第683話 気を取り直して


 ぐぬぬ!? 同格の完全体とのまともな遭遇だったのに、思いっきりタヌキに逃げられたー!?


「……いきなり逃げ出すとか、ありなんですかねー!?」


 うがー! 逃げずに戻ってこーい! 破壊の咆哮、無駄撃ちじゃないですかねー!?


金金金 : 思いっきり悔しそうな狐っ娘アバター。まぁ気持ちは分かるが……今のはそうあるもんなのか?

ミツルギ : いや、流石にあの逃げっぷりは、そう多くはないぞ。

富岳 : ただ単に、さっきのタヌキがそういう個体だっただけだな。たまに、ああいうのはいるが……。

ミナト : よーく周囲を見れば、逃げていってるタヌキの姿とか捉えられるんだけどねー。まぁサクラちゃんは戸惑っちゃってたし、そこまで確認出来なかったのは仕方ないかな?

咲夜 : ……え、あれで逃げた時って、追えるのか?

チャガ : 別に瞬間移動をする訳じゃないから、追えるには追えるぞ。ただ、死角にこっそりと潜んで逃げるから……見つける難易度は高めだがな。

いなり寿司 : 『索敵』が機能してたら、それで追えるけどな。

真実とは何か : それが真実なのである!


「え、『索敵』で確認出来たんです!? むぅ、マップが使えない状況は、相変わらず痛いですね……」


 うがー! 死角に隠れて逃げるなら、その辺の草むらに隠れながら逃げてたって事なの!? うー、そうと知ってたら、適当にでも放電を放ちまくったのに!


「……ミナトさん、本当にもう完全に逃げちゃってます? 実は、その辺にまだ潜んでるとかありません?」


 マップに反応が出て、死角に隠れているなら、まだその可能性はあるはずだよね! 自分じゃ見つけられないけど、ミナトさんなら――


ミナト : あ、もう完全にいないよ。そこから北の方に逃げていったの、確認したしさ。

神奈月 : 逃亡、既に確認済みか。

こんにゃく : 相変わらずのミナトさんですなー。

ヤツメウナギ : 観察力、とんでもねぇな!?


「……あはは、完全に逃げられた後ですか」


 ぐぬぬ! ミナトさんが確認出来てたなら、それはもう確実な事だよね!? というか、私にも見えてたって事にもなるよ!?


「まぁ逃げられたものは仕方ないとして、次に行きましょう! 次に! 今度はちゃんと『破壊の咆哮』を当ててやりますよ!」


 どういう風に発動するかは分かったし……あー!? これ、結構再使用時間が長いよ!?


「むぅ、しばらく使えそうにないですね……」


 うがー! 折角の1発が、完全に無駄撃ちになった挙句、次がすぐには使えないのって、何の嫌がらせなの!?


ヤツメウナギ : 『破壊』系統は強力だけど、その分だけ再使用時間は長いしなー。

ミツルギ : それでも、今回のは溜め時間はほどほどだったから、短い方だけどな。

イガイガ : 最大で10分とかになるからなー。

真実とは何か : それが真実なのである!


「最大10分って、長いですね!? ……最強格なだけあって、そんなに高頻度では使えないんですね」


 そう連発出来るようにはなってないのは……まぁ仕方ないのかな? そう考えると、『放電』や『放火』に似てはいても、やっぱり別物ではあるんだね。まぁあれでも、溜めれば再使用時間は長いけど……。


「まぁここで立ち止まってても仕方ないので、先に進みましょう! 別に『破壊の咆哮』だけが私の手段じゃないですしね!」


 という事で、仕切り直して出発だー! 完全体がどれもあのタヌキみたいに逃げる訳じゃないみたいだし、次に見つけたのは絶対に倒すのですよ! それで、第15段階まで解放しちゃうのです!


サツキ : 気を取り直して、出発だー!

水無月 : 出発だー!


「さーて、次は何が出てきますかねー? 出来れば、早い段階で完全体の進化名を全て把握しておきたいんですけど……」


 この辺、どうも敵の姿が見えないんだよねー? まぁ少し背の高めの草むらだから、ただ単に隠れて見えてないだけかもしれないけど!

 何気にさっきの『破壊の咆哮』で一直線に、草むらも吹き飛んではいるけど……って、あー!?


「『鋭敏なウサギ』を発見です! ふっふっふ! 隠れられる草むらから、吹き飛ばして何もないとこに出てきたのが運の尽きですね! 『放電』『放電』『放電』!」


 見通しが良くなってる部分でキョロキョロと周囲を見渡しているところに、思いっきり放電だー!


イガイガ : おー、容赦ない攻撃。

サツキ : サクラちゃん、どんどん攻撃だー!

水無月 : 攻撃だー!

金金金 : 『鋭敏な』って事は、さっきのタヌキと同じ俊敏系統か。

イガイガ : そうなるなー。まぁ戦法まで同じとは限らんけど。

いなり寿司 : そんな事を言ってる間に、ウサギが麻痺したな。弱点、知恵か。


「ふっふっふ! こうもあっさり麻痺するとは、軟弱なウサギですね! 今のうちに、草むらから引っ張り出しておきましょう! 『突撃』!」


 放電での麻痺の確率は低いし、私の知恵も少し物足りなくなってきてる気もするから、そう長くは続かないはず! だから、今のうちに土が見えてる場所に吹っ飛ばーす!


「よし、成功です! 『放電』『放電』『放電』!」


 弱点に堅牢があるから耐久性は低いはず! 思いっきり、ここで畳み掛けるのですよ! 器用が弱点になってないのが気になるけど……うん、俊敏は間違いなく高いんだし、屈強も高そうだから、今のうちにこれを狙っていこー!


ミツルギ : 見通しのいい場所に吹き飛ばして、距離を詰めつつ、放電の連発か。近付いて、何か狙ってるな?

富岳 : まぁこの状況で狙うとしたら、『出血』だろうな。


「『放電』『放電』! そのつもりですね! そろそろ届く距離ですし……『強爪撃』! むぅ、『出血』にはならず……わっ!? 麻痺が解けました!?」


 ぎゃー!? 麻痺が解けた瞬間、見切りの反応で視界が真っ赤になったー!? 大慌てで横に飛び退いて……あっ、躱し切れてない!?


「……むぅ、私が『出血』になっちゃいましたね」


 直撃を受けた訳じゃないけど、少し掠っただけで『出血』になるって酷くないですかねー!? というか、思いっきり回し蹴りをしてきたね、このウサギ!?


「わっ!? このウサギ、速いですよ!?」


 待って、待って、待って!? 私の周囲をぐるぐると、凄い速度で駆け回り始めたよ!? ぐぬぬ!? これ、ウサギの位置を把握するだけで、精一杯……ううん、それすら厳しそう!?


「わっ!? ぐふっ!?」


 ぎゃー!? 視界に捉えきれなくなった途端、思いっきり背後に衝撃がきたんだけど!? 何とか踏ん張ったけど、ウサギの姿を見失っちゃうのは危険過ぎるよ!?


金金金 : 速いな、このウサギ。

ミツルギ : 完全体は普通に強いからな。構成的に速度があって、遠距離も近接もいけるタイプだから、結構厄介だぞ。単発の威力は低いが、攻撃手段のバランスはいい。

ミナト : サクラちゃん、速度で負けてる時は変に目で追っちゃ駄目だよ! 動く方向を誘導するか、待ち構えるかのどっちか!

富岳 : 今は『出血』になってるから、その治療をするのも考慮に入れた方がいいな。


「確かに、これは下手に追いかけても『出血』が酷くなるだけですね!? すぐに治療します!」


 チドメグサ、チドメグサ! まずは『出血』を治してから……行動の誘導か、待ち構えるってどうすればいいんだろ? ううん、それを考えるのは後! まずは『出血』を止めるのが――


「ぐふっ!? また、背後から!」


 うがー! このウサギ、知恵が弱点な割に、私の死角を狙ってき過ぎ……あっ、そっか! 背後から狙ってくるのが分かってるなら、誘導する方法はあるよね!

 でも、それには思いっきり動く必要もあるし、大急ぎでチドメグサで『出血』を治さないと! ……うん、治った! それじゃ、反撃なのですよ!


「『疾走』! これなら、着いてきますよねー!」


 うふふ! 馬鹿正直に真後ろばっかから狙ってくるなら、その方向をはっきりと決めちゃえばいいのですよ! 幸い、『破壊の咆哮』で吹っ飛ばした部分が一直線で見通しがいいしね!


「今です! 『強爪撃』!」


 速度では負けてるだろうから、ズサッと止まって、振り向きざまに攻撃だー! 見切りで赤い表示が出てるけど……ウサギは見えてるし、そこだー!


「カウンター、成功です!」


 うふふ、何とかギリギリで回避も出来たし、爪が当たった手応えあり! あ、ウサギを見てみれば『出血』は入ってるし、結構良いダメージも入ってたみたい!


サツキ : おー! 見事にカウンターが入ったね!

水無月 : サクラちゃん、ナイスカウンター!

ミツルギ : ウサギの勢いを、上手く威力に変えられていたな。

ミナト : 『出血』も傷口が広めで入ったし、良い感じだよ!


「ふっふっふ! さーて、追撃ですよ! 『放電』『放電』『放電』! って、これを躱わすんです!?」


 ぐぬぬ!? 放電の攻撃速度は速いはずだけど、ウサギの移動が速くて上手く当てられない!? まぁでも、『出血』の状態でそんなに動きまくったら、すぐに終わる気がするね!

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