第649話 ランダムリスポーンの先は


 死に方は予想外だったけど、死ぬ事自体は想定内だったし、ランダムリスポーンしていくのですよ! さーて、どこに出るかなー?


「えーと、現在地は……って、ここ、エリア切り替えの辺りじゃないですか!?」


 わー!? 待って、待って、待って! この位置、この荒野へ入ってきた辺りだよね!? という事は……。


ミツルギ : おっと、この辺に出たか。

サツキ : あ、イナゴの大群はもう見えないよね! 戻ってきたよ!

いなり寿司 : サツキさんが戻ってきたか。


「あはは、まぁさっきイナゴの大群は凄かったですもんねー。全部は仕留め切れてなかったですし!」


 あれ、全部巻き込んだと思ったんだけど……獅子咆哮の射程を見誤っちゃったかな?


G : 『蝗害』で従えられている一般生物のイナゴは、盾にもなってるからな。知恵系統のリーダーが1体だけなら仕留め切れるが、複数体いると奥の方まで届かんという事もある!

神奈月 : ……それでいて、一般生物のイナゴからでもダメージが通るように強化もされるからなー。あれはエゲツないほどの、数の暴力だ。

富岳 : あの規模の大群に遭遇すれば、まず生存は不可能だと思っていい。あれはもうどうにか出来る範囲ではない災害だ。


「あれ、災害扱いなんです!? とんでもないですね!?」


 って、もう済んだイナゴの大群の事を考えてる場合じゃなーい! 今の問題はエリアボスのタカですよ!


こんにゃく : この辺に出たなら、エリアボスが近くにいるんじゃないか?

富岳 : Lvは58まで上がっているし、戦おうと思えば戦える範囲だな。


「エリアボスですよ、エリアボス! あのタカ、今はどの辺にいますかねー!?」


 とりあえずマップを開いて確認……って、もう開いた状態だったよ! えーと、赤い印は……あ、発見! 現在地から少し離れた東の方に反応あり!


サツキ : サクラちゃん、エリアボスへリベンジだー!

水無月 : リベンジだー!


「……ここに出た以上、そうしろって事なんでしょうね! いいでしょう! 今からタカへリベンジ開始です!」


 どっちにしてもこのエリアボス戦はやるつもりでいたんだから、それが少し早まっただけ! 少しLv60には届いてないけど、そこは縄張りの強化してしまえば……。


「あっ!? さっき『縄張り』を使ったばっかりですから、再使用時間の真っ最中です!?」


 ぎゃー!? 最大の切り札が、いきなり封じられてるんですけど!? 


金金金 : 慌てふためく狐っ娘アバター。まぁ死んできたばかりだしな。

ミツルギ : 飛行種族のタカがエリアボスだし、場所的にも1対1に出来る場所だから、『縄張り』での強化は欲しいところだな。再使用が可能になるまでの10分間、逃げ回るというのも手だぞ。

ミナト : 幸い、マップに反応が出る状態だから、避けようと思えば避けられるしね。ただし、その場合は『索敵』を使っちゃ駄目だよ! 他の個体の反応も出ちゃうから!

水無月 : あ、そういう手段もありなんだ!

いなり寿司 : まぁ待つのも作戦の1つではあるな。ただでさえ攻撃が届きにくい相手なんだから、万全の状態に整えた方がいい。


「それはそうですよねー! それじゃ、今は戦略的撤退で、『縄張り』が再展開が出来るまで待ちましょう!」


 私の方がまだLvが低いんだし、無理して戦うのはなーし! 折角、エリアボスの近くまでランダムリスポーンしてこれたんだから、この機会を無駄にしないようにしないと!

 配信の時間もまだ30分以上はあるし、10分ほど逃げ回るの自体は可能だよね! そこからボス戦に入っても大丈夫!


「えーと、発動しておくべきはこれですね! 『見切り』『弱点分析』『看破』!」


 ミナトさんから忠告されたように、『索敵』は発動せずにいくのです! あの反応があれば、どの赤い印がエリアボスのタカなのか分かんなくなるし!


「それにしても、ここは見通しが良すぎますね!? タカの姿は直接は見えませんけど、単に距離があるだけみたいですし……というか、あのタカって進化系統は何になるんです?」


 火への適応進化を終えたすぐ後に、唐突に殺されたもんね。私、今回のエリアボスのタカの姿は全く見てないよ!? 


「あ、もしかして器用系統ですか!? いきなり襲われましたし!」


 流石に近接攻撃だったなら、もう少し何か気付いたはずだもん! それがなかったんだから……溜めの遠距離攻撃で即死させられた可能性が高いよね!


ミナト : 私も弱点構成までは見れてなかったけど……まぁ器用系統の可能性が極めて高いかな?

ミツルギ : 飛行種族かつ器用系統のエリアボスか。順当に考えれば、地上の種族で戦うのは絶望的な相手だな。

咲夜 : 一方的に攻撃されて、ろくに反撃も出来ず、避けるしかないパターン!

イガイガ : ライオンでは、本来戦うべきではない相手ではない。まぁサクラちゃんには、戦う手段があるけども。

ヤツメウナギ : 器用系統での進化だからこそ、対抗手段が存在するか。


「私の本領発揮という訳ですね! まぁまだ今は戦いませんけど!」


 マップでタカの位置を常に確認して……あ、こっちに近付いてきてる! このタカが器用系統なら、出来る限り距離は取った方がいいよね!


「ちょっと離れます! 『疾走』!」


 今の状態で交戦に入りたくはないから、タカから距離を取るように駆けていくのさー! 


サツキ : サクラちゃん、逃走だー!

水無月 : 逃走だー!


「逃げてませんよ!? 今はあくまで、戦略的撤退ですから! 縄張りが使えるようになるまで、逃げるだけですから!」


咲夜 : 自分で逃げるって言っちゃってる!?

神奈月 : 実際、戦略的撤退なのに……自分で逃げると言ってしまったら意味がないのでは?


「あっ!? 今のは無しです! 私は逃げてませんから!」


 ぎゃー! 慌てて言っちゃったから、否定したつもりなのに、逆に肯定しちゃってどうするの!? ぐぬぬ!? 逃げてないよ、私は!


ミナト : サクラちゃん、落ち着いてね? 変に集中力を乱して、タカの位置を見誤ると危ないしさ。

咲夜 : 慌てて転んで、頭をぶつけて『朦朧』にでもなれば危険だしなー。

ヤツメウナギ : ……何かフラグが立った気がするぞ?


「……え? わっ!? わー!?」


 ちょっと待って!? 何か踏みつけて、思いっきりバランスを崩しちゃった!? わわっ!? これ、転んじゃう!?


「ぐふっ!」


 ぎゃー!? バランスを戻せず、そのまま転んで頭をぶつけて……『朦朧』になっちゃってる!? 


咲夜 : ちょ!? そんな事ってある!?

イガイガ : フラグ回収、早いなー。

G : 言った直後、その通りの状況になるとは……。


「いくらなんでも、その通りになり過ぎじゃないですかねー!? わー!? タカが近付いてきてます!?」


 待って、待って、待って!? この状況で交戦状態に入るのは勘弁してー!? って、あれ? 赤い印が2つに増えてない!? 片方、かなり近いよ!?


ミナト : あ、途中で向きを変えたね? 交戦距離には、ギリギリ入ってない感じかな? まぁ元々追いかけてきてた訳じゃないから、単に進む方向が変わったのかも。

ミツルギ : 危ないな、おい!?

いなり寿司 : ギリギリだけど、不利な状況から交戦にはならなかったか。

ヤツメウナギ : ……咲夜さんのフラグは、本当に恐ろしいな?

こんにゃく : もはや、未来予知の領域なのでは?

咲夜 : そんな大袈裟なものではないはずなんだけど……なんか怖くなってきた。

富岳 : いや、今のは無意識の中で、あり得る可能性を想定しただけじゃないか? 色が近くて分かりにくかったが、進行上にヘビがいたからな。

ミナト : それを踏みつけて転んじゃった感じだねー。ほら、サクラちゃんの真後ろにもう1体の反応があるしさ。

咲夜 : あ、マジだ。はっ! という事は、俺の観察力と状況予測が成長している!?

イガイガ : ……なんか、それだと面白くないなー。

G : 得体の知れない、未来予知の発現の方が面白いんだが……。

咲夜 : 無茶苦茶な事を言ってくれてんな!?


「どっちにしても私的には嬉しくないんですけど!? というか、反応が増えてたのって、そういう事ですか!? ……って、後ろ脚に巻きついてきてませんかねー!?」


 うがー! タカとの戦闘は避けられたみたいだけど、それとは別の敵との戦闘になっちゃってる!? この位置で出てくるのは強敵ではないと思うけど……ともかく、早く『朦朧』は回復して下さい!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る