第650話 巻きついたヘビ


 ぎゃー! まだエリアボスのタカとの戦闘は回避出来たけど、『朦朧』になっている間に、後ろ脚にヘビが巻きついてる状態だー!?


「あ、『朦朧』が回復しましたね! 脚から離れて……いえ、巻きつくならそのまま巻きついているといいですよ! 『放火』!」


 引き離そうかと思ったけど、予定変更! 今回はマニュアル操作にして、巻きついているヘビを焼いていくのです!


ミツルギ : おー、巻きついて離れられないのを利用して、そのまま自分に火を放つとは。

サツキ : 逃げられずに、丸焼きにされるヘビ!

ミナト : あら、このヘビは……まぁこの状態ならあっという間に終わるかな?

神奈月 : 特定のスキルの使用中には動けないのを利用した、ハメ殺し……。まぁ有効な手段だよな。

ヤツメウナギ : この手のスキルの、発動中に身動きが取れなくなるタイプは、こういうデメリットもあるからな。


「ふっふっふ! このまま焼き尽くしてしまいましょう! 『放火』『放火』『放火』!」


 迂闊に私のライオンの脚に巻きついたのが運の尽き! 『火傷』で継続ダメージも入っているし、マニュアル操作で放つ火でもHPを削っていくのです!


<成熟体を撃破しました>

<進化ポイントを2獲得しました>


「ふぅ、とりあえず邪魔なヘビの撃破は完了ですね! まったく、危うくそのままタカとの戦闘になるかと思いましたよ……」


 ギリギリでタカが飛んでる方向を変えてくれたからいいものの、そうじゃなければ『縄張り』が使えないまま戦闘に突入してたよね。


いなり寿司 : タカの位置に気を取られてたのはあるんだろうが……ヘビに関しては、足元不注意だったせいでは?

神奈月 : あー、まぁ特殊な個体でもあったしなー。ヘビの擬態は、中々厄介。

富岳 : まぁ俊敏系統かつ、擬態持ちのヘビだったしな。今回は踏みつけたのが原因だろうが、普通にしてても特殊な個体だ。

金金金 : 特殊? あー、確かになんか特殊ではあったか。

こんにゃく : というか、サクラちゃんはヘビを踏みつけ過ぎ。

イガイガ : あー、それは確かに?

真実とは何か : それもまた、真実なのである!


「あはは、まぁそういう事もありますよ!」


 こう何度も踏みつけてたら、足元不注意って言われるのは仕方ない気もしてきた! でも、今回はちょっと何か違うような様子っぽいね?


「えっと……何が特殊なのかがよく分からないので、そこの部分は質問でもいいですか?」


 どういう風に特殊なのか、ちょっと気になる! まだ『縄張り』の再使用が可能になるまで時間はあるし、その間に聞いちゃえ!


ミツルギ : あー、まぁ質問なら説明してもいいか。擬態をする個体には、2パターンあってな? 片方は単純に俊敏のスキルツリーの中に『擬態』や『保護色』ってスキルを持ってる場合だ。

ミナト : ヘビの場合、そのスキルツリーの中に該当するスキルはなかったりするんだよねー? ちなみにさっきのヘビは迅速なヘビだったから、俊敏系統だったよ。

金金金 : ほう? そりゃまた、変わった情報が出てきたな。


「え、そうなんです!? え、でも俊敏系統で進化してた個体なんじゃ?」


 あ、でも擬態してたから看破で気付けなかったのかも! ……ただの私の不注意な可能性もあるけど、今の話の流れ的にはそうじゃなさそう!


水無月 : あれ? そういえば、白い模様は無かったよね? 俊敏系統なら、足回りに白い模様が……ヘビの足回りってどこ?

ミナト : 通常なら腹部に白い模様が出るんだけど、それが出ずに擬態になってたからこその特殊個体だねー。

咲夜 : ぶっちゃけると、さっきのヘビは適応進化の個体だぜ!

イガイガ : サクラちゃん、さっきのヘビの『看破』の情報はまともに見てないよな?


「……あはは、狙いをつけるだけで、内容は見てなかった気がします? というか、そういう適応進化があるんですか!?」


 姿は確認して放火したから、看破の情報は見えてたはずだけど……火で遮ってた気もするね?


ミナト : さっきのヘビは、正確には『俊敏なヘビ【隠】』だよ。奇襲を成功しまくった場合に発生する、ちょっと特殊な適応進化だね。

ミツルギ : この進化自体はどれでも発生するんだが、俊敏系統の場合は組み合わせが良くて、発生する音を少なくする効果も出たりするぞ。

富岳 : まぁこの適応進化は、サクラちゃんが持っている系統外『投擲』スキルの入手に近いものだと思ってくれていい。特定の行動パターンで、スキルツリーにないスキルを手に入れる手段だからな。

チャガ : 姿に影響が出るから、スキルの取得だけでなく適応進化が発生する特殊パターンだ。


「あ、そういうパターンもあるんですか! え、それなら……私も隠れて奇襲をすれば、手に入れられたりします?」


 奇襲に成功すればいいだけなら、超遠距離からの攻撃を繰り返せば出来そうな気がする! 隠れるのを意識さえしたら――


ミツルギ : あ、遠距離からの広範囲技はカウントされないからなー。

イガイガ : サクラちゃんのは奇襲は奇襲なんだけど……むしろ強襲?

神奈月 : 『近接オンリー』と『敵に目視されない』って、2つの条件があったはず。……これ、意外と難しいんだよな。

ミナト : 性質上、どうしても時間がかかっちゃうからねー。可能な限り、1対1の状況を作り出して、死角に回り込み続ければいいだけなんだけどさ。狙い目は、大型の種族!

富岳 : この適応進化に限っては、連続でやる必要はなく、累計でのカウントなのが救いだがな。流石に途中で進化階位が上がればリセットだが。


「おー、そうなんですか! ……1対1で、死角に回り込み続けるって難しいですね!?」


 遠距離攻撃がダメだと、私のライオンではまったく出来る気がしないのですよ! ……まぁ雷への適応進化や、今使ってる火への適応進化もあるんだから、特に必要って気もしないけど!


金金金 : ほほう? そういう適応進化もあるんだな?

ミナト : ぶっちゃけ、オフライン版は『普通の進化』と『装飾進化』以外は、全部『適応進化』で括られてるからねー。大抵は同じ要因で何度も死ぬ事が進化の引き金になってるけど、極一部にはその例外もあったりするんだよ。

富岳 : 今回の『隠』の適応進化がその代表例みたいなもんだな。ただまぁ、これに関しては素でスキルツリーにそういうスキルを持ってる種族が結構いるから……わざわざ持ってない種族で得るメリットも少ないがな。

金金金 : まぁ組み合わせとして合わないからスキルツリーから外されてそうなのに、わざわざそこに合わせにいくのはメリットも少ないか。


「あはは、確かにそれはそうですよねー! ヘビならシンプルに移動速度が速い方が良さそうですし!」


 というか、前に思いっきりヘビに追いかけられたような覚えもあるもん! 毒を持ってる事も多いし……あれ? 普通に隠れられても厄介じゃないですかねー?


「あの、ちょっと思ったんですけど……ヘビの俊敏のスキルツリーって何が入ってるんです? 普通に擬態でも厄介そうな気がするんですけど……」


 それを押し除けて入ってるスキルって何!? 噛みつきとか巻きつきは『屈強』だよね? 突撃してくるのは『堅牢』だろうし……あれー?


ヤツメウナギ : あー、そういやあんまり遭遇してないか。逃げるのに特化したルート以外にあるのは『振り回し』系統のスキルだぞ。

こんにゃく : 全身を鞭のようにしならせての攻撃! 1発で多段ヒットする事もあるから、一番下の『振り回し』でも俊敏のスキルツリーなんだよなー。

神奈月 : 身体に長い部分がある種族のスキルツリーに入ってくるぞ。

ミナト : ただ、ちょっと厄介なのは種族によって入ってくるスキルツリーが変わってくる事かな?

富岳 : ゾウやキリンみたいに身体の一部だけなら『屈強』

、ヘビやウナギみたいな全身で使う場合だと『俊敏』になってくるぞ。


「え、攻撃に使う部位によって、どのスキルツリーに入ってくるかが変わったりするんです!? ……それはまた、ややこしいですね!?」


 んー、でもゾウが鼻を振り回すのと、ヘビが全身を振り回すのではなんか違うってのは分かる――


「わっ!? え、いきなり羽が飛んで……って、わー!? タカが近くまで飛んできてます!?」


 ぎゃー!? 待って、待って、待って! 『縄張り』が使えるようになるまでの雑談に気を取られて、タカの位置の確認が疎かになってたー!? 

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