第684話 完全体の強さ


 うふふ! このウサギ、動きは速いけど、狙い自体は分かりやすい! だから、なんとかカウンターで『出血』には出来た!


「この状態なら、もう無理に向き合って戦わなくてもいいですね! 『疾走』!」


 放電を躱わしてくるけど、それだけ動き回ってくれるなら攻撃する必要もなーし! 拓けた場所へ向かって移動開始!


ミツルギ : まぁ『出血』が入ったなら、無理に相手をする必要もないか。

ヤツメウナギ : 確かになー。


「ふっふっふ! このまま、どんどんHPが減ってしまえば……わっ!? わわっ!?」


 待って、待って、待って!? そんなのお構いなしに、思いっきり後ろから突っ込んできたよ!? 直撃はしなかったけど、少し掠ってバランスを崩しかけちゃった!?


「無茶しますね、このウサギ!?」


 凄まじい勢いでHPが減っていってるのに、更に派手に動き回って馬鹿なの!? あ、知恵が弱点だから、本当に知恵が足りてないんだった。


富岳 : サクラちゃん、油断するなよ? 完全体は基本的な生命の量が増えてるから、『出血』中でもこれまでよりも動けるからな。

ミナト : 今回は傷が深めだから、そう長くは保たないけどね。でも、生きてる間は猛攻撃を仕掛けてくるし、遠距離攻撃もしてくるから要注意だよ!

こんにゃく : ウサギの遠距離は『飛び蹴り』系統だよなー。

ヤツメウナギ : 俊敏系統の個体だし、勢いよくジャンプして、突撃みたいになってるやつだな。


「わっ!? これ、飛び蹴りなんです!?」


 うがー!? また掠って……その後、地面に突っ込んで自滅みたいになってるのは、気にしなくていいのかな?

 むぅ……HPは思ったほどは減ってない? これ、弱点には生命がなかったし、出血のダメージ量は堅牢は関係なかったはずだから……単純にHPが多いのかも?


「わわっ!? これ、疾走はやめた方がいいですね!? 小回りが利きません!?」


 という事で、一旦ズサッと止まるのです! あ、急に止まったから、攻撃が空振ってウサギが吹っ飛んでいったね。うん、思いっきり草むらの中に突っ込んでいっちゃった。


「チャンスです! 『放電』『放電』『放電』! っ!? 速いですね!?」


 放電は2発は当たったけど、3発目は躱されたよ!? ぐぬぬ、これは『見切り』あたりで攻撃を読まれてる気がする!


「でも、もう終わりですかねー?」


 もう瀕死な状態だし、そろそろ――


<完全体を撃破しました>

<進化ポイントを2獲得しました>


 あ、やっぱり終わったね! 『出血』の継続ダメージと放電2発で削った分で、ほぼ瀕死までなってたもん!


「完全体のウサギ、撃破成功です! ……かなり速かったですね」


 正直、『出血』は上手く入ったから良かったけど……結構厳しかったよ!? 完全に速度で負けてたもん!


ミツルギ : まぁ俊敏系統は速さに秀でてるからなー。

いなり寿司 : 構成的にも遠近、どっちにも対応出来るタイプだったから、まぁやりにくい相手ではあったか。

ミナト : 速度も重要にはなってくるからね。まぁあのウサギは、攻撃を外し過ぎだけど。

神奈月 : そこはまぁ、イージーだからなー。そうでなけりゃ、もっと当てられまくってたらだろうしさ。

真実とは何か : それが真実なのである!


「……あはは、イージーだからウサギの攻撃の狙いが甘かったんですねー」


 難易度がもっと高ければ……疾走してる間に背後からの攻撃を思いっきり受けてた気がする! これ、もしかして……。


「あのー、少し俊敏のステータスを上げた方が良かったりします?」


 劇的に低いって訳でもないけど、俊敏のステータスって他に比べると低めだもんね!?


ミツルギ : あー、まぁそろそろちょっと強化した方がいいかもな。さっきのウサギが俊敏系統で特に速いってのはあったけど、これから普通にあれくらいのは出てくる訳だし。

ミナト : 単純な話、俊敏系統で進化してる個体はサクラちゃんの器用のステータスに相当するくらいの俊敏のステータスは持ってるからね。さっきのはその差が顕著に出た感じだよ。

富岳 : 上手くカウンターを入れて『出血』には出来てたが、あれはまぁまぐれだろうな。

サツキ : そんな事ないよ! サクラちゃんなら、もっと狙って出来るはず!


「……あはは、その自信はちょっとないですねー」


 我ながら綺麗に決まったカウンターだったけど、あれを毎回出来るかと言われたら……うん、出来る気はしない! 草むらを『破壊の咆哮』で吹っ飛ばしてたからこそ、そういうのが狙える状態になってたんだし!


チャガ : 俊敏のステータスを強化しておけば、それだけ自分の攻撃速度も上がるからな。そうなれば、それだけカウンターも入れやすくなる。

神奈月 : まぁ攻撃速度が上がっても、攻撃方向の指定が遅けりゃあんまり意味ないけどな!

こんにゃく : いやいや、指定が終わってからの動作速度は上がるんだから、意味はあるぞ!

咲夜 : その辺、反射神経や判断力が速い人ほど恩恵が大きいやつ。


「あはは、まぁその辺はフルダイブのゲームだからこそですかねー?」


 モンエボに限らず、反射神経が良い人ほど強いってのはあるもん! まぁ当たり前な話だけど!


ミツルギ : あー、それは別に旧来型のゲームでも変わらんぞ?

イガイガ : アクション性が強いゲームでプレイヤースキルが重要になるのは、別にフルダイブに限った話じゃないしなー。

咲夜 : なんなら、ゲームに限定した話ですらないよな? 普通のスポーツとかでもそうだしさ。

G : あー、確かに。


「……言われてみれば、確かにそうですね? まぁ、とりあえずどこかで俊敏のステータスを上げておきたいとこですよねー! 知恵も上げる必要がある気もするので、色々と悩みそうですけど……」


 ぐぬぬ! 今回のウサギは知恵が弱点だったから麻痺も入ったけど、完全体への進化になった今、一番低くなってる知恵もどうにかしないと!?


ミツルギ : あー、それは確かに……。弱点に知恵が出てない個体だと、状態異常がさっぱりって可能性もあるな。

富岳 : 縄張りで補うって手もあるが……まぁ確定で死ぬからな。この広い平原エリアでは、あんまりお勧め出来ないやり方ではある。

イガイガ : 別に、それでノルマ達成してくれてもいいんだけどなー。

G : いやいや、そんな分かりきった内容でのノルマ達成は、物足りないぞ! 驚くような状況でこそ、達成した時の楽しみがだな?


「だから、私の死をノルマにしないでもらえませんかねー!?」


 縄張りを使ったら色々と手早く済むけど、死亡をノルマとか言われてる中でやる気はないのですよ! ……マップの解放がすぐ出来るのは、魅力的ではあるけども!


「まぁそれは今はいいとして……完全体の撃破で貰える進化ポイント、量は増えないんですね。うーん、第15段階の解放にはあと1、足りません……」


 むぅ、ちょっと期待してたのに、増えてなかったのは残念……。早めに器用の第15段階まで解放して、他のスキルツリーを解放していきたいんだけどなー。


金金金 : 悩み顔の狐っ娘アバター。まぁ足りないもんは仕方ないし、次を見つけてサクッと仕留めるしかないんじゃね?

サツキ : その通り! サクラちゃん、次の敵の探索だー!

水無月 : 探索だー!


「……まぁ悩んでても進化ポイントは手に入りませんし、そうしましょうか! それにしても……完全体、強くないです?」


 なんというか、タヌキにしろウサギにしろ、かなり厄介じゃないですかねー? 完全体の全部がこんな感じだと、結構辛い気がする……。


神奈月 : 完全体は強いぞ! 少なくとも、どの個体も第12段階までのスキルは必ず1つは持ってるからな!

G : それが進化条件なんだから、当然の話ではある。

ミツルギ : 最低限でも……サクラちゃんで例えるなら、『衝撃凝縮』までは持ってる事になるからな。

富岳 : イージーでの成熟体までなら、上限Lv近くでなければそこまで持っている個体はそんなに多くないんだが……まぁ完全体ともなれば、当たり前のように使ってくるしな。スキルでなくとも、ステータス系統のルートで育ってる場合もあるから……その分だけ、強くはなるぞ。


「あ、だから強いんですか!? むしろ、強くて当然って感じになってくるんですね!」


 そっか、そっか! 完全体まで到達してるからこそ、必ず超えてる強さのラインがあるんだね。当たり前な話だったけど、進化して強くなってるのは私だけじゃないんだ!

 『衝撃凝縮』を使える敵って考えれば、そりゃ強いよねー。どの敵もそれに相当するだけの何かを持ってるんだから、強みを活かしてこられたら厳しいよ!


 でも、決して勝てない相手ではなーい! うふふ、要は私が戦いやすい状況に持ち込めばいいのです! よーし、そういう感じで続きをやっていこー!

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