第651話 エリアボスのタカ


 ぎゃー!? 雑談に気を取られてる間に、タカが交戦距離に入ってたー!?


「わっ!? わわっ!? 急降下!?」


 羽根を飛ばしてくるだけじゃなくて、直接突っ込んできたよ!? 回避! 回避ー!


「あ、危ないですね!?」


 一気に突っ込んで、地面スレスレでまた上空まで飛び上がっていったけど……なんとかギリギリ回避!


金金金 : 慌てふためく狐っ娘アバター。まぁ予想はしてたけど、やっぱり気付いてなかったか。

G : わっはっは! マップで近付いてきているのに、誰も指摘しない状況よ!

咲夜 : そこはほら、やっぱり期待したいし?

ミツルギ : というか、単純にサクラちゃんの警戒不足だな。

富岳 : 近くにいるのが分かってたのに、いくらなんでも今のは気を抜き過ぎだな。


「うぐっ!? ひ、否定が出来ないです!?」


 ぐぬぬ! 確かに私が油断してたのは事実だから……って、考えてる場合じゃない!


「わっ! わわっ!? また突っ込んで!?」


 ぎゃー!? 何このタカ!? 羽根を飛ばしてきたと思ったら、すぐに自ら突撃してくるんですけど!?


神奈月 : これ、『鷲掴み』を使ってきてる? それとも『タカの爪』?

ミツルギ : 最初のはそのどっちかだろうけど、今のは爪を出してきてなかったから、『突撃』だな。多分だけど。

神奈月 : あー、そっちか。

イガイガ : 多分かよ! いやまぁ、確かに正確なスキル名は分からんけどさー。

こんにゃく : 推測は出来ても、その時に明確に何を使ったかは分からんしな。

ミナト : 急降下してくる場合、攻撃に移る直前まで見分けがつきにくいしねー。構成的に、どれを使ってきてもおかしくないしさ。


「え、タカの爪は分かりますけど、なんでタカなのに鷲掴みなんです!? わっ!? わわっ!?」


 ぎゃー! 遠距離でも近距離でも攻撃してくるの、やめてー!? すごく避けにくいんですけど!?


ミナト : タカとワシって、大きさの違いだけだからねー。だから、タカが『鷲掴み』を使っても問題ないよ。

ミツルギ : 名称こそ変わらんが、屈強系統で進化した個体は基本的にデカくなるから、もうこのタカは、ほぼワシだな。

富岳 : 『鷲掴み』は……タカのスキルの中で『タカ』が名称に入ってない珍しいスキルだな。性能としては『強獲牙』に近くて、上空へ連れ去って落下させてくる。まぁライオン相手では持ち上げられる事はないが、捕獲性能が高めで、掴まれてる間はずっとダメージを与えてくるぞ。

チャガ : 『タカの爪』はまぁ『強牙』みたいに、短時間で締め付けて離れていくタイプだな。小型種族なら、そのまま連れ去られる事もあるが。


「それ、嫌ですね!? わっ!? わわっ!?」


 うがー! 何度も何度も、羽根を飛ばすのと、突っ込んでくるのを混ぜてくるなー! 


「ぐっ!? 翼でぶつかってくるとかもあるんです!?」


 ぐぬぬ! 回避し切れずに、翼を打ち付けられたんだけど!? このタカ、攻撃手段が多彩過ぎないですかねー!?


富岳 : 弱点が『生命』と『俊敏』と『知恵』の、屈強系統での進化の『雄健なタカ』か。『堅牢』と『器用』が高いから、地味に遠近どちらでも対応出来る個体だな。

ミツルギ : 屈強のスキル、堅牢のスキル、器用のスキル、どれも使ってきている感じか。

こんにゃく : 1番ランクの低いスキルで再使用時間を回して、連続攻撃にしているっぽい?

ヤツメウナギ : 俊敏が弱点になってるから、攻撃速度が控えめなのが幸いだなー。これだけのパターン、攻撃速度が速いとやばい。


「あ、そういう構成なんです!? わっ!? わわっ!?」


 むぅ……回避で精一杯だから、そこまで見ている余裕はなーい! 突っ込んできた後では向きが変わっちゃうし、そもそも空にいるから見上げてないといけないもん!? 回避しつつ見失わないようにするだけで、厳しいんですけど!?


サツキ : サクラちゃん! 回避してるだけじゃ倒せないよ!

いなり寿司 : まだ『縄張り』が使えなくても、これだけ降りてくるなら攻撃はしやすいしな。

咲夜 : カウンター狙いだ、カウンター!


「確かに、一方的に攻撃されるのも嫌ですしね! わっ!? わわっ!?」


 今は明確に羽根を何発か飛ばしてきてから、一気に距離を詰めてくるって感じだから……降りてきたタイミングを狙えば、カウンターは行けるはず!


「……今です! 『放火』!」


 突っ込んできたタカに向けて、真っ正面から火を放つのですよ! ふふーん! 今ので直撃――


「わー!? 回避し忘れてました!? この!? 離して下さい! 『放火』! 『放火』! 『放火』!」


 うがー! 背中に爪を突き立てて鷲掴みにするんじゃなーい! というか、羽ばたいて翼まで叩きつけてこないでー!? それもダメージ入ってるからー!


神奈月 : カウンター自体は決まっても、避けるのを忘れちゃダメじゃね?

ヤツメウナギ : 避けれてないのは、果たしてカウンターと呼んでいいものか?

こんにゃく : どちらかというと、肉を切らせて骨を断つ?

ミナト : 状況的にはそっちの方が近いかもねー。サクラちゃん、今のうちに盛大に攻撃だよ! 掴んできてる間は、離れられないからね!

サツキ : 絶好の攻撃チャンス!

いなり寿司 : まぁサクラちゃんも盛大にダメージを受けてるけどな。


「あ、はい! 『放火』『放火』『放火』!」


 タカは私の背中にいるから姿はよく見えないけど、マニュアル操作でなら狙えるもんね! どんどんHPを削られてるけど、こっちも削り返すまでなのですよ!


「もっといきます! 『放火』『放火』『放火』!」


 これ、ちゃんと当たってるよねー? まだ背中を掴まれてるし、羽ばたく翼も当たってるし、狙いは外していないはず!


「あ、離れました!」


 『鷲掴み』の効果が切れてみたいで、慌てて離れていったっぽい! おー、火が着いて燃えてるタカが夜空に飛び上がったよ! ……これ、スクショを撮っておこー!


サツキ : 火の鳥だー! 焼き鳥だー!

ミツルギ : あー、うん。まぁどっちも、決して間違ってる訳ではない?

富岳 : ただ単に燃えてるだけだがな。あぁ、そう言ってる間に火は消えたか。

チャガ : 『火傷』にはなっているし、翼が傷んだから、飛行が少し不安定になったな。

神奈月 : 翼が痛むと飛行に支障が出るのは、飛行種族によくある弱点だよな。


「あ、そうなんです? でも、今ので2割程度しかダメージが入ってないんですか……」


 むぅ……私の方は3割くらい削られてるし、胃袋のストックは尽きてるんですけどー! ぐぬぬ……上空を旋回し始めてて、さっきまでとは動きが違うよ!?


ミツルギ : まぁ相手はエリアボスだし、堅牢も高いから、ダメージの入り方は悪いな。

イガイガ : それなりにダメージを受けて、行動パターンも変わったっぽいし……こりゃ遠距離から攻撃してくる?

咲夜 : 飛行種族の厄介な攻撃パターンに入ったかー。降りてくるだけ、さっきまでの方が対処はしやすいんだよなー。

富岳 : 遠距離の攻撃手段を持っていなければ、一方的な攻撃をされるからな。まぁサクラちゃんの場合は、その心配はいらないだろうが……。


「ふふーん! 空を飛んでようが、攻撃手段はありますからね! とりあえずこれで、追加ダメージを狙いましょう! 『放火』!」


 『火傷』で継続ダメージは入ってるけど、『放火』自体でもダメージはあるから……って、あれ!?


「……むぅ、火が届かないですね。これ、少し溜めないと無理ですか。『放火』!」


 ぐぬぬ! 溜めなしだと、射程が届かなかった! でもまぁ、溜めれば攻撃範囲は広がるんだし、届くようになるはずなのですよ!


金金金 : そういや、この荒野に来た時に殺された手段は……器用のスキルツリーの溜め攻撃か? 屈強系統で進化してるみたいだが……。

ミナト : んー、あの状況から考えると、屈強でも堅牢でも器用でも……どの系統の溜め攻撃でもあり得るんだよね。攻撃の瞬間は見れてないから、はっきりとした事は言えないよ。

ミツルギ : 屈強系統で進化していても、他のスキルツリーの溜め攻撃を持ってる事も普通にあるからな。

富岳 : 一番高火力になるのは進化系統にある溜め系統のスキルにはなるが、それ以外が安全な訳でもない。なんなら、今溜めてても不思議じゃないしな。

G : 旋回しながら、攻撃を溜める可能性があるタカ!

咲夜 : 遠距離攻撃の場合はホバリングして滞空して溜めて、近距離攻撃なら旋回して溜める傾向があるんだよなー。

真実とは何か : それが真実なのである!

神奈月 : サラッと暴露される、タカの行動パターン!


「今、近距離攻撃の溜めをしてる可能性があるんですか!?」


 待って、待って、待って!? これ、私は放火を溜めてる場合なの!? ちゃんと回避しなきゃ、即死もあり得るんじゃないの!? わー!? なんとか対処しないと!?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る