第698話 今度こそ


 ふふーん! 『破壊の咆哮』を、溜めてる最中! どの程度溜めればいいのかの目安を教えてもらったから、眩しく感じる程度まで光が強まるのを待つのです!


「よく考えたら、口が光ってるのって謎ですよね? これ、何が光ってるんです?」


 光ってるのは口というより、溜めてる攻撃そのものかな?


ミツルギ : あー、それか。光ってるのは『精神生命体』の力そのものって話だぞ。

神奈月 : 育成してるキャラそのものは、精神生命体が宿る為の依代って設定だからなー。完全体に至った事で、本来の力の一端を使えるようになってる状態らしい。

咲夜 : 以上、公式ガイドブックの説明より!

ミナト : そこまでの力を引き出せるようになったから、『完全』な体なんだよねー。


「あ、これって精神生命体そのものの力なんですか! そう言われてみれば、確かに進化の時に飛び出る光に似てますね?」


 そっか、そっか! あの状態の時の力を、ライオンで発揮してる状態なんだ!


「……今更と言えば今更なんですけど、結局、精神生命体ってなんなんですかねー? 肉体を持たない、神みたいな強力な力を持ってる存在ってくらいにしか分からないんですけど……」


 溜めの光は強くはなってきてるし、少し眩しさも感じるくらいにはなってきたけど……敵の配置が悪いから、まだ撃てそうにない! だから、その辺の位置をちゃんと確認しつつ、雑談だー!


真実とは何か : その真実は、1種族目をクリアした時に明らかになる!

ミナト : まぁ明らかになるとは言っても、片鱗だけなんだけどねー。由来なんかは出てこないし、後発のオンライン版でその辺が分かってくる感じだよ。

神奈月 : でも、オフライン版の精神生命体と、オンライン版の精神生命体が同じ由来とも限らないんだよな。

富岳 : 確かにな。設定的に、出自が異なっていても不思議でもなんでもないし……やっている内容自体も、同一と考えるのは少し無理がある。


「皆さんでも、よく分かってない感じなんです!? まぁここまで、ストーリー的な要素はほぼ皆無ですけど……」


 最初の最初に、何かよく分からない存在に種族を選べって促されたくらいだもんね。あれ、よく考えたら何が語りかけてきてたの?


金金金 : 不思議そうな首を傾げる狐っ娘アバター。いやまぁ、確かにオフライン版は、俺としても色々謎だしな。

ミナト : 大丈夫、大丈夫! みんな、そんなもんだから! そもそも、ストーリー性は気にしてないし!

ミツルギ : かなりの量の種族が選べるから、個別のストーリーが用意されてる方がしんどいくらいだからな。

こんにゃく : あー、確かにそれは言える。

ヤツメウナギ : オンライン版でも、イベント絡みでストーリー展開はあるけど、完全無視しても進められるし……。

いなり寿司 : まぁイベント演出で占有されるエリアがちょいちょい出るから、そういう時は多少の制約もかかるがな。

G : あれはまぁイベントに組み込まれてるから、仕方ないだろ。


「あはは、まぁロックされてる種族、大量にいますもんね。あの数に個別のストーリーがあれば、確かに攻略は大変そうです!」


 オンライン版にはしっかりとストーリーがあるみたいだけど、オフライン版はそうじゃないって認識でいいみたいだね。クリアした時に何があるのかはちょっと気になるけど……そこは絶対にネタバレ案件だから、今は気にしない!


「それにしても……中々、良い位置に移動してくれませんねー」


 どの個体もちょいちょい動いてはいるんだけど、上手く一直線に並んでくれないよ!? そうしてる間に溜めが進んで、射程も伸びていってるのに!


金金金 : なんか、随分と横の範囲が狭くねぇ? こんなもんだったか?

水無月 : あ、本当だね。あれ? こんなに横の範囲って狭かったっけ?

ヤツメウナギ : いや、そんな事はないはずだけど……あ、凝集が最大になってるな。

G : くっ!? 遂に気付かれたか!?

イガイガ : わざわざ言わずにいたのに、なぜそれを言う!?


「えっ!? ちょっと待ってください! 私、まだ凝縮した覚えは……あ、でも実際にそうなってます!?」


 ぎゃー!? 凝縮率を緩めたら、左右の攻撃範囲がかなり広がったよ!? これなら、3体くらいは巻き込めそうな範囲になったけど……折角なら、もう少しまとめていきたいかも?

 まだ溜めも最大までは行ってないし、可能な限り多くの敵を一撃で葬れるように待機だー! まぁ攻撃はそれでいいとして……。


「あのー、なんでもう凝縮の状態になってたんですかねー?」


 そこが謎だよね!? というか、Gさんやイガイガさんは気付いてたみたいだし、他の人も気付いてたのにスルーしてた人が結構いる気がする!


こんにゃく : 発動タイミングが任意だから、凝縮自体がいつからでも可能って仕様ではあるぞ。

富岳 : 理由は割と単純でな? サクラちゃん、マップを見て複数の敵を巻き込めるように狙いを定め続けてただろ? それが原因だ。


「……えっと、それってどういう意味です? 目視で敵が見えない以上、そうなると思うんですけど……」


 んー? 原因は教えてくれたけど、いまいち因果関係が分かんない?


富岳 : あー、今のは分かりにくい説明だったか。一直線に狙うからこそ、そのラインに合わせて集中するのに意識が行き過ぎて……結果的に、そこに凝縮された感じだ。

咲夜 : 要するに、一直線に集中し過ぎての誤操作だ!

チャガ : 明確に溜め終わりがあるスキルなら、溜め終わったタイミングで凝縮するから気にならんが……『破壊の咆哮』だと、そういう誤操作はあるからな。

真実とは何か : それこそ、真実なのである!


「今の、そういう誤操作なんです!? ……まさかの落とし穴ですね」


 ぐぬぬ!? 一直線に敵が揃った時ってのを意識し過ぎて、それが原因で無意識に操作しちゃってて、勝手に凝縮しちゃってたって事なんだ!?


「まぁ原因が分かってよかったです! 本来に射程に戻せましたし……あ、今が良さそうですね! 『破壊の咆哮』、いっけー!」


 ふふーん! 今、6体の敵が並んだもんね! これ以上は欲張り過ぎだし、ここで決めるのさー!


「おぉ!? やっぱり、極太のレーザー感が凄いですね!」


 いっけー! 森の木々と一緒に、敵を瞬殺なのです――


<完全体を撃破しました>

<進化ポイントを2獲得しました>


<完全体を撃破しました>

<進化ポイントを2獲得しました>


<完全体を撃破しました>

<進化ポイントを2獲得しました>


<サクラ【至妙なライオン【雷】】が完全体:Lv4に上がりました>

<基礎ステータスが上昇します>

<進化ポイントを5獲得しました>


<完全体を撃破しました>

<進化ポイントを2獲得しました>


<完全体を撃破しました>

<進化ポイントを2獲得しました>


 ふふーん! 大量撃破で経験値もいっぱい……って、あれ?


「倒したの、5体ですね? 6体、巻き込んだと思ったんですけど……今ので生き残ってます!?」


 わー!? マップを見たら、1体反応が残ってた!? 移動してるから、今のを躱され……あれ?


「あ、カラスが飛んでますね。……ただ単に、空中にいたから当たらなかっただけです?」


 木々が吹っ飛んで視界が開けたし、その状況だから空中にカラスがいるのが見えたよ! ふー、躱された訳じゃなかったみたい?


ミツルギ : まぁ高低差で外したのは、仕方ない。こればっかりは、中々難しいとこだ。

いなり寿司 : 確かにな。いる場所の位置関係の問題だし……問題は、今ので交戦状態に入った可能性が高いってとこか。

ミナト : 距離はあるけど、向こうが……あ、あのカラス、『ヤタガラス』だ!?

咲夜 : ちょ!? また幻獣種!?

富岳 : 『ヤタガラス』だと!? ちっ、これは厄介な……。


「えっと……『ヤタガラス』ってなんでしたっけ? なんか逃げていってますけど、危険なんです?」


 んー? すぐに森の中に入って、私から離れていってるけど……これなら、特に問題ない気がするんだけどなー?


ミツルギ : 『ヤタガラス』……漢字で書けば『八咫烏』で、脚が3本あるカラスだ。

チャガ : 日本神話で出てくる、導きの神だな。太陽の化身とも言われる。モンエボでは幻獣種の1体だが……そもそも、幻獣種は特殊な条件で進化する個体だからな。根本的に厄介な個体が多い。

こんにゃく : ヤマタノオロチと同格の存在だと考えてくれればいい! てか、イージーでこんなに幻獣種って出てきたっけか!?

神奈月 : いや、進化条件を今の段階で満たすのは難しいから、出現確率はかなり低いはず……? でも、実際に出てきてるし……。

ヤツメウナギ : あー、でも進化条件を考えれば、この時点で出てくる幻獣種は色々と尖り過ぎか。

G : やっぱり、サクラちゃんは持ってるな!


「え、神話に出てくる神なんです!? というか、太陽の化身って……それだけでも危険な気がするんですけど!?」


 待って、待って、待って!? そんな相手が……あ、でも逃げてるのなら大丈夫じゃないですかねー? うん、どんな厄介な相手でも、戦闘にならないなら問題なーし!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る