第629話 新たなエリアへ


 ふふーん! 川を渡って対岸へ到着して、そこから北へ向かって駆け抜けていくのです! 縄張りの範囲内は移動が速いねー!


「思った以上に、足場はしっかりしてますね! 昨日は、雨の影響が大きかったみたいです!」


 チラッと見える湖は迂回してるし、この感じならスムーズに北側まで抜けられそう! うふふ、今日は色々と皆さんに助けられてるね!


金金金 : 微笑みを浮かべる狐っ娘アバター。まぁ順調そうでなによりだな。

G : 今日、いきなり色々と教え過ぎじゃね!?

イガイガ : そうだ! そうだ!

ミツルギ : いや、もうボスを倒したエリアで変に足を止められてもな……?

ミナト : そうそう! 次のエリアでも色々あるだろうから、そこまではスムーズに進めるようにね?

咲夜 : あ、次のエリアで色々とやらかすのを期待してるのか!

G : ……なるほど、そういう事か。

ミツルギ : まぁ完全に否定はしないけど……その言い方はどうなんだ?


「色々とアドバイスがあると思ったら、そういう目論見なんです!?」


 うがー! 次のエリアでなら、死んでもいいみたいに言ってませんかねー!? ……まぁ割といつもの事な気もするけど! 死亡がノルマだって、何度否定しても言われてるし!


「ともかく、今は河川域を抜けるのが先ですね! 縄張りも出ましたし……あ、ホタルを発見です! これ、近付くと脚が嵌るヤツですね!?」


 ぐぬぬ! 湖の近くにホタルがいるのが見えたけど、これは絶対罠だー! でも、遠距離からの攻撃で仕留められたりしないかな?

 とりあえずストーップ! ズサっと疾走を止めて――


「あ、逃げました!?」


 ぐぬぬ!? そこそこ距離があるのに、この距離でも気付いてくるの!? Lv49の『迅速なホタル』だったけど……これは追いかけてでも倒すべき!?


ミナト : あらら、経験値は美味しいだろうけど……これは下手に追わない方がいいかな?

ミツルギ : 気付かれる前に狙えたらよかったんだが、まぁ場所が悪いしなー。

富岳 : 湖の方に逃げたから、下手に追いかければサクラちゃんの想定通り、脚が嵌って身動き取れなくなる可能性が高い。

真実とは何か : その可能性が真実に極めて近いのである!


「……それは困るので、変に追いかけるのはやめておきますねー! もう少し走れば、北の端まで辿り着きますし! 改めて『疾走』です!」


 迂回してた湖を通り過ぎる直前で見つけたホタルだったけど、もうこれは仕方ないよね。勿体ないけど、先へ進むのを優先だー! もう一度、思いっきり駆け抜けていくのさー!


こんにゃく : そういや、実況外のプレイで進化ポイントの使い道を悩んでたけど、あれはどうするんだ?

ヤツメウナギ : あー、『重爪撃』と『強獲牙』で悩んでたやつか。あれ、なんで悩んでたんだ?

富岳 : それは俺も気になったな。昨日の配信中だと『重爪撃』で即決だったのに、何か心変わりでもあったか?


「あ、そういえば悩んでましたね! ……特にこれと言って、理由はない気もします?」


 あれ? 本当になんで悩んでたんだっけ? 何か気になる部分はあったような覚えはあるんだけど……。


こんにゃく : まさかの理由なし!?

金金金 : その理由、別に不思議に思わない俺がいる。……サクラちゃんの動き方に毒されたか。

ミツルギ : 解放するスキルツリーをサイコロで決めるのに馴染んでるし、確かに毒されているかもしれん……。

真実とは何か : それこそ真実なのだから、仕方ないのだ!


「毒されたって、言い方が酷くないですかねー!? ……まぁあんまり否定は出来ませんけども!」


 悩み始めたら中々決められないって自覚はあるし……あ、そっか! 悩んだ理由、思い出した!


「今の今まで忘れてましたけど、理由を思い出しましたよ! あれです! 『重爪撃』が溜め攻撃って部分が引っかかったんですよ!」


 うん、完全に思い出した! 昨日の配信中には考えてなかったけど、理由はそこだったね! ……あれ? 中継外のプレイの時、その理由って……言ってなかった気がする!?


金金金 : ん? 溜め攻撃が理由って、どういう意味だ?


「あれですよ! 高火力の溜め攻撃、もう既にいくつかあるじゃないですか? それなのに、近距離でしか使えない溜め攻撃を増やしても微妙な気がしたんです!」


 近距離で使うとしても、1段階目が溜め終わるまでは自由に動ける獅哮衝波で十分なんじゃないかなー?


金金金 : あー、なるほど。遠距離で持ってるなら、役割としては微妙なのか。

ミツルギ : まぁ距離を取って『獅子咆哮』や『獅哮衝波』で、同じような事は出来るしな。

富岳 : 屈強系統で進化してない以上、器用系統の威力には劣るのも間違いじゃない。まぁそれでも十分な火力にはなるだろうが……。

G : 今の今まで理由を忘れてたのを除けば、真っ当な理由での悩みだったな。


「今思い出したんだから、それでいいじゃないですか! あと、あれですね! 『強獲牙』で捕まえて、水の中に引っ張り込めば溺死とか狙えません?」


 これは今、パッと思い付いた事! うふふ、昨日のデンキウナギに似たような事をされたんだし、出来そうな気がしてきた!


ミツルギ : 近くに水場があるのが必須条件ではあるけど、その方法は可能だな。

神奈月 : こんばんは! 何? 硬い陸地の敵を仕留める必勝パターンの話か?

サツキ : ふふーん! サクラちゃんが、今、自分で思い付いたんだよ!

神奈月 : おー、マジか! ある程度の場所は限られるけど、毒が効かない知恵系統かつ堅牢も高い個体に有効な手段だからな!


「……え? あ、確かにそうなりますよね!?」


 そっか! 知恵系統で堅牢が高い個体ってのもいるんだ!? これ、迷う余地がなくなってきた気がするね?


「よし、決めました! 新しいエリアに到着したら、『強獲牙』のルートで屈強を解放していきましょう!」


 ふふーん! 今日のサイコロタイムはもうやったんだし、宣伝もないから、サイコロで決めなくてもいいよね?


咲夜 : ちょ!? その部分のサイコロタイムはなし!?

ヤツメウナギ : まぁそういう時もあるだろ。もう既に今日はやったしな。

神奈月 : え、もうサイコロタイムはやったのか!?

ミナト : 一番最初にねー!

サツキ : ふふーん! それで河川域の北側のエリアに進む事になったんだよ!

神奈月 : あー、行き先はそっちになったか! なるほど、もう少しで到着ってとこだな。


「そうなりますねー! 色々と話しているうちに、北の端に到着です!」


 とりあえず、いきなり突っ込むんじゃなくてズサッと止まるのさー!

 この先はどんなエリアになってるんだろ? 実際にエリアが切り替わらないと、全貌は分かんないもんねー。でも、多少はエリアの端の方に影響は出てたりするから……この辺、植物が少なめだね?


サツキ : 河川域の北の端に到着!

水無月 : 到着!


「意外と早く辿り着けましたねー! それじゃ、新エリアに進出です!」


 植物が少なめって事は、前に行った丘陵エリアみたいな感じかな? うん、可能性はありそう! まぁあの時は森がいきなり途切れてた感じだったから、少し様子が違う気もするけど――


<『名も無き河川域』から『名も無き荒野』へとエリアが切り替わりました>

<規定条件の達成により『名も無き河川域』のエリア名が変更可能になりました>


「……えっと、なんか見通しがいいですね?」


 というか、草もろくに生えてないんだけど!? まさに荒野って感じだよ!? 見える限り、荒れ果てた地だー!? ちょいちょい、低めの岩山みたいなのもあるよ!? あ、サボテンとか、枯れかけたような細い木とかならあるんだ。


金金金 : なるほど、新エリアは荒野か。川のすぐに隣にあるとはな?

ミナト : あはは、まぁリアルの荒野にだって川は流れてたりするしね? 荒野だからって、全く水場がない訳でもないしね。

金金金 : ま、そりゃそうか。


「おー! ここにもどこか水場があったりするんですかねー?」


 砂漠にオアシスとかがあるんだから、そういう場所もありそうな予感! でも、さっき考えた溺死狙いは……どう考えても難しいよね!?


「まぁともかく、新エリアの探索をやっていきましょう!」


 荒野エリアは初めてきた場所だし、どんな敵が出てくるのかなー? 夜で暗めだから、見通しが良くても昼ほどは見通せないもんね。

 うん、まぁ頑張って探索していこー! あ、その前に屈強のスキルツリーの解放をしちゃおうかな?

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