第667話 潜在的な問題
夏休みの課題をやってて、休憩になったと思ったら……全然予想してなかった話題になってきてるんだけど!? 立花さんに『サクラ』の事を気付かれたり、なんか変な記事も存在が判明したり……文化祭のお手伝いの件まで、なんか問題があるみたい……?
「もしかして、私が手伝うのは迷惑なの……?」
もし、そうなら――
「迷惑なんかじゃないよ!?」
「それは櫻井さん次第……ってとこだね」
「楓!?」
あはは……やっぱり迷惑なんだ。私、なんか変な事をしちゃったかな……? そっか、私なりに一生懸命やろうと思ったんだけど――
「まぁ話は最後まで聞きなって。私が問題だと思っている理由は2つ。櫻井さんがどっちの部員でもない事と……明らかに、既にアマチュアじゃないと思えるからだけど……櫻井さん、正直なところ、ガチなプロの指導を受けている身で無償での手伝いってのはどうなんだい? 技術の安売り……いや、安売りどころの話じゃないからね」
「……え?」
あ、そっか。言われて気付いたけど、今の私って姉さんの弟子みたいな立ち位置になるんだ!? あれ? これ、もしかして迷惑だと言われてるんじゃなくて、私や姉さんの事を心配して言ってくれてる?
「櫻井さんが手伝ってくれるのは、正直ありがたいんだよ。ありがたいんだけど……その善意に甘え切って、プロの弟子に外部委託ってのはね?」
「楓!? そんな事を思ってたの!? 美咲ちゃん、同じ学校の友達だよ!」
「……結月、あんたはちょっと考えなさ過ぎ。その友達って関係を利用して、部外者の櫻井さんにタダ働きさせる気かい?」
「っ!? そ、それは……」
結月ちゃん、完全に言葉に詰まっちゃってる……。そういうつもりは一切なかったのは分かるし、私もそういう意識は全然なかったんだけど……。
あっ! だから、姉さんは私が全力で楽しめるようにやれって言ったのかも! だったら、ここで私が言うべき事はこれだー!
「立花さん、私は手伝うのはやめないから!」
「……何も報酬は出せないよ?」
「うん、それでもいいの! 文化祭の手伝いは、私がやりたいから、やりたいようにやるんだよ! 仕事とかそんなのは関係なくて、私が楽しみたいからやるの!」
「……美咲ちゃん」
「それに、姉さんからも全力で楽しめるようにやれって言われてるもん! だから、姉さんへの影響も大丈夫!」
「……そうかい。もうお姉さんからの許可は出ていて、その上で櫻井さんの意思で参加したいって事だね?」
「うん!」
もし今の話が、最初の最初に出ていたなら……少し悩んだかもしれない。でも、もう私は楽しみにしちゃってるもん! 今からやめろって言われても、そんなのはお断り!
「ふぅ……それなら、名義だけでいいから、うちかコンピュータ部に入っておく気はあるかい? 外部の手伝いじゃなくて、正式な関係者にした方が、あれこれ言われた時に突っぱねられる理由になるからね」
「あ、そっか。私は部員じゃないから、色々とややこしいんだ?」
「私が気付いたみたいに、誰かが櫻井さんが『サクラ』だって気付く可能性はあるからね。でもまぁ、正式な部員なら難癖を付けられる筋合いはないからさ」
「……そっか、それはそうだよね」
料理部とコンピュータ部の出し物なんだから、その中の部員の一員として参加してるなら、他にどんな立場があったとしても問題はないって事なんだ。
逆に、部外者のままで手伝うと、変に難癖をつけられる可能性が否定出来なくなるんだ。っ!? これ、私というより、私にタダで手伝わせたって事で他のみんなが責められるんじゃ!?
「……楓、要は美咲ちゃんを勧誘したかっただけ?」
「どっかの誰かさんが、リスクを考えずに動いてたのに気付いたから、その対処をしてるんでしょうが!」
「痛っ!? 殴らなくてもよくない!?」
「私だって、こういう事を言いたくて言ってるんじゃないよ! まったく、最初から言っててくれてれば、その時から対処してたってのに……」
「……だって、勝手に言いふらす訳にもいかなかったんだもん」
「それも分かってる。分かってるから、こうして誰も他の人がいない状況で話してんの。分かった?」
「……はーい」
なんか、立花さんに色々と気苦労をかけるような状態になってたっぽい!? ……なんて言ったらいいのか分かんないけど、なんかごめんなさい!
「それで、部活に入るのはどうだい? うちの顧問なら櫻井さんを気に掛けてたし、明日にでも話は通せるよ。ただ、技術的な事を考えるならコンピュータ部の方がいいかもしれないね」
うーん、部活に入る事は全然考えてなかったけど、状況的には本当に入った方が良さそうかも! でも、どっちにするかは……結月ちゃんや立花さんもいる料理部の方がいいかも?
コンピュータ部には女子がいなかったし……って、わー!? 何でここで佐渡くんの顔が浮かんでくるのー!? なんか顔が熱くなってきたけど、なんでー!?
「美咲ちゃん? なんか顔が赤くなってるけど……大丈夫?」
「だ、大丈夫! 冷房の効き、悪くなったのかな……?」
うーん、室温設定は特に変化ないけど……なんか最近、ちょいちょいこういう事があるよね? なんだろ、これ?
「……へぇ、そういう反応が出るって事は……まぁ今はいいか。櫻井さん、どっちの部かはまだ置いといても、部活自体に入る意思はあるって事でいいのかい?」
「あ、うん! 変に騒がれて、難癖をつけられるのは嫌だし、それはするよ!」
文化祭の当日、絶対に姉さんは来るだろうしねー。姉さん、普通に仕事で顔は出してるから、知ってる人が見れば『立花サナ』ってのはバレる可能性もあるもん!
その辺の事情までは知らない……ん? 待って? さっきの記事の姉さんのシスコン疑惑のを見たら、その事まで含めて心配されてませんかねー!? ……あはは、立花さんがこうやって私に意思確認をしてきた理由がよーく分かった気がする。
「なんなら、兼部でも構わないよ? 別に禁止されてないしね」
「あ、そういう方法もあるんだ!?」
「今すぐに答えを出す必要はないからね。ただ、まぁ出来るだけ早くお願いはしたいけど……」
そっか、私が本格的に動き出す前に、正式な部員になってた方が都合は良さそうだもんね。……うん、決めた!
「明日の午前中に学校まで行くよ! それで両方に入部届、出してくる!」
「そうか、それはありがたいね。なら、結月、明日は私達も学校に行くよ。流石にこっちの都合で動いてもらうんだから、任せっぱなしには出来ないしね」
「それはもちろん! あ、それなら美咲ちゃん、それが終わってから買い物に行こー! 服を見たいって言ってたよね?」
「あ、うん! それもいいかも!」
「楓も来る?」
「……結月だけだとちょっと心配だから、一緒に行った方が良さそうだね」
「ちょっと!? 私だけだと心配って、どういう意味!?」
「どういう意味も、そのままの意味だけど。変な男に、ホイホイと連れていかれても困るからね。……櫻井さん、狙われそうだし」
「あー、それはあるかも?」
「……え? 私、狙われ……?」
狙われるって、どういう事!? ただ服を買いに行くだけなのに、誰にどう狙われるの!?
「さて、明日の事は明日するとして、そろそろ課題に戻るよ」
「うー!? それがあったー!? ……今日、もう終わりにしない?」
「却下。あ、櫻井さん、課題が終わるまでは私が面倒見るから……まぁそれが手伝いの報酬代わりだと思ってくれればいいよ。大したもんでもないけどさ」
「ううん! 自分でやるとサボりがちだし、助かります!」
夏休みの課題、自分だけでやると面倒過ぎるもんね。色々する事もあるし、立花さんがこうやって教えてくれながら進められるなら、本当にありがたいもん!
「あぁ、それと……私の事は『楓』でいいよ。『立花』さんだと、お姉さんの名義と被ってややこしいでしょ?」
「あ、それは確かに……。それじゃ楓さんって呼ばせてもらうね!」
「……なんで『さん』付け? いや、別にいいけど。私は『美咲』って呼ばせてもらうけど、いいかい?」
「うん! 大丈夫だよ!」
なんとなくだけど、呼び捨てよりは『さん』付けって気がした! なんか今日のこの集まりで、一気に距離が縮まった気がするねー!
「さて、結月、美咲、課題を進めていくよ」
「はーい!」
「……はーい」
結月ちゃんの普段とは違う様子も色々と見れた気もするよねー。さーて、お昼まで課題を頑張って進めていくのですよ!
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