第606話 移動の最中
ちょっとずつ日が落ちている中で、川の土手を疾走中! いぇーい! もう少しで縄張りを抜けるけど、縄張りの中だと移動は速いね!
今の目的は、デンキウナギを倒す為のLv上げ! どうにか1対1の状況を作りたいし!
「……あれ!? 少し先に、見覚えがあるものがありますよ!」
わー! これって、ちょっと前に話題に出てたよね! ちょっとまだ遠いけど、流石に日本人として見間違う事はないよ!
「お米ですよ、お米!」
川じゃない側の土手の下に、稲が沢山! でも、水田みたいに綺麗に並んでる訳じゃないっぽいね!
サツキ : 稲が出たー!
金金金 : 稲穂が垂れ下がってるし、収穫時の状態なんだな。
ミナト : まぁ基本的にはこの状態で出てくるね。位置的に……縄張りのギリギリ外かな?
いなり寿司 : マップの縮小表示の範囲外みたいだし、索敵で敵の様子も分からんな。
富岳 : まぁ縄張りから逃げ出した敵が多少混ざってはいそうだが……まだ少し遠いか。
「あはは、確かにまだ遠いですねー。ともかく、今は近付いて……そういえば、ここの星って季節はどうなってるんです? 前にどこかで見た桜の木と、もう収穫出来るお米って、どう考えても季節がおかしいですよねー?」
春と秋が同時に訪れてるような状態だもん! はっ!? そういえばドングリとかも拾ったし、桜がおかしいだけで季節的には秋なの!?
ミナト : 季節は関係なく配置されてるから、気にするだけ無駄だよ?
イガイガ : 季節に合わせて配置すると、システム的に季節の経過を入れなきゃいけなくなって、ややこしくなるからあえて無視してるって話だったな。
神奈月 : あった、あった。確かインタビューでそういう話が出てたんだよな!
「あ、そうなんですか! まぁ確かに1日の昼夜の入れ替わりはリアルより早いですけど、特定の季節まで待たないと出てこない種族とかいたら、面倒ではありますもんねー!」
うん、この辺はゲーム的な都合って事なんだろうね! ゲームなんだから、なんでもリアルに近付けたらいいってものでもないのかも?
……そっか、ゲームだからこそリアルに近付け過ぎないって事も大事なんだ。ふむふむ、文化祭でお手伝いをするんだし、その辺は頭に入れておこうっと!
金金金 : なんだか頷いている狐っ娘アバター。……そこまで念入りに納得するような内容か?
「あ、いえ、ちょっと高校の友達の部活で、文化祭のお手伝いをする事になりまして? ARのゲームを作る事になってるんですよねー」
これくらいなら……言っても大丈夫だよね? うん、どこの高校に通ってるかは分からないはずだし、大丈夫なはず!
サツキ : サクラちゃん!? それ、言っちゃうの!?
ミツルギ : ほほう? 高校の文化祭とは、また懐かしいもんだな。
いなり寿司 : サツキさんが、文化祭当日に乗り込んで騒ぎまくる様子が目に浮かぶ。
イガイガ : ……確かに。
G : ほぼ確実に起こる事態だろうな。
こんにゃく : その光景、想像するのは簡単だなー。
サツキ : あれ!? そういう反応になるの!?
「……サツキさん、当日は来ないでもらっていいですかねー?」
あんまり考えてなかったけど、姉さんが文化祭に来る可能性はものすごく高かったよ!? わー!? いなり寿司さんの予想、本当に簡単に目に浮かぶんだけど!?
サツキ : サクラちゃん、酷い!? 絶対に仕事にならないようにして、行くつもりでいるのに!?
ミナト : 既に準備済みなんだ? あ、サクラちゃん、文化祭で何かをやるって言うのはいいけど、高校の特定に繋がるような情報は出さない事! 野次馬で見に行く人が絶対に出てくるからね!
富岳 : まぁそれは注意した方がいいな。特に開催日なんかは、伏せておいた方がいいぞ。
「あ、はい! そこは気を付けますね!」
もう姉さんが来るのは止められないだろうけど、話題に出すくらいは大丈夫っぽい! 文化祭の当日にならなきゃ作るゲームは関係者以外には見られる事はないだろうし、身バレになるような情報は出さないように要注意だね!
……そういえば、文化祭の開催日って何日だっけ? 確か9月の中旬くらいだった気がするけど……これ、後で結月ちゃんに確認しとこー! 流石に、今『水無月』さんに確認をする訳にもいかないしね!
ヤツメウナギ : それにしても、サクラちゃんが文化祭でARゲームの作成か。……デザイン絡みでの手伝い?
富岳 : 電子機器に疎い様子だし、プログラム関係でないのは間違いないな。
「あはは、まぁデザインですねー! ただ、まだほぼ何も決まってない状態なので……。ゲームは、リアルに寄せ過ぎないのも大事ってのに納得してた感じです!」
どういう所で、どういう感じ方をするかって結構状況によって変わってくるんだねー! 文化祭の事がなければ、絶対に気にしてなかったとこだもん!
金金金 : あー、なるほど。だから、さっきみたいな反応か。
ミナト : ARのゲームとなると……現実との要素の兼ね合いにはなるから、現実とゲーム要素のバランスには注意かな?
イガイガ : リアル要素を薄くし過ぎると、現実感が薄れて事故に繋がりかねんしなー。
サツキ : あるある! 現実なのに現実ではないって錯覚してしまうから、過剰演出には注意って言わ……聞いた事があるよ!
「あ、そういう注意点があるんですか! そこは気にしておきますね!」
姉さんの言葉はちょいちょい危ういけど、まぁ注意点は注意点として、しっかり心に留めておこうっと!
確かに派手過ぎる演出だと、変に避けようとして周りの人にぶつかって危ないとかありそうだもんね! 配置するモンスターが迫ってくるみたいな演出も無しにしておいた方がいいのかも?
「あ、話してる間に縄張りを抜けましたね! お米も見えるようになってきました!」
ふふーん! さっきは遠目でチラッと見えてた程度だけど、今はしっかりと看破で内容を確認出来るし、索敵でも反応が出てるもんね!
金金金 : おー、稲だな。結構広めか。
水無月 : これって採集は出来るの?
ミナト : 出来るには出来るけど……生米だよ?
「まぁ生米ですよねー。火への適応進化を使えば火は用意出来そうですけど……炊く為の器はどこにもないですし……」
アイテムとしてはどんな効果なんだろ? 効果次第では、生米のまま食べるのもありなのかな? まぁとりあえず、ズサっと止まって敵の状態を確認だー!
「……『聡明なイネ』とか『巧妙なイネ』とか『旺盛なイネ』とかがいますね。この前のヒマワリ畑を連想するような光景です! これ、知恵系統の個体を中心にした群れですか?」
ちょいちょいあるよね、こういう植物の集団! 今日もトリカブトの群れを見たもん!
あ、でもこれってサムネイル候補には良さそうだし、スクショを撮っておこー! スクショを撮るぞー! ……うん、撮れた!
ミツルギ : まぁ系統としては同じタイプだな。ヒマワリ畑と違うのは、ワサビの時みたい出てくるエリアが限定的なとこか。
富岳 : こういう川の後背湿地か、色々なエリア内包する平原エリアか山麓エリアくらいにしか出てこないからな。
こんにゃく : 湿地エリアや湿原エリアでも出ない訳じゃないけど、出現確率って一気に下がるんだよなー。
「そうなんです? 稲作に適した場所に出現しやすいって事なんですかねー?」
湿原エリアと湿地エリアの違いがよく分かんないけど、まぁそこはいいや! とりあえず、このイネ達はLv46前後だから、経験値的にもそこそこいいはず!
看破では見えないけど敵の数自体もそこそこいるから、ここは絶好の攻撃チャンスだね!
「それじゃ、一網打尽を狙っていきましょう! 『獅子咆哮』!」
ふふーん! 場所的に射程範囲にはなってるし、これで一気に仕留めてしまうのです!
水無月 : サクラちゃん、それって……お米が採集出来なくならない?
「……え? あー!? 全部まとめて吹っ飛ばしちゃいそうです!?」
わー!? 生米とはいえ、アイテムとしての性能は知りたいよ!? え、でも一気に倒すならこういう方法しかないし……そもそも、もう発動しちゃったし! ぐぬぬ! これはどうすればいいんですかねー!?
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