第648話 数の暴力


 なんか『縄張り』でイナゴの大群を引き寄せちゃってるみたいだけど、もう避けようがないし、群れごと一網打尽にしてやるのです! 対応はそれでいいとして……。


「あのー、どう考えても数が多過ぎる気がするんですけど? これ、どうなってるんですかねー?」


 まだマップに反応が出てるだけだけど、どう見ても点じゃないんだよねー。範囲で赤く塗り潰されてる状態って、本当に何体いるの!?


ミツルギ : あー、それはあれだ。一般生物のイナゴが、群れに組み込まれてるんだよ。

ミナト : ハチの巣にいる一般生物のハチだったり、魚雷化してくるメダカの群れとか、そういう感じになるね。まぁ組み込まれてるというよりは、生み出してるんだけどさ。

富岳 : イナゴの知恵のスキルツリーに、そういう群れを形成する『蝗害』ってスキルがあってな。イナゴはプレイヤーでも作れる種族だから、やろうと思えば蝗害は自分でも起こせるぞ。


「そんなスキルがあるんです!?」


 待って、待って、待って!? 種族によって独特なスキルを持ってる事はあるみたいだけど、その中でもぶっちぎりでおかしくない!?


G : スキルLvが高いほど、群れは大規模に変わっていく! この様子だとそこそこスキルLvは高いな!

イガイガ : ちなみに、知恵系統の個体が数体で大群を形成していたりもするぞ。

咲夜 : 両方が複合してるパターンもあるんだよなー。多分、今回はそのパターン?


「無茶苦茶ですね、それ!? 到達するまでに、溜めが終わればいいんですけど……」


 それか、今の近くにいる敵達みたいに火で怯んでくれればいいんだけど……。


<成熟体を撃破しました>

<進化ポイントを2獲得しました>


<成熟体を撃破しました>

<進化ポイントを2獲得しました>


<成熟体を撃破しました>

<進化ポイントを2獲得しました>


<サクラ【巧妙なライオン【火】】が成熟体:Lv57に上がりました>

<基礎ステータスが上昇します>

<進化ポイントを4獲得しました>


「というか、遠慮なく突っ込んできて、勝手に燃えてる個体も多いですね!?」


 これ、溜めてる間の防御用に展開した『発火』が役に立ってるかも! あ、でももう効果が切れちゃった。


G : これぞ、まさしく『飛んで火に入る夏の虫』そのもの!

ミナト : まぁ虫以外も突っ込んできてるけどねー。

富岳 : 蛾辺りもいるし、サソリは虫だし、決して間違っている訳でもないんだがな。ヘビやトカゲもいるが……。

咲夜 : 爬虫類も『虫』が入ってるから、虫判定?

イガイガ : 流石にその判定はおかしくね?


<成熟体を撃破しました>

<進化ポイントを2獲得しました>


「その辺はどっちでもいいですけど、『火傷』も『炎上』も継続ダメージが凄いですね!?」


 うふふ! 『発火』の効果は切れちゃったけど、まだ周囲の植物は燃え盛ってるもんね! まだHPも胃袋のストック分すら削られてないし、今までの乱戦の中では一番良い状態かも!


<成熟体を撃破しました>

<進化ポイントを2獲得しました>


<成熟体を撃破しました>

<進化ポイントを2獲得しました>


金金金 : 嬉々としている狐っ娘アバター。縄張りでのステータス強化の影響も大きいんだろうが、かなり一方的だな?

いなり寿司 : まぁ『放火』戦法は、そもそもかなり凶悪だからな。そう長くは続かんが……。

こんにゃく : 森の中だったら、もうあちこちから破壊消火がされてる状態だからなー。

咲夜 : え、別にここでも破壊消火は起きるよな?

富岳 : まぁそれはあるな。そうなる前に、どれだけ倒せるかって問題でしかない。

チャガ : 死へのカウントダウンが、知らない間に進んでいるだけだ。


「……え? 今、そういう状態なんです!?」


 待って、待って、待って!? 順調に進んでると思ったけど、それって見せかけだけなの!?

 破壊消化ってあれだよね!? 延焼しないように周囲を破壊してって……わー!? それで前に殺された事はあったよ!?


ヤツメウナギ : なんか驚いてるけど……遠距離からの広範囲攻撃は、サクラちゃんの専売特許ではないからな?

神奈月 : サクラちゃんが溜めている間に、敵も溜めている!

真実とは何か : それこそ、真実なのである!


「あ、当然と言えば当然……って、わー!? ぐふっ!」


 ぎゃー!? 後ろから思いっきり衝撃があって、思いっきりHPが削られたー!?

 ぐぬぬ! なんとか踏ん張れてたけど、どこから攻撃してきたの!? 動けないけど、首を回して見える範囲で確認を――


「あっ! 湖の反対側に、『巧妙なライオン』がいます!? 今の、『獅子咆哮』ですか!? あー! 火が消し飛んでる部分が出来ちゃってます!?」


 ぎゃー! このライオン、何してくれてるんですかねー!? 私の有利な戦場が、思いっきり崩された!?


ミツルギ : さてと、そろそろ崩れ始めてきたか。

神奈月 : あとは、サクラちゃんがどれだけ保つかだなー。

G : とか言ってる間に、迫ってきたぞ、蝗害が!


「あ、本当です!? ……凄い量ですね、これ!?」


 夜で暗いから分かりにくいけど、本当に視界を埋め尽くす程の数がいるよ!? あ、でも看破に反応してるのは、4体くらい? 他は一般生物っぽいけど……うん、そういう問題じゃないね!?


「あ、私も溜めが終わりましたので、イナゴの大群はこれで殲滅です! 獅子咆哮、発射!」


 可能な限り、広範囲にした方がよさそうだから凝縮はなしで! いっけー!


<成熟体を撃破しました>

<進化ポイントを2獲得しました>


<成熟体を撃破しました>

<進化ポイントを2獲得しました>


<成熟体を撃破しました>

<進化ポイントを2獲得しました>


<成熟体を撃破しました>

<進化ポイントを2獲得しました>


<サクラ【巧妙なライオン【火】】が成熟体:Lv58に上がりました>

<基礎ステータスが上昇します>

<進化ポイントを4獲得しました>


<成熟体を撃破しました>

<進化ポイントを2獲得しました>


 露骨に手に入る経験値が下がってきてるけど、イナゴの群れは一掃出来た――


「ぐふっ!?」


 ぎゃー!? 今度は左から衝撃が――


「がふっ!」


 なんとか踏ん張ったと思ったら、その直後に右からも衝撃が……あ、地面から浮いて踏ん張れない!?


金金金 : あー、連続で遠距離攻撃が当たり始めたか。

ミツルギ : まぁ火は近寄らせない事は出来ても、遠距離からの攻撃を阻止出来る訳じゃないからな。

富岳 : 縄張りの範囲内で、攻撃準備が出来た敵から一斉に襲われるの自明の理だぞ。

イガイガ : まぁ十分な成果は出たんだし、この辺が限界だろうな。


「ちょ!? わっ!? あ、『朦朧』になりました!?」


 待って、待って、待って!? 連続攻撃に耐え切れずに転んだところに、頭に向けて小石が飛んできたんだけど!? 


神奈月 : あー、ここで詰みだな。

咲夜 : だろうなー。まぁでも、イナゴの大群を仕留められたのは大きい?

G : わっはっは! あの大群は、広範囲の高火力じゃないと対処は困難なんだが……サクラちゃんの敵ではなかったか。


「イナゴの群れはいいんですけど……わっ!? わー!? 水ー!?」


 ぎゃー! 私の獅子咆哮で、真っ正面の燃えてる植物達まで吹っ飛ばしちゃったから、その先に待ち構えていたライオンが突撃してきた!?

 うぅ!? 倒れ伏してた時に突撃されて、湖の中に落とされちゃって……凄い勢いでHPが減り出しちゃった!?


「あ、地味にイナゴの群れも生き残ってます!?」


 ぎゃー!? イナゴの大群が、突っ込んできまくってるんですけどー!? わわっ!? あちこちに引っ付いて、噛みつきまくってきてるよ!? 一般生物なのに、なんでダメージが入ってるの!?


「……これ、もう無理ですね」


 『朦朧』で身動きが取れないまま、湖に落ちちゃった上に、イナゴに群がられたらどうにもならないよ! まぁ元々、ここで死ぬのは想定してたし、結構な経験値にはなったから十分だよね。


<サクラ【巧妙なライオン【火】】が死亡しました>

<死亡した為、リスポーンとなります。リスポーンの手段を選んでください>


「あ、死にましたね。まさか湖の中でイナゴに囲まれて死ぬとは思いませんでしたけど……今回はよしとしましょう!」


 うふふ! Lv58まで上がってたし、進化ポイントも結構手に入ったはず! ランダムリスポーンして、進化ポイントがどこまで溜まったか確認してみようっと!


金金金 : 今日はもう遠慮なく死んでるな。

イガイガ : まぁモンエボでは、死と引き換えに経験値を稼ぐって手段は割と常套手段だし?

神奈月 : 『縄張り』を使う時は、特にそうだよなー。


「あはは、確かに格上相手に『縄張り』を使って生き残るのって無理ですよねー!」


 ミナトさんとかなら『縄張り』の中でも生き残りそうだけど、私には無理なのですよ! 今回みたいなので、私的には十分なのさー!


「さーて、それじゃランダムリスポーンをしていきましょう!」


 どこに出るかなー? Lv最大まで上げたいから、出来ればそういうLv帯に行きたいけど……運任せだからねー。

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