる状態だしな。


「そうなりますよねー!? というか、爆発こそしないですけど、次々と火の弾が飛んできてるんですけど!?」


 ぎゃー! 多分、『放火』に近い形の攻撃で、連発してきてるっぽいよ!? 

 ぐぬぬ! ここら辺、見通しがいい場所だから、思いっきり狙われまくってるー!? 引き離せてるのかどうか、それを確認する余裕もないよ!?


「あっ! 小規模みたいですけど、森を発見です! あの中へ逃げ込みますね!」


 火事のリスクもありそうだけど……それでも一方的に狙われてる状況からは脱却しないと! 少なくとも、どういう状況になってるのかだけでも確認したい!


金金金 : これ、森の中に逃げ込んで大丈夫なのか?

ミナト : んー、まぁ射線は一度切らないと危ないからね。まぁ森の中だからって、大丈夫とも言い切れないけど……。

富岳 : ここまで大々的に火を使う相手だと、火事のリスクも大きいからな。だがまぁ、森にいる他の敵を巻き込むのもありかもしれん。


「あ、そういう手段もあるんですか!? 確かに、索敵に反応はありますし……とりあえず、森に到着です!」


 倒れた木があったから、そこに身を隠して……火の弾が飛んでこなくなったし、もしかすると振り切れたかな? ちょっと様子を見てみて……。


「……思いっきり、口に火を溜めて、走ってきてますねー!? 火の弾が飛んでくるのが止まったと思えば、そういう状態なんですか!?」


 ぐぬぬ!? 距離自体は結構離れたけど、目視出来る範囲だったよ!? これ、射程外までは逃げられてないし……どうしよう?

 うー! ただでさえキツネさんとは戦いたくなかったのに、出来るだけ倒したいエリアボスで出てくるって酷くない!? 

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