第668話 新しいもの
色々とあったけど、夏休みの課題を再開して進めていってる最中! ふっふっふ! 思ったより、順調に進んでるのですよ!
「さて、今日はこれくらいにしとこうかい」
「終わったー!」
「……やっと終わった」
もうそろそろ12時になるってところで、終了宣言! なんか結月ちゃんは元気なく突っ伏してるけど……大丈夫かな?
「美咲は、思っていたよりも集中力はあるね。……誰かさんと違って」
「……数学は、特に苦手なんだってば!」
「それは知ってるけど……正直、美咲の方が意外でね?」
「うー! 美咲ちゃん、勉強に関しては私と同じ側だと思ったのにー!」
えーと、そういう風に言われても困るんだけど……? でも、いつもより捗ってた実感はある!
んー、なんでだろ? 分からない部分で詰まっても、すぐに楓さんに教えてもらえたからなのかな? 無駄に悩む時間が少なかったのは、良かった気はする!
「さて、毎日少しずつ時間を取ってやっていきたいとこだけど……美咲は時間的には大丈夫なのかい?」
「あ、うん! 午前中にやるなら、多分大丈夫! ずっとフルダイブが出来る訳じゃないし、課題も終わらせないとマズいしね!」
「なら、毎日このスケジュールで――」
「えーと、私はお店の手伝いが――」
「結月、そこは花苗さんに許可はもらってるから問題ないよ。むしろ、逃げないように見張りを頼まれたくらいだしね」
「お姉ちゃん!? わー!? もう外堀が埋められてたー!?」
「元々、結月が手伝わなくても回ってる店なんだし、昨日みたいに急な人手不足じゃない限り、問題ないだろ?」
「うぅ!? それはそうだけど、折角の見て盗むチャンスがー!?」
「結月ちゃん、一緒に頑張ろ? 早く済ませば、それだけ楽になるし!」
「……うん。……なんとか頑張る」
結月ちゃんが勉強嫌いなのはよーく分かったけど、これは1人でやる方がよっぽど辛いやつ! 楓さんの教え方は上手だったし、やらずに放り出して、夏休みの終盤に慌てるよりは絶対にこっちの方がいいもんね!
「何気に、結月よりも美咲の方がやる気はあるんだね?」
「自分だけでやる方が、圧倒的に面倒だもん!」
「……結月もそう思ってくれれば、私的にはもっと楽になるんだけどね?」
「うー! やるから! やるから、その可哀想なものを見るような目で見ないでー!?」
なんだか今日は、結月ちゃんの普段とは違った一面をよく見るねー。まぁ勉強が苦手なのは同じだから、気持ちは分からなくはない!
でも、だからこそ、ここで楓さんの協力が必要なのですよ! 今年の夏休み、色々と頑張っていくつもりだもん!
「あ、美咲、明日はどのくらいの時間に学校に行くんだい?」
「えっと……まだ決めてないから、家を出る前に連絡するのでもいい?」
「美咲ちゃんの家は遠いから、連絡を受けてからでも私達は、間に合うね!」
「……結月はそうだけど、私はそうでも……仕方ない。今日はこのままこっちで泊まっていきますか」
「あ、それなら夜も食べてく? 昼は元々、その予定だけど」
「そうさせてもらうよ。折角だから、今日は結月と一緒に、美咲の『サクラ』の配信でも見るのもありだね」
「……え? え、楓さんも見るの!?」
「楓、いいね、それ!」
わー!? 既にリアルで知ってる姉さんや結月ちゃんが見てはいるけど、こういう流れで楓さんに見られる事になるとは思ってなかった!?
「そういえば、楓さんはゲームをやるの?」
「ん? まぁ結月が好きだから、色々と巻き込まれてやってたりはするよ。『立花サナ』についても、前々から結月が長く語って――」
「わー!? それ、言わなくていいからー!」
「あぁ、そういえば新しく始まった配信で気に入っているのがあるって言ってたのに、いつの間にかその話題が途絶えたのは、配信の張本人に――」
「ぎゃー!? それはもっと言わないでいいからー!?」
結月ちゃん、慌てまくりだー!? ……あれ? もしかして、楓さんが見せてきたあの記事を探すキッカケって、結月ちゃんの方にあったりするの? うーん、まぁいいや!
それにしても……あの記事、どうしたもんだろ? 姉さん……ううん、この場合は聡さんに相談するのがいいのかな?
「美咲ちゃん、今はとりあえずここまでで! 配信、楽しみにしてるから! あと、明日も!」
「ちょ、結――」
「あ、切れた」
強引に切断したみたいだったけど、結月ちゃんが楓さんの携帯端末を離しちゃったのかな? まぁ必要な事は伝えられてるし、今日やる夏休みの課題はこれで終わり――
「美咲、今は大丈夫か?」
「あ、うん! 今、手が空いたとこ!」
ノックが聞こえた後に兄さんから声がかかったって事は、私の喋り声が途切れるタイミングを見計らってそうだね! そして、出掛けてた兄さんがいるって事はお昼ご飯だー! あと、新しい椅子も!
「入るぞ」
「おぉ!? 結構デカい椅子だ!?」
「そりゃ、今のその椅子と比べればな。とりあえず、そっちの椅子を渡せ。入れ替えるぞ」
「はーい!」
ふふーん! 兄さんが持ってきてくれた椅子、黒を基調としたシンプルなデザインだね! あ、でも背もたれの部分に白い線が一本、大きく入ってる? これ、結構目立つ傷かも?
「それが言ってた傷だが、問題ないか? 破れている訳じゃないんだが、見た目がな……」
「座ってたら見えない部分だし、問題ないよ! でも、どうやったらこんな傷が付くの?」
「あー、新入りのバイトが慣れてない時に慌てて、ちょっと引っ掛けちまってな。かと言って、買い取らせる訳にもいかんし、新商品が出て入れ替える予定の時だったから……格安の展示処分って形にする話が出てた感じだ。傷が気にならんなら、まぁお買い得だな」
「おー、私的にはいいタイミング!」
売り物としては問題ありの状態なんだろうけど、実用性には問題なーし! いつもの私の机の前に設置してくれたから、少し座ってみて……。
「おぉ! かなり座り心地がいい!」
「ま、長時間の作業でも負担にならないってのが売りの設計だからな。リクライニング機能付きだから、背もたれを倒してみろ」
「えーと、どこをどうすれば……?」
「右側にレバーがあるだろ? それを引っ張ればいい」
「右側……あ、これ? おぉ! 背もたれが倒れた!」
わぁ! 昨日、打ち合わせの時に座った椅子に匹敵するくらいいい感じ! これ、そのまま寝れそう! うん、これで寝っ転がってる状態でフルダイブも出来そうだし、気に入った!
「兄さん、これって結局いくらになったの? 1万円は超えないって言ってたけど……」
「俺の店員割引ありと、自分で持ち帰ってきたから配送料も差っ引いて、8000円だ」
「え、その値段でいいの!?」
この椅子の元の値段は知らないけど、相当な割引になってない!? 絶対、その金額じゃ売ってないよね!?
「物がデカいし、展示品だからバラして持ち帰りが出来ないから、本来なら配送料が店持ちにして、そこそこかかるんだよ。でもまぁ知り合いに軽トラで運んでもらったから、その分だけ安く済んだからな」
「おぉ!? そうなんだ!?」
そっか、そっか。この椅子、どう見てもかなり大きいもんね。普通に配送したら、結構なお値段はかかりそう!
「あ、その兄さんに知り合いにお礼はした方がいい?」
「いや、それは構わん。普段から色々手伝わされてるから、その借りを返してもらっただけだ」
「……そうなんだ?」
兄さんの交友関係って全然知らないけど……まぁ兄さんがいいって言うなら、問題ないよね! それじゃ、兄さんに代金を払ってしまおー! うふふ、かなりお安く手に入ったのは嬉しいなー!
「……よし、代金は受け取った。さて、昼飯にするから下に行くぞ」
「はーい! あ、そういえばお昼は兄さんが買ってくるって聞いたけど、何を買ってきたの?」
「弁当だ、弁当。知り合いが丁度、北海道の物産展でアルバイト中でな? 冷やかしがてら、買いに行ってきた」
「おぉ!? 北海道の物産展!」
あ、そういう流れだから兄さんが買ってくるって事になったんだ! そっか、そっか! それはかなり美味しいものが食べられそうな予感!
「この古い方の椅子は、処分で問題ないか?」
「あ、うん! それで構わないよー!」
「了解だ」
ふふーん! いつから使ってたかすら覚えてない椅子だけど、これまでお役目ご苦労様です! 今日からは、新しい椅子が私の相棒だー!
「あぁ、そうだ。一応、その椅子をVR空間で使えるようにするダウンロードコードもあるが……使うか? 正直、和室とは相性は悪いんだが……」
「えーと、どうしよう?」
それって佐渡くんが打ち合わせの時に出してくれたみたいに使えるって事だよね? うーん、和室の中でこの手の椅子は使わなさそうだし……でも、使わないと思ってても、何か急に使う事もあるかもしれない! 今までの服みたいに!
「使うかどうか分からないけど、使えるようにはしておいてほしいかも?」
「なら、そうしとくか」
「うん! 兄さん、ありがと!」
ふふーん、これでいいのです! さーて、それじゃ兄さんが買ってきた北海道の物産展のお弁当を食べるのさー! 食べ終わったら、和室の改装を仕上げていこー!
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