第623話 打ち合わせが進んで


 打ち合わせが始まって、みんなが色々と意見を出し合ってたけど……割と早い段階で、行き詰まり状態になっちゃった!?


「くっ!? 派手に敵を動かしまくって、校内を探索しまくるのが無理だとは……」

「よく考えたら、どう考えても他の人の邪魔になるんだよな……」

「杖を振り回して、誰かに当たって……怪我でもしたら大問題だしな」

「よくあるARゲームでも、大きく動かすのはあんまりないもんね? こうやって実際に考えてみて、その理由が分かった気がする……」

「あー、くっそ! 客観的に見た時、邪魔になるとは考えてなかった!」

「どうする……? どうすれば、形になる!?」


 打ち合わせは始まったものの、立花さんの放った『客観的に見たら、ただの奇行。それだけで済めばいいけど、邪魔だし、危ない』という一言で、話が全然進まなくなった!

 なんだか私は全然話題に入れてないし、ボーッと座ってるだけの状態だよ!? うーん、でも聞いてる限り……人が行き交う中で、杖を持った腕を振り回して魔法を使うって演出は、実際、危ないもんね。


「……美咲ちゃん、話が全然進まないね?」

「でも、この問題はどうにかしないと無理な気もするよ?」

「……あはは、まぁ確かにね」


 結月ちゃんを筆頭に、料理部のメンバーは蚊帳の外な様子だもんねー。私もだけど、なんというか勢いに呑まれて、変に口出し出来ない感じ! 部長さんだけは、遠慮なく混ざってるけど!


「んー、実際にあるARゲームって、大きな動きがある場合は専用スペースで区切られてるし、本当にそこって問題があるんだね」

「あ、そうなんだ?」

「あれ? 美咲ちゃん……もしかして、ARのゲームって、やった事ない?」

「殆どないかも? そういう機会って、特になくて……」


 全くやった事がない訳じゃないけど、 携帯端末で出来るのもあるけど、あちこち出向く必要があるのばっかりで興味ないんだよねー。

 それ以外で思い当たるのは……あ、あれだ! 姉さんがデザインをしてリニューアルオープンした時に連れていってもらった水族館! あそこ、メインは実際の海の生物だったけど、ARでの海底散歩が出来たもんねー! 通路部分が海水に満たされてるように見えるようにしてた感じ!


「あっ、校舎自体を別物に見えるように改造するとか……?」


 なーんて、思いついたままに言ったけど――


「っ!? それだ!」

「そうか! 校舎の中に敵を出すんじゃなくて、校舎そのものを弄るのか!?」

「……アクション要素じゃなく、謎解き系をギミックにすればいける?」

「いや、何かしら動かす要素は欲しいだろ!?」

「……杖を、何かの動作ギミックにする?」

「空き教室を借りて、討伐系はそこでやるとか? それ以外は校内で宝箱探しとかどうだ? 各要素でポイントを貯めて、それで景品交換ってのは?」

「なるほど、いくつかのミニゲームを組み合わせて、総合的なポイント収集か! その手の内容は、何かしらのリアルイベントであるやつだが……校内でやるのは面白いな」


 わー!? 何気なく呟いた内容から、どんどん話が膨らみ始めたー!? まぁそれで行き詰まってたのが進み始めたなら、いいのかも?


「名付けるなら、校内探索クエスト!」

「いや、流石にそのまま過ぎるだろ」

「だよなー。とはいえ、校内をダンジョンに見立てるのはいいかもしれん!」

「……でも、流石に櫻井さんへの負担が大きくないか?」

「「「「あっ!」」」」

「え、私!?」


 思いっきりこっちを見られてるけど……あ、そっか!? その校舎の見た目を変える為のデータ、作るのは私になるんだ!? ここは、私が出来るかどうかにかかってるんだ!?

 むぅ、校舎の全部の見た目を変えるのは……流石に広くないですかねー? 和室の外側を変えるだけでも結構時間がかかる感じだし……。


「……出来るかどうか、範囲とどういう内容か次第? 流石に校舎全体は厳しいかも? あと、完全に別物にするのは……広過ぎるかも?」


 ここは思った事を、率直に答えるのみなのですよ! 今日、午前中に和室の改装をしてて思った事は、想定よりも時間がかかった事だもん! そこから私が学んだ事はこれなのさー!


「……やっぱり、櫻井さんに負担があり過ぎるな。校舎全体は無しとして……」

「くっ! 流石に手伝ってもらうだけでもありがたいのに、過剰な要求は出来ないか……」

「はいはーい! それなら、スタンプラリー形式とかどう? 他の展示のとこの片隅に、ミニゲーム的なのを設置して――」

「日向ちゃん、待った! 他を巻き込むと、料理部の出番が無くなってくるぞ!?」

「あ、そっか。実際に食べられる物、色々あるだろうし……」


 打ち合わせは進み始めたと思ったけど、料理部との連携が難しいねー。去年の文化祭、クラスの出し物は飲食系ではあったけど……火を使うのが禁止だったから、業者から仕入れた食べ物をそのまま渡すだけだった!

 うーん、強みがあるとすれば、その辺り? 兄さんにその話をしたら食品の衛生的な問題だって言ってた気がするし、試食データならそういう制限はないよね?


「ねぇ、結月ちゃん? 料理部で作れる物って、何があるの?」

「えっと、試食データの配布権限が必要なだけで、それは確実にあるから、なんでも作れるよ? 作り置きはデータだからどうとでもなるし、気軽に食べれるようにお菓子か軽食って考えてるけど……」

「あ、そうなんだ?」

「美咲ちゃん、何かアイデアがあるの?」

「ううん、特にこれと言ってはないかも……」


 何でも作れるのは強みな気はするけど、だからと言って良い案は浮かばないのですよ!


「あー、くっそ! 材料をモチーフにした敵を仕留めて回るのは、良い案だと思ってたんだがな……」

「それはもう諦めろ。大きく動き回るような企画にしても、却下される可能性の方が高い……」

「校舎のダンジョン化も、流石に一部だと逆に違和感が出そうなのがなぁ……」


 うーん、色々と考えてるけど、これぞって内容に決まらないまま時間が過ぎていっちゃう……。


「一旦、今日は区切るかい? ここで、全員が頭を抱えていても、良いアイデアが出てくるとも限らないし……あんまりフルダイブの時間を使い過ぎるのもあれだしね」

「立花さんの言う通りだな。一旦、ここで区切って――」

「……佐渡くん?」


 何かいきなり言葉が途切れたけど、どうしたんだろ? 


「……区切りに、ダンジョン化、杖での魔法に、敵や探索……なぁ、こういうのはどうだ? 校舎の一部だけがランダムで変化して、その位置を探索用の魔法で探すんだよ。そてで、一区画だけダンジョンとして姿を表して、そこに敵がいるって感じだ」

「っ! 一部だけ、変化させるのか!?」

「あー、なるほど。ランダム生成の位置を人気が少ない場所にすれば……いや、そこが難しくね?」

「いや、待て! 敵がいる方向は、別に実際に空間が空いてる必要もないだろ! 異世界へのゲートみたいなのを壁際に向けて開くように表示してしまえばいい! これなら、邪魔にならずにいけるぞ!」

「……そうか。そういう位置に限定するなら、リアルの動作を控えめに攻撃出来るようにすれば、邪魔にもなりにくい!」

「探索の魔法は、あれだな。ざっくりと、その異世界へのゲートが出現しそうな場所の方向を示せばいいだけか!」


 おー! なんか一気に話が動き出した! そっか、そっか! 色々なゲームをやってると、敵の位置やアイテムの位置を把握する為の手段はあるもんね!

 モンエボでも『索敵』とかあるから、あれを杖を軽く振る感じで発動するようにしてしまえばいいんだ!


「櫻井さん、異世界部分と敵を何パターンか作ってもらう事になりそうだけど……いける?」

「えーと……佐渡くん、それって周り全部がそうなるんじゃなくて、窓から覗き込んだような感じでいいのかな?」


 これって今は窓って言ったけど、要は古いタイプのモニターに映し出すタイプのゲームを、ARでやろうって感じなのかも!


「まぁそうなる……のか? いや、そうなるな。窓と言っても全身よりもデカいやつになるが……まぁその奥には入れないし、イメージとしてはそれでいいぞ」

「それなら、多分いけると思う!」

「そうか! よし、ならこの方向で詰めていくか!」


 うふふ、周り全てを作る必要がないなら、見えないところは作らなくてもいいよね! どういう異世界にするか次第ではあるんだろうけど、覗ける範囲だけ用意すればいいなら、ハリボテでいけるはず!

 複雑そうなものを避けてもらえば、多分何パターンかは作れるよねー! それにしても、実際にその場まで行かずにやるのもありなんだ! 杖で遠距離を前提にしてるからこそかな?

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