第639話 変化の実感


 ふふーん! 放火をまとめて当てる為に、まずはバラバラの位置にいる敵を集めるのですよ!


「えいや!」


 という事で、飛びかかってまずはネズミに一撃当てるのです!


「ちゃんと当たりましたね! それじゃ次です!」


 ネズミには背を向けて……近いのは、ヘビだね! 今度はそっちに一撃入れていくのさー! えいや!


「……あれ? 微動だにしなかったですね?」


 それに、思ってたよりもダメージが入ってないような?


金金金 : おー、普通に綺麗に一撃が入ったな。

咲夜 : ……ちょっと綺麗に決まり過ぎじゃね?

ミナト : んー、交戦距離には入ってたはずだし……確かに無防備に受け過ぎな状況だね? 攻撃を受けても動く様子がないし、堅牢系統での進化だから……サクラちゃん、そのヘビは『堅守の構え』を使ってるかも?

富岳 : 確かにその可能性は高いな。いきなり、敵の誘導が失敗になってるかもしれん。


「え、そういう状況なんです!? 待ってください! それじゃ、ヘビは後回しにした方が良くないです!?」


 ストーップ! 『堅守の構え』を使ってるなら、下手に攻撃しない方がいいよ!? ネズミの方向に戻して……わー!? こっちはこっちで力を溜めてる感じで、動いてないよ!?


イガイガ : なるほど、咲夜さんのフラグ回収が早いな。

G : まさか、こんなに早い段階で作戦失敗になるとは……。

咲夜 : ちょ!? え、それ、俺のせい!?


「誰のせいとか、そこはどうでもいいです! 全く動かないとなると、エゲツない威力の溜め攻撃ですよね!?」


 ぐぬぬ!? 私の狙いは溜めた放火で一斉に仕留める為に敵を集める事だったけど、この状態はマズい気がする!?


ヤツメウナギ : こりゃ多少勿体なくても、溜めた放火で先にネズミを仕留めた方がいいかもな。

いなり寿司 : 元々の狙い通りにやれば、不意に痛い攻撃を受けて危ない状況になりかねん。


「やっぱりそうなりますよねー!? それなら予定変更で、この火の球はネズミへ叩き込みます!」


 『堅守の構え』で防御しているヘビを狙うより、溜めてるネズミを仕留めた方がいいはず! えーと、マニュアル操作で火を放つには……照準って特にないんだよね。うーん? ライオンの口から火を吹いてたみたいに、この火の球から火を放つようなイメージでいけるのかな? うん、やってみよー!


「おぉ!? すごい火炎放射になってますね!?」


 わー! 溜めた分だけ、口から吹いた時よりも凄まじい勢いだー! うふふ! ネズミは火ダルマになってるし、『火傷』にもなったし、かなりの勢いでHPが削られてる! これ、かなり強いかも!


サツキ : サクラちゃん、火炎放射器になる!

水無月 : おー、すごい勢い!

金金金 : ほほう? 溜めた『放火』はこういう感じでの攻撃になるのか。

ミツルギ : これは使用パターンの1つだけどなー。

チャガ : 『放火』はいくつか使い方があるが、まぁ代表例の1つがこれだ。


「え、この火炎放射以外にも発動方法ってあるんです?」


 火の球の位置は変えられるから、火炎放射の方向が変えられるとかかな?


富岳 : さっきも言ったが、溜めた『放火』は触れれば爆発するからな。敵に直接当てて、爆発させるという使い方も出来るぞ。

ミナト : 溜めてなければ、火の球を当てるって攻撃手段にもなるよ。攻撃の性質を変化させられるのが、『放火』の強みだね。

神奈月 : ただ、周囲への影響が大きいから使い勝手に難ありなのがなー。火事にさえならなきゃ、雷への適応進化に並ぶ最強格になり得るんだけど……。

ミツルギ : 場所を選ぶって部分がマイナス要因になってるが、強力なスキルだという評価ではあるからな。


「なるほど、そういう感じなんですか! 確かに、この火の勢いはとんでもないですもんね!」


 まだ火炎放射が続いてるし、火力は凄まじいよね! うん、周囲に草花や木があれば、もうあっという間に火事になってそうだもん! ……ここが殺風景な荒野でよかったかも?


<成熟体を撃破しました>

<進化ポイントを2獲得しました>


「あ、溜め終わる前にネズミが死にましたね! 状態異常の『火傷』と火のダメージがずっと入ってた感じですし、エゲツない威力です!」


 溜めてて身動きが出来なかったのも大きいんだろうけど、ここまで一方的に仕留められるとは思わなかった! でも、範囲的には何体か巻き込めそうだったのが――


「わっ!? 後ろ足に何か……って、ヘビが巻きついてます!?」


 待って、待って、待って!? いつの間に近くまできてたの、このヘビ!? さっきまで防御してたよね!?


ミツルギ : あー、さっき近付いてた時に交戦距離まで入ってたか。

サツキ : サクラちゃん! まだ火は残ってるから、それで攻撃だー!


「あ、確かに出来そうです……って、それ、私自身が燃えません!?」


 姉さん、サラッと無茶な事を言うよね!? あ、溜めた分を使い切ったみたいで火炎放射が止まっちゃった。


こんにゃく : あ、勿体ない……。

ミナト : サクラちゃん、基本的に自分の攻撃でダメージを受ける事はないよ? 多少の例外はあるけど、この荒野エリアなら、まずそれは起こらないしね。

G : 自分で自分にダメージを与えられる場合は、高過ぎる場所から落ちるとか、溺死とか、頭を打ちつけての『朦朧』とかだからな。

チャガ : 火への適応進化をしていて、『放火』の使用の場合で気を付けるべきなのは、燃えて倒れてくる木に押し潰されるくらいだ。耐性を得てるから、『火傷』にはなる事はない。


「あ、そうなるんです!? むぅ……それだと惜しい事をした気がしますね!?」


 ぐぬぬ! 姉さんが言った手段、本当にリスクなしで攻撃出来る手段だったっぽい!?


「というか、いつまで巻きついてるんですかねー!? この! 後ろ脚だと、振り払うのも難しいです!?」


 うがー! このヘビ、離れろー! 折角、満タンにしておいた胃袋がHPの回復に回っちゃってるよ!?


富岳 : スキルで巻きついてるんだろうが……その手のは中々外れないからな。『噛みつき』と一緒だ。


「むぅ……確かにあれは離れてくれませんよね。あ、でもスキルならこれでいけます! 『咆哮』!」


 後ろ脚に巻きつくヘビに向かって、スキルのキャンセルだー! これなら……。


「やった! 『萎縮』になって、離れましたね!」


 うふふ、攻撃力はないけど咆哮での攻撃スキルのキャンセルは強いよね!


サツキ : サクラちゃん、ナイス! 反撃開始だー!

水無月 : 反撃開始!

こんにゃく : やっぱり『咆哮』の効果は強いよな。

イガイガ : 便利スキルによく挙げられるだけの事はある!


「あはは、確かに便利ですよねー! それじゃ、反撃開始です! 『強牙』からの『双爪撃』!」


 噛みついてから地面に叩きつけて、そこに体重を乗せた両方の爪を振り下ろすのですよ! おー、屈強のステータスを上げたおかげか、かなりのダメージだね!


「続けていきます! 『強爪撃』! あ、『出血』になりました! 『鋭利化』の効果が出ましたかねー?」


 うふふ、この辺は強化したばかりの部分だもんね! いぇーい! こうやって目に見えて、強化した実感が出るのは嬉しいね!


金金金 : 満面の笑みの狐っ娘アバター。一気に屈強のステータスを強化したから、目に見えて違いが分かるな。

ミツルギ : まぁかなりの強化幅があったし、実感がないと困るレベルだしな。

真実とは何か : それこそ、真実なのである!

ヤツメウナギ : でもまぁ、本来のライオンならこれくらいの火力は普通に出るけどな。


「うふふ、強くなった実感があるのはいいですね! それじゃ、お試しでこれもいきましょう! 『強獲牙』!」


 『噛みつき』と同じ感じで噛みついて……おー、なんか『噛みつき』よりも牙が食い込んでる気がする! あ、『萎縮』が解けて暴れ出したね。でも、どんどん『出血』での継続ダメージが増えていって――


<成熟体を撃破しました>

<進化ポイントを2獲得しました>


「あ、思ったよりあっさり終わりましたね?」


 もうちょっと攻撃を叩き込もうかと思ってたけど、その前に終わっちゃった。最後の暴れ方はほぼ自滅に近かった気がするけど!


ミナト : 捕まった時って、逃げようと暴れようとするのが基本パターンだからねー。サクラちゃんも、そのヘビに巻きつかれた時は振り払おうとしてたでしょ?

こんにゃく : 当たり前の反応ではあるけど、コンボとしては有用だったりするんだよな。


「あ、言われてみればそうですよね! なるほど、この組み合わせも強力な効果になるんですか!」


 そっか、そっか! そりゃ捕まったら暴れるなんてのは当然だし、それが『出血』での継続ダメージを増やす方向に出来るのいいね! 『強獲牙』自体は大したダメージじゃなかったけど、組み合わせたら結構使えるのかも!

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