第622話 VR空間に集合
ふぅ、なんとか間に合ったー! 姉さんのとこで服を選ぶ事になるとは思ってなかったけど、無事に立花さんの案内によって文化祭の打ち合わせのVR空間に到着!
「……あれ? みんな、思いっきりオシャレにしてる?」
「そりゃ曲がりなりにも、男子どもと一緒にだしね。流石に部屋着で出てこようなんてのはいないさ。……男どもは、そうでもなさそうだけどね」
「……あはは」
女子のみんなは可愛らしい服装が多いよね! それこそ姉さんが勧めてきた白いワンピースみたいなのを着てる子もいるし、なんだか気合いは入ってるっぽい! 案内してくれた立花さんは、可愛いというより派手な感じ? うん、話すようになる前の持ってたギャルっぽいイメージの私服!
うーん、こうしてみんなの姿を見回してみると、私の服装はちょっと無難すぎるというか……地味? ううん、地味でいいよ! 目立つのが目的じゃないし、変に思われなきゃ……うぅ、その割には視線を感じる!?
「それにして……手抜きな感じの服なのに、随分と似合ってるね、櫻井さん。あー、これだから美人ってのは徳なもんだよ。何着ても似合うんだしね」
「……あはは」
そんな風に言われても、自分じゃよく分かりません! ただ、今回の事で思ったのは……私だけで衣装を選ぶのは荷が重い! ぐぬぬ、『サクラ』の衣装は和服だと決めて作ったから迷う余地がなかっただけで、普通の服装となるとさっぱり駄目だー!
……そういう意味では、『サクラ』の衣装替えは自分でやるんじゃなくて、プロの方に任せた方がいいのかもしれない気がしてきた! どういう選び方をするのかが、勉強になる気もするし! そもそも、姉さんでさえ参考資料としてあれだけ大量の衣装を持ってる事に驚いたもん!
「さーて、男ども! 見惚れてないで……見惚れてるのはうちの部員もか。まぁ気持ちは分からなくもないけど、さっさと始めるよ……と言いたいけど、せめて椅子くらいないのかい? 流石にこうも殺風景で何もない空間だと落ち着かないよ?」
「あ、悪い! 急遽、新しいVR空間を作ったもんだから、何も出してなくてな!? えーと、椅子、椅子……」
あ、妙に視線を感じると思ってたけど、みんなに見られてたの!? 確かに教室で注目を集めちゃった時と同じような感じはしてたけど……なんでだろ? その時ほど嫌な感じはしないね? うーん、まぁいっか!
「……椅子のデータ、これしかないんだけど、問題ねぇ?」
「おいこら、佐渡! テメェ、いい椅子を持ってんじゃねぇか!」
「おっわ! これ、高いやつだろ! これ、俺に寄越せ!」
「誰がやるか! バイトして買ったもんだっての!」
「座り心地いいよ、これ!」
「わー! リクライニング機能付きだ! 倒せば寝っ転がれる!」
「良い椅子なのが気に入らないけど、さっさと人数分出せ! この殺風景なVR空間で立ちっぱなしってのも、なんか落ち着かん!」
「分かったよ! 出すから、ちょっと待てや!」
とりあえず佐渡くんが椅子を次々と出してくれてるから、その一個に座っておこうっと。キャスター付きで大きな背もたれと肘掛けがあるし、結構いい椅子な気がする?
こういう家具って、確かリアルで買ったらVR空間用のデータもおまけであるんだったよね!
おぉ! 確かに座り心地がいいし、背もたれを倒せば寝っ転がれる! ……和室の憩い空間も好きだけど、これも何気にいいね。自分の部屋で携帯端末のAR表示での作業してる間、座っているのには良さそうかも? ……今、懐に余裕はあるし、買ってみるのもあり? んー、お値段次第?
「ねぇ、佐渡くん。この椅子って、どれくらいするの?」
「あー、今だと4〜5万くらい?」
「思った以上に高かった!? あ、でも買えない程はないかも……」
「櫻井さん、金持ってるな!?」
「……あはは」
最近、宣伝するようになったから、下手なアルバイトよりも稼げてるもんね。でもここで『サクラ』の事を言うつもりはないから、資金源は内緒なのです!
「ところで……ここ、他に何も置いてないね?」
「あー、俺以外は、家族に使用を断られたり、ホームサーバーに余裕がなかったりでな。普段、家でこの手のVR空間を使ってない俺の家のが選ばれたって流れで……すまんね、全然使ってないもんだから、物が根本的になくて」
「ううん、それは大丈夫だよ!」
そっか、佐渡くんは普段、ホームサーバーでのVR空間は使ってないんだ? 私の家みたいに、姉さん作の憩いの和室空間はそうそう無いのかも?
「まぁゲームやってりゃ、家のVR空間に入るのにフルダイブの時間を使いたくはねぇよな。佐渡、ゲーム廃人だしよ」
「ほっとけ! 人の事、言えないくせに!」
「わっはっは! まぁやってるゲームが違うだけだしな!」
おー、佐渡くんもフルダイブのゲームをやったりするんだ! そっか、確かに時間制限があるんだから、ガッツリとゲームをしたかったら、ホームサーバーで作ったVR空間にフルダイブするのは勿体無いって事もあるのかも?
「櫻井さん、案外話せてるじゃん。結月が不在だと縮こまって黙っちまうかと思ってたんだがね?」
「……あれ? そういえば、そうかも?」
私としてもそうなるような予感はしてたんだけど、意外とそうはならなかったみたい! ふふーん、これは嬉しい誤算かも!
「それにしても……ここでも相変わらずバカップルは、バカップルだねぇ」
「……あはは」
人目も気にせず、イチャイチャしまくってるのは昨日見たままだよね。うん、コンピュータ部の部長さんからだけは、さっきも視線は向いてきてなかったし……。別に見られたい訳じゃないけども!
「おし、これで人数分の椅子は出たな」
「おいこら、佐渡! 俺らの分がないんだが!?」
「そうだよ、佐渡くん!」
「バカップル用の椅子はねぇよ! その辺の床にでも座ってろ!」
「えー!?」
「俺はそれでもいいが、日向ちゃんの分は出してくれ!」
「2人分出してやりな、佐渡。下手すりゃ、1つの椅子に2人で座りかねないよ……」
「……チッ。確かにその方が面倒か……。おらよ!」
「1人1個だよ。分かってるね?」
「……はーい」
「……くっ!」
副部長の立花さん、強し! 釘を刺しておかないと冗談抜きで打ち合わせ中にもイチャつきまくりそうだし、1人ずつちゃんと椅子に座った状態になってよかったかもね!
「寝っ転がってる全員、起きなよ。打ち合わせを始めるからね」
「はーい!」
「この椅子いいなー。でも、4〜5万はお高い……」
「アルバイト……流石に夏休みに入ってから探すのは厳しい?」
みんな、フルダイブをしてきてるからVR機器は持ってるんだろうけど、そんなにお金が有り余ってる訳じゃないんだね。
まぁ私だって『サクラ』の配信がなければ、そんなにお金はないもん! なんか思わぬ方向で利益になってるけど……ある意味、それは最初の狙い通りになってるんだよね? うん、あの思いつきがこんなに実際の形になるとは思ってなかったよ!
うん、とりあえず色々考えるのはこれくらいにして、私も起き上がろー! 本当に、この椅子いいなー。本当に買っちゃおうかな?
「ん? あぁ、結月の手が空いたから、もう来れるみたいだね。佐渡、申請を頼むよ」
「へいへいっと。準備に手間取った代わりと言ったらなんだが、その代わりに全員揃って始められそうなのは、良かったかもな」
おー! 結月ちゃん、お店のお手伝いが終わったんだ! お昼のピークは過ぎてそうだし、参加出来るなら良かったよ!
「みんな、遅くなってごめん! 美咲ちゃん、どうにかいけた!?」
「うん、大丈夫だったよ!」
「そっか、それならよかった!」
うふふ、結月ちゃんもフルダイブしてきたね! ……むぅ、結月ちゃんも結構オシャレにしてる!? ブラウスの上に薄手のカーディガンを羽織って、可愛らしい短過ぎないスカートだった!
「さて、結月も来たし、打ち合わせを始めようか」
「あ、今からなんだ! よかった、途中参加にならなくて!」
佐渡くんが結月ちゃんの分の椅子も出してくれてるし、ここから文化祭の打ち合わせを開始なのですよ! まぁ私は特にアイデアを持ってきてないから、眺めてるだけになりそうだけど!
まだ14時10分くらいだし、配信開始までには普通に終わるはず! みんなからどんなアイデアが出てくるのかが楽しみだねー!
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