第612話 溜め攻撃の厄介さ


 うがー! 川の中に逃げ込むデンキウナギ、卑怯だー! なんとか届く攻撃は出来てるけど、縄張りと溜め攻撃を使ってやっとって結構厳しいよね!?


「むぅ……溜めてる間に、余計な動きがなければいいんですけど……」


 皆さんの反応的に何かあるみたいだし、溜め終わるまでは気を引き締めておかないと! 多分、3段階目まで溜めれば、それで倒し切れるとは思うし!


サツキ : サクラちゃん、ファイトー!

水無月 : ファイトー!


「はい、頑張りますよー! 頑張りますけど……待つ以外、何か出来る事ってありますかねー? デンキウナギ、動く気配がないですし!」


 ぐぬぬ! エリアボスのくせに、私の姿を見てからは川の中に引き篭っちゃって!


金金金 : 不満顔の狐っ娘アバター。まぁ確かにこうも動きがないと、もどかしくなる気持ちは分かる。

ミツルギ : ぶっちゃけ、別に動きがない訳ではないんだけどな?

富岳 : 確かにそうだな。川に入った途端、水を通じて放電が流れてきまくるぞ。

咲夜 : 普通なら麻痺して、とんでもなく危険な状態だぞ! まぁサクラちゃんには麻痺は効かないけど!


「……待ち構えてるんですねー。まぁ麻痺しなくてもダメージは受けるので、わざわざ行きませんけど」


 放電だけなら気にせず突っ込んでもいいんだけど、そこから締め殺されるのは嫌だもん! あ、私の放電はデンキウナギに効くんだし、麻痺狙いでどんどん撃っておけばよかったのかも!?


「……むぅ、手順を間違えた気がします」


 うがー! それならこの溜めてるだけで、ただ待つだけの状況って避けられたよね!?


金金金 : 困り顔の狐っ娘アバター。手順を間違えたって……どういう風に間違えた?


「いえ、放電を撃ちまくってたら、少なからずダメージが与えられたのかなーと? ……そういえば、デンキウナギが放電を溜めてるって事はあり得ます?」


 水の中だとすぐに流れてまともに溜められなかった覚えがあるけど、ボスなら違う何かがあるかも! そもそも放電がスキルツリーの中に含まれてるなら、それを強化するスキルも存在してそうな予感!


イガイガ : あるかないかで言えば、ある!

ヤツメウナギ : そうなんだよなー。デンキウナギはプレイアブルな種族じゃないから、正確なスキルツリーの構成は分からないが……水中で放電を溜める手段は持ってるぞ。

こんにゃく : 『放電』じゃなく、上位の別スキルって予想もあるけど……その真偽は不明!

真実とは何か : この真実は、闇の中で隠されている!


「本当にある可能性があるんです!? それじゃ、今、それを使ってる可能性があるんじゃないですかねー!?」


 わー!? 私が溜めてるのと同じで、デンキウナギも溜めてる最中なの!? はっ!? さっき、皆さんが厄介って言ってたのってこれなの!?


「……あれ? さっきの話って、俊敏だとか、私がもう知ってるとか言ってませんでした?」


 んー? どう考えても私が知らない内容なんだけど……これってどういう事ですかねー?


G : まぁ完全に別件だしな、それ。

イガイガ : そうそう、完全に別の話。

こんにゃく : 溜めこそはするけど、最終的な攻撃時には結局、水中だと水に流れる性質は変わらんぞ。

ミナト : 陸地なら、普通に飛んでくるけどねー。まぁそれでも、今のサクラちゃんなら問題ないよ。


「え、別の話なんです!? あ、デンキウナギが動き出し……え、対岸に向かってます?」


 なんでこのタイミングで動き出して……って、もしかして!? わわっ!? 1段階目の溜めが終わっちゃったし、これは嫌な予感――


「ぎゃー!?」


 思いっきりバチバチッって電気が迸ってきたのが、避けられなかった!? 見切りに反応が出たのに、もう動けなくなってたから回避し損ねたー!?


「……あれ? 思ったほど、ダメージは受けてませんね?」


 HPが3割くらいは減ったけど、もっと盛大に減るかと思った! ……あれー?


「あ、水中から完全に出てきてますよ、あのデンキウナギ! あ、また水中に戻りました!?」


 ぐぬぬ! あのデンキウナギめ、私に攻撃する為だけに出てきたっぽい! 今の出てきてた時に、1段階目でもぶっ放すとけばよかった!


G : 1段階目までの溜めが終わって、『守護増強』の追加効果が発動! 通常時よりも更に被ダメを10%カットだ!

金金金 : あー、溜め攻撃だったっぽいのに、思ったほどダメージがないのはそのおかげか。

ミナト : まぁ縄張りで生命も堅牢も上がってるのも大きいけどね。そもそもの総量が増えてるから……本来の生命の量なら結構危険な威力ではあったよ?

水無月 : 1.5倍に増えててこれだもんね。堅牢も低くなるから、被ダメそのものも増えてるだろうし……あれ? もしかして、今のって即死級のダメージだったりする?

イガイガ : 今のサクラちゃんの堅牢なら即死こそしないだろうけど、普段なら相当削られてたのは間違いない!

富岳 : 1段階目の溜めが終わったタイミングでよかったかもしれんな。そうでなければ、半分は消えていた可能性はある。

真実とは何か : それこそ、真実なのである!


「縄張りを使ってて半分削られるって、相当危ないですね!? 溜め攻撃を受けたらいけないって事、痛感しました……」


 私自身が結構使ってるから分かるけど、溜め攻撃って本当に即死級のダメージがあるよね! ぐぬぬ、そう考えると、獅子咆哮を受けても3分の1しか削れてないデンキウナギは厄介なのさー!?


金金金 : 不服顔の狐っ娘アバター!

サツキ : さっきのサクラちゃんの攻撃の威力に納得いってない感じだね!

ミツルギ : あー、サクラちゃんの使った『獅子咆哮』の場合は、水での威力減衰を受けてるから、ある程度は仕方ないけどな。

ミナト : どうしても間に障害物があると、そういう事態は発生しちゃうからねー。


「……そうなんでしょうけど、なんか納得いかないです!」


 ぐぬぬ! 私の器用のステータスは高いのに、縄張りで強化して、凝縮までしてあれって酷くないですかねー!?


「というか、さっきの、溜めてるのに動いてましたよね!? 放電で動けるのは知ってますけど、その上位もそうなんです!?」


 どう考えても、さっきのは卑怯も卑怯なのですよ! 川の中で溜めて、攻撃する時だけ出てくるってどういう事なの!?


ミツルギ : ……すまん、冗談抜きであれがどういう仕様のスキルなのかは分からないんだ。

チャガ : プレイが出来る種族なら、実際に作れば分かるんだが……そうじゃない場合は推測でしか言えなくてな。可能性としては『獅哮衝波』に相当してるってくらいになる。

富岳 : 2段階目の溜めに入る直前に、攻撃に動いたってパターンになりそうだ。……デンキウナギで、エリアボスかつ器用系統って、早々出てこないから、サンプル数は少ないんだよ。


「あ、よく分かってないんですか!? ……そういう事もあるんですね?」


 なんでも大体分かってると思ったけど、推測止まりなんだ? というか、今私が戦ってるデンキウナギってレアなの!? レアだからこそ、妙に戦いにくかったりするの!?


サツキ : あ、このデンキウナギってレア個体なんだ! サクラちゃん、レアだよ、レア!

ミツルギ : まぁデンキウナギ自体が割とレアだし、その中でも特にレアな個体なのは間違いないな。

神奈月 : そういや、デンキウナギへの進化条件を探せってのもあったよなー。結局、見つからずだったけど……。

チャガ : なんなら、この今の配信映像が検証用のサンプル動画にされかねないレベルだな。まぁ今だと大体の人はオンライン版へ移行してるから、流石にもうガッツリ検証はされないだろうが……。

ミナト : あはは、まぁそれはそうだろうねー。オンライン版の大型アップデートが入ったばっかだし、わざわざ旧作のこっちの検証をする人はほぼいないかも?

富岳 : サンプルにはなっても、推測の域は出ない内容だしな。時間を割くなら、オンライン版の方をやりたくなるもんだ。


「思った以上のレア個体でした!? それだけに、ちょっと旧作でやってる人が少ないのは残念ですね……」


 ガッツリと現行で盛り上がってる最中だったら、思わぬ方向から視聴者さんが増えた可能性もあったんだね。むぅ、それは惜しい気がするけど……流石に仕方ないのかも。


「それにしても……2段階目の溜め、時間かかりますね」


 分かってた事だけど、やっぱり時間がかかり過ぎー! ぐぬぬ、ちょっとずつ日が暮れてき始めたし、もうこの1戦が終わったら〆ないといけない時間になってきちゃったよ!?

 勝って終わりにしたいけど……ここから更に何か仕掛けてくる可能性はどうなの!? うーん、分かりません! 結局、何が厄介なのかも分からないままだしさー!

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