第609話 イネを追いかけて


 逃げてる稲に追いつく為に、縄張りの展開だー! デンキウナギも範囲内に入ってるけど、私のとこに来るまではまだ時間はかかるから、それまでに稲を倒すのです!


「経験値の美味しい稲、逃しません!」


 疾走も使って、思いっきり土手を駆け抜けるのですよ! うん、ちょっとずつだけど距離は縮まってきた!


サツキ : サクラちゃん、いっけー!

水無月 : いっけー!


「はい! なんとか追い付ければいいんですけど!」


 距離は縮まってはいるけど、それでもあの稲は速いよ!? 下手に転んだら時間ロスだし、足元もちゃんと見て……わー!? マップでデンキウナギの位置を確認しつつ、稲を見失わないようにもして、その上で足元に気を付けるのって大変なんだけどー!?


金金金 : ちょっとパニクってる様子の狐っ娘アバター。フォロー出来るとこは、俺らで手助けしとくか。

ミナト : それもそだねー。サクラちゃん、デンキウナギの位置は私達の方で確認しておくから、稲を追いかけるのに専念していいよ。

ミツルギ : おっ、そうするのか。まぁここでパニクってるのは、あんまり良くないしな。

G : くっ!? それこそが醍醐味なのに、フォローを入れるだと!?

イガイガ : あー、ここはどういう立ち位置にするか悩むとこだな。

神奈月 : そういう悩み方をする!?


「ミナトさん、それに皆さんも手助けをお願いしていいですか!? 稲に集中しないと、取り逃しそうですし!」


 私が失敗するのを期待してるのには、反応してる余裕はなーい! でも、稲だけに集中出来るなら、成功率は上がるだろうし、その手助けがあるのはありがたいのです!


サツキ : 任せなさーい!

ミナト : うん、任せて。ただ……上手くいくかは保証出来ないよ? 稲、土手の下の後背湿地側を走ってるしね。

富岳 : 稲の重量なら問題ないが、ライオンの重量だと脚が沈み込む可能性があるからな。

咲夜 : 距離を縮められても、どうやって攻撃するかが問題だよなー。


「それは放電で……って、疾走の使用中でした!? これ、疾走を止めたら、引き離されませんかねー!?」


 縄張りと疾走を同時に使ってようやく距離が縮められてきてるのに、そのままじゃ遠距離からの攻撃が出来ないよ!? かといって、水への適応進化を解除した今だと、土手の川じゃない側に降りるとまともに走れる気がしない!?


「……あのー、既に稲を倒すの、詰んでません?」


 半ば勢いでやったけど、よく考えてみたら倒す手段がない状態だー!? 結構ミスしててもスルーされる事がある割に、今回は手助けするって言ってくれたの、もう手遅れだから!?


ヤツメウナギ : あー、ある程度の距離を離される前提で、『獅哮衝波』でぶっ飛ばすならいけるか?

こんにゃく : まぁ狙いさえ外さなけりゃ、それでいけるはず。ただ、デンキウナギ戦で『獅哮衝波』が使えなくなるってデメリットもあるけどな。

咲夜 : 『咆哮』で『萎縮』にして動きを止めるのは?

いなり寿司 : 逃げてる稲、知恵が高いから弾かれる可能性が……いや、縄張りを展開中なら耐性は貫通出来るか?

チャガ : ……やってみないと、なんとも言えないとこだな。


「あ、手段はあるにはあるんですね! 賭けになりそうですけど、『萎縮』を狙ってみましょう!」


 やれる事があるなら、それを狙ってみるだけなのですよ! 咆哮自体の再使用時間は……うん、もう過ぎたから大丈夫!

 出来ればデンキウナギとの戦闘には残しておきたい気もするけど、それなら見逃すのが1番ではあるもんね。でも、あの稲を逃すのはなんか嫌ー!


「かなり距離は近付いてきましたね!」


 あと少し、距離を詰められれば『咆哮』が届く範囲……って、ちょっと待って!?


「わー!? また稲の集団です!?」


 待って、待って、待って!? 植ってる沢山の稲の中……というか田んぼの中に、逃げてた稲が入っていっちゃった!?


ミナト : サクラちゃん、大丈夫! 他の個体は逃げた後だから、その中にいるのは逃げてきた稲だけだから! むしろ、沈まない足場が出来たと思ったらいいよ!

富岳 : 『畏怖の気迫』が効いてその場に留まり続けはしないだろうから、田んぼの中から出てきたところを狙え!

ミツルギ : デンキウナギがもうかなり近くまで来てるから、ここが最後のチャンスだぞ!


「そういう事なら、思いっきりジャンプですね! えいや!」


 勢いよく土手から踏み切って、田んぼの稲の上に着地するように大ジャーンプ!


「わわっ!? わっ!?」


 むぅ……流石に稲を押し倒しながらの着地だから、バランスを崩して転んじゃったけど……なんとか止まれた! えっと、えっと、逃げてた稲はどこだー!?


「……あ、丁度、着地地点にいました? 思いっきり、潰してますね」


 まさかの私の下にいたよ!? でも、動きはこれで止められたのさー!


ヤツメウナギ : まさかの体当たり状態!?

いなり寿司 : 狙ってやった訳じゃないのに、その状態になるのは凄いな。


「あはは、確かにそうですよねー! ともかく、これで動きを完全に封じます! 『咆哮』!」


 これが上手く効いてくれたらいいんだけど……あ、萎縮になってるし、成功だー! うふふ、勝利の女神は私に微笑んだのですよ!


ミナト : っ!? サクラちゃん、もうすぐ近くの川の部分までデンキウナギは来てるよ! デンキウナギは陸地までそれほど上がってこないけど、遠距離から攻撃はしてくるからね!


「え、陸地には上がってこないんで……わっ!?」


 待って、待って、待って!? 私の近くに電気が迸ってきたよ!?


「あ、危ないですね!?」


 咄嗟に飛び退いて回避したけど、土手を挟んでて直接は見えてないはずなのになんで攻撃が届くの!?


富岳 : サクラちゃんと同じ器用系統での進化の個体だ。『戦意の把握』を持っていても不思議じゃないぞ。

サツキ : 見えてなくても、マップ経由で攻撃が出来るやつだー!


「あー!? そういえば、それがあるんでした!? わっ!? わわっ!?」


 ぎゃー!? 次々と電気が放たれてくるよー!? 見切りには反応が出るから回避は出来るけど、まだ稲を仕留められてないのに!


「……あ、何発か稲に放電が当たってますね? とりあえず、この稲は持っていきましょうか! 『強牙』!」


 ともかく、デンキウナギが目視出来るとこまで移動なのですよ! 流石に今の一方的に攻撃されてる状態が良くないのは間違いないし!


「わっ!? わわっ!? 放電での!? 攻撃が!? 速いですね!?」


 うがー! 周囲の稲を押し倒しながらの回避、凄くやりにくい! 早く、土手の上まで戻らないと!


「というか!? なんで!? デンキウナギは!? ここまで放電を!? 飛ばせられてるんです!? 水中じゃ!? ないんです!?」


 あとちょっとで、田んぼから脱出は出来そう! 土手のギリギリまで稲が広がってて助かったかも! ……あと、ライオンの大きな体格のおかげでもあるのかな?


ミツルギ : デンキウナギは、陸上での動きは普通のウナギほど良くはないんだがな? それでも、陸地に上がって攻撃してはくるんだよ。

神奈月 : 今、多分だけどデンキウナギは河川敷に上がってきてるな。そうじゃないと、川に電気が流れてるはずだし。


「あっ! そういう!? 感じなんですか! わわっ! ともかく! 稲の中から! 脱出完了です!」


 次々と飛んでくる放電を掻い潜って、なんとか土手まで到着! ……放電の攻撃の速さは、今まで使いまくってたからよく知ってるけど、敵に使われると厄介だね!?


「あ、稲が動き出し!? ました!? 逃しませんよ! 『放電』『放電』『放電』!」


 ぐぬぬ! 折角、稲を捕まえたけど、デンキウナギと同時に相手をする事になるとは思わなかった! まぁデンキウナギからの放電は避けられてるし、先に稲を倒して……。


「……あれ? そもそも、この放電って避ける必要、あります?」


 1発ずつの威力はそこまで高い訳じゃないし、今の私のライオンの堅牢は高いし、追加効果の麻痺も効かないし……?


「あ、全然平気ですね! むしろ、稲にダメージが入りまくってます!」


 ふっふっふ! このボス戦、もしかしたら楽勝なのかもしれないよ!


金金金 : ほくそ笑む狐っ娘アバター。無防備に放電を受けたライオン……あまりダメージを受けてないな?

ミツルギ : ダメージ皆無とはいかないけど、まぁ溜めてない放電ならこんなもんだろ。今の堅牢、縄張りでの強化もあってかなり高いし。

神奈月 : 本来なら、この手の攻撃は麻痺が恐ろしい程の脅威にはなるんだけどなー。

ミナト : まぁ今のサクラちゃんは『麻痺耐性』を持ってるからね。そこはかなりの優位性だよ。

真実とは何か : それが真実なのである!


「流石は最強格の雷への適応進化って事ですね!」


 どんどん放電は受けてるけど、全然平気なのですよ! まぁ着実にHPは減ってはいるから……いつまでも回避なしって訳にもいかなさそうだけど、稲を仕留めるまでは稲に集中しよー!

 その為にも、早く土手の上まで行って、デンキウナギは直接見ておくのです!

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