第642話 溜めた放火
ふふーん! 敵の正体は分からなかったけど、大量撃破で経験値も大量! 次はこの先にある水場に向かいながら、溜めた放火を爆発させてみるのですよ!
「あ、『旺盛なサボテン』を発見です! ちゃんと植わってますねー!」
溜めながら進んでいたら、真っ正面にサボテンがいたよ! Lvは55だから、同格の相手! このサボテンは縦に長くて、枝分かれして、棘が生えてる感じのやつ!
それなりに距離は縮まってるけど、向こうはまだ気付いてないのかな? 植物系はどこを見てるのかがさっぱり分かんないんだよねー。この状況、私から奇襲は出来そうかも!
「生命系統の進化ですし、植わっていますし……これ、HPを回復してきそうですね? あ、まだ水場は見えてませんけど、この辺だと『水分吸収』ってどうなんです?」
素朴な疑問! 水場の近くならガンガン回復出来るけど、この乾燥してる荒野ではどうなんだろ? そもそも、サボテンに『水分吸収』のスキルはあるのかな?
ミツルギ : あー、場所による? 周囲に少しでも草が生えてれば、多少は『水分吸収』を使ってくるぞ。
サツキ : 少ないけど、この辺には草が多少は生えてるからね! 使われると思った方がいいよ!
神奈月 : まぁ他のエリアに比べると、回復頻度も最大回復量も下がるけどな。
「おー、そうなんですね。それじゃある程度、回復されるのは前提で……サボテンを焼き払っていきましょう! 爆発してください!」
最大までは溜まってないけど、そこそこ溜まった『放火』での火の球をサボテンへ向けて移動! これ、あれだね! 他のゲームで言う、『ファイアーボール』みたいな感じ!
「わっ!?」
び、びっくりしたー!? 思いっきり爆発音が轟いたし、思った以上に爆発したよ!? オンライン版ほどの規模にはならないって言ってたけど、結構な勢いじゃないですかねー!?
うぅ!? 砂埃が舞って、サボテンの姿が見えないほどになるとは思ってなかったよ!?
金金金 : 爆発に驚く狐っ娘アバター。……分かりきってた内容なのに、なぜそんなに驚く?
サツキ : これはあれだね! 思った以上の威力にびっくりしたと見た!
ミツルギ : あー、変にオンライン版との比較の話を出したのが悪かったか……。
富岳 : オンライン版の爆発規模は、普通の家くらいなら簡単に全壊させるものだからな。まぁそれでもオフライン版は建物の壁に穴を空けるくらいの規模はあるから……変に状況を読み違えたか。
ミナト : あはは、まぁそうみたいだねー。
「オンライン版、そんなに規模が大きいんですか!? ……ちょっと甘く見てた気がします!」
思った以上の大規模な爆発だったー! それと比較したら控えめだってだけで、今使った『放火』での爆発は結構な威力だったもん!
「あ、舞ってた砂埃が薄れてきましたね」
むぅ……荒野だからこそなんだろうけど、視界が塞がれるような状態になるとは思ってなかったよ。
「あー!? 全快してますよ、このサボテン!?」
ぐぬぬ!? 結構な威力だったと思ったのに、視界を塞がれてる間に回復されちゃってたみたい!?
ヤツメウナギ : まぁ生命系統だしなー。
いなり寿司 : 回復に秀でてるんだから、そういう事もある。
咲夜 : ちなみに植物系の種族は『火傷』にはならないからなー!
水無月 : え、そうなんだ?
ミナト : 『火傷』じゃなくて『炎上』って状態異常になりやすいんだよね。ただ、サボテンの場合は種族の特徴として水分が多くて燃えにくいから……『炎上』にもなりにくいけど。
「『炎上』なんて状態異常もあるんです!? まぁサボテンが燃えにくいってのは、なんとなくイメージしやすいですけど!」
植物系の種族と動物系の種族で状態異常の内容が違うのは、今更と言えば今更だもんね。植物には『出血』とかも効かないし、そういう違いがあるのは納得!
「わっ!? わわっ!? 棘を飛ばし始めましたね!?」
見切りの反応を頼りに、回避、回避、回避ー! ぐぬぬ、器用はスキル、ステータスの両方で弱点に出てないし、HPが多い上に遠距離攻撃をするタイプっぽい!
「弱点は……『堅牢』と『俊敏』と『知恵』ですか。何気に『屈強』も高そうなので、下手に近づくのも危険そうです! わっ!? わわっ!?」
うがー! HPが全快したからか、本格的に攻撃が激しくなってきたよ!? うー、獅哮衝波は再使用時間に入ってるから、今は使えないよ!? 放火も結構溜めてたから、こっちもしばらくは使えないよね!?
サツキ : サクラちゃん、躱す、躱す、躱すー!
G : 何気に殺意が高いな、このサボテン。
こんにゃく : 好戦的になりやすい『屈強』と『器用』が高いしなー。
「わっ!? わわっ!? これ、どう攻めましょうかねー!?」
今は回避に専念して、放火や獅哮衝波の再使用時間が過ぎるのを待つ? うーん、それよりは突っ込んで思いっきり暴れまくる方がいいかも? あ、でもあの棘は厄介そうだし……ある程度、私もダメージを覚悟していけばなんとかなるかな?
「あ、ある程度のダメージは覚悟するなら、『獅子咆哮』で……って、わー!? 誤発動!?」
待って、待って、待って!? どう攻めるかを考えてたら、つい口に出した分で発動しちゃった!?
金金金 : 誤発動に慌てる狐っ娘アバター。まぁ気持ちは分かる。
咲夜 : あー、あるある。どのスキルで攻撃するかを悩みながら口に出したら、そのまま誤発動する事ってあるんだよなー。
チャガ : 少しでも発動する意思がある状態だから、それを読み取られて発動してしまうからな。
ミツルギ : その辺の読み取り精度、古いゲームほど甘いし……仕方ない部分だろ。
ミナト : まぁ少なからず考えてた手段にはなるから、その方向性で調整すれば大丈夫だよ! 落ち着いてね、サクラちゃん!
「もう止めようもないですし、『獅子咆哮』でやるしかないですよね! うぅ……飛んでくる棘が刺さるのは嫌ですけど!」
溜めが始まって動けなくなった以上、どうやっても回避は出来ないもん! でも、それほどダメージは痛くないし……堅牢自体が前より上がってるし、『守護増強』の効果も出てるのが大きいんだろうね! うふふ、溜めて動けない間の被ダメを抑える効果もあるもん!
「この距離からなら、かなり凝縮しても届きそうですね! 植わったまま動く気配もありませんし、このまま……って、『出血』になりました!?」
ぎゃー! 待って、待って、待って!? 今、飛んできた棘が刺さった瞬間にそれって酷くない!?
イガイガ : あー、『出血』効果が出やすい個体か。
G : 単発の斬撃と刺突は……まぁ『出血』になりやすいからな。とはいえ、刺さった棘の場合は引き抜かなければ悪化はしにくいぞ。
富岳 : 根を伸ばして刺してくる場合と違って、敵が引き抜く事もないし、溜めてる間ならそれほど問題はない。
ミナト : 問題が出るとしたら、倒した後に棘が消滅した時だね。そこで一気に出血量が増えるから、急いでチドメグサを使う事!
「あ、そういう感じになるんですか! それは了解です!」
あちこちに棘が刺さった状態だけど、問題になるのは倒した後なんだ! まぁ動き回る状態じゃないんだから、今は気にせずに溜め続けるのです!
「あ、胃袋分が無くなりました!? ……また後で、回復させないとですねー」
むぅ……出血のダメージ量はそれほど多い状態ではないけど、全く影響がないって訳でもないね。刺さってくるサボテンの棘も、全然ダメージはない訳じゃないし……ううん、それでも私の攻撃の方が先に準備が終わる!
「溜め終わりました! 獅子咆哮、いっけー!」
射程を当たるギリギリまで凝縮して、思いっきり放つのです!
<成熟体を撃破しました>
<進化ポイントを2獲得しました>
「あっさりと撃破完了ですね! あ、チドメグサ、チドメグサ! 急がないとー!」
倒した瞬間、棘が消えて一気に出血ダメージが増えたし、急いで回復しないと死んじゃうよ!? ……ふぅ、なんとか大きくHPが減る前に回復出来た!
金金金 : 慌てふためく狐っ娘アバター。でもまぁ、なんとか血止めは成功か。
G : 正直、サボテンに突っ込んでいって、近接で棘を刺されまくると思ってたんだがな……。
イガイガ : まさか、誤発動に救われるとは……。
「……流石にそんな事はしませんよ!?」
ある程度のダメージを覚悟の上で突っ込む事も考えてたけど……『出血』になるなら、思った以上に危ない手段だったのかも!? まぁ結果的にはそうならなかったから、セーフって事で!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます